γ-アルミナ,ゼオライト上のモリブデンカルボニル吸着種を例として,NMR分光法による化学吸着種のキャラクタリゼーションの方法を解説した。固体(多結晶)Mo(CO)
6の
13C化学シフト異方性粉末スペクトルに対比して,種々の条件で測定された化学吸着サブカルボニル種(Mo(CO)
6(ads),Mo(CO)
3(ads))の
13CNMRスペクトルは,表面上での構造および運動性に基づいて解釈できる。Mo(CO)
5(ads)/γ-アルミナにおけるシス位およびトランス位カルボニル間の特徴的な違いから,この吸着種はMo-表面の結合を軸とするほとんど自由な回転(≫10
5s
-1)を行っていると考えられる。これと対照的に,段階的なMo-O結合の切断を伴うと思われるMo(CO)
3(ads)/γ-アルミナでの回転はずっと束縛されている(~220s
-1)。一方,NaXゼオライトのスーパーケージ中,高温(>400K)において,Mo(CO)
3フラグメントのカルボニルの配向はランダムとなっていることから,3次元的な広がりをもつスーパーケージの中での速い等方的な運動が示唆される。関連分野におけるNMR分光法の適用性についても簡単に議論した。
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