表面科学
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15 巻, 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 枝元 一之
    1994 年 15 巻 8 号 p. 494-500
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    最近における光電子分光法の発展の現状について,分光法そのものの進展,および表面科学の発展に寄与する進展に話を絞って概説を行った。スペクトルの高分解能化が可能とした発展については,表面内殻シフトおよび表面準位のフェルミ面の精密測定を例に挙げて述べた。また,シンクロトロン放射光によりもたらされた波長可変な光源の利用が可能としたいくつかの発展について述べた。その他スピン偏極光電子分光,光電子顕微鏡などの発展についても概説を行った。
  • 宗像 利明
    1994 年 15 巻 8 号 p. 501-506
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    2光子光電子分光法は,レーザー光照射で表面の励起状態を生成し,さらにもう一つの光で励起状態からの光電子放出を観測する方法である。この方法では,価電子励起状態の分光測定を目的とするが,特に,表面に局在した準位が選択的に観測されることが特徴である。また,光源にはパルスレーザー光を使用するので,励起準位の緩和過程を実時間で測定することも可能である。ここでは,代表的な測定例を紹介するとともに,吸着分子の励起状態について報告する。
  • 生天目 博文, 谷口 雅樹
    1994 年 15 巻 8 号 p. 507-512
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    光電子分光法は,物質の占有電子状態をほぼ完全に測定できることから最も強力な手段とされている。一方逆光電子分光は光電子分光の逆の過程を用いて非占有電子状態を測定する手法であり,原理的に光電子分光と同様の実験が可能となる。これまで多くの研究グループにより逆光電子分光の実験技術の開発が精力的に行われており,光電子分光と同様の実験が可能となってきている。現在,逆光電子分光の高分解能化,シンクロトロン放射を用いた光電子分光に対応するかのように,光エネルギー可変の逆光電子分光装置の開発などが行われている。逆光電子分光の重要性は多くの研究者の認めるところである。真空紫外域での逆光電子分光装置についてはいまだに市販の装置もなく,限られた研究グループの自作の装置による研究が中心になっている。本稿では,逆光電子分光の原理と装置の現状と問題点にふれ,いくつかの研究を通して今後の発展の方向を模索してみた。
  • 難波 秀利
    1994 年 15 巻 8 号 p. 513-518
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    金属単結晶ステップ表面に現れる単原子高のステップ列は表面欠陥のモデルとしてだけでなく,表面上で1次元的に配列しているために平坦な表面では見ることができない新しい性質の発現が予想される。これまでに報告された光電子分光の実験結果では,ステップに固有な電子状態は発見できなかった。本研究では,シンクロトロン放射のエネルギー連続性,直線偏光性などの特性を活かした真空紫外角度分解光電子分光の測定を行い,表面のステップ列に局在した電子状態を初めて検出し,その分散関係などの性質を明らかにした。さらに,ステップに局在した電子がアルカリ金属の吸着を活性化しているなど,ステップと反応性との強い相関を初めて明らかにした。
  • 大門 寛
    1994 年 15 巻 8 号 p. 519-523
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    表面構造を立体的に映像化して表現することを目的とする“光電子ホログラフィー”という手法が最近1案された。この方法では,原子の内殻から放出される光電子の回折パターンを2次元的に測定し,それをフーリエ変換することにより3次元の構造を得ようとするものである。この測定には,新しい2次元表示型の分析器が適している。ここでは,これらの原理,実験法などを解説し,最近のわれわれのデータを紹介する。
  • 二宮 健, 長谷川 正樹
    1994 年 15 巻 8 号 p. 524-529
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
     ウォルター型反射鏡で生成された軟X線マイクロビームを用いて, 走査型光電子顕微鏡の研究開発を行っている。真空レプリカ法とエポキシ樹脂による反射面形成とを組合せた反射鏡製作法を新たに開発し, 反射鏡を製作した。本反射鏡を放射光ビームラインに設置し,150eVの軟X線マイクロビームを生成して, 微小領域XPSスペクトル測定と1次元光電子イメージングの基礎検討を行った。数~数十μm領域で,酸化膜や有機物のスペクトル測定が可能である。また, 全光電子収量を用いてストライプパターンの1次元イメージングを行い, パターンエッジでの信号強度変化量の25~75%幅から, イメージングの最高空間分解能0.9μmを達成した。
  • 重川 秀実, 三宅 晃司, 相磯 良明, 森 健彦, 斎藤 芳男
    1994 年 15 巻 8 号 p. 530-534
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2010/06/17
    ジャーナル フリー
    (BEDT-TTF)2Cu(NCS)2結晶中に~10.4Kで超伝導を起こすκ相のほかに,新しい構造に対応するSTM像を見出した。同構造は,~200Kで金属一絶縁体転移をする相として存在が示唆されながら,試料の作成が困難とされ,これまで詳細が知られることなく,幻の相として扱われてきたα 相の構造に近い。実際,両相の境界における格子不整合の様子に加え,1-V曲線の温度依存性においても,~200Kでの金属一絶縁体転移,~10Kでの超伝導転移の両者が混在する可能性を示す特性の変化が得られた。ただし,新しく見出された構造が上記α相とは異なる新しい構造である可能性も残されており,現在,CDWの履歴依存性や揺らぎの問題などを含めて詳細を検討中である。
  • 島田 亙, 栃原 浩
    1994 年 15 巻 8 号 p. 535-540
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    The anomalous RHEED oscillation at the initial stage of homoepitaxial growth on Si (111) 7×7 has been known. We have examined this anomaly, using the growth model for the destruction of the (7 × 7) reconstructed surface and images of scanning tunneling microscopy taken after deposition of Si at 330°C by Köhler et al. We conclude that the anomaly is originated from the two features of the homoepitaxial growth on Si (111) 7×7, that is, formation of many two-dimensional nuclei having two or three bilayer height on large terraces of the starting annealed surface and rapid formation of the nuclei on many domain-boundaries in each layer grown.
  • 三宅 晃司, 相磯 良明, 小宮山 真, 重川 秀実
    1994 年 15 巻 8 号 p. 541-544
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    Highly oriented pyrolytic graphite treated with NaOH solution was found to form a stage-8 intercalation compound. Superstructures such as 2x2, √3×√3 and noble orthorhombic lattices were observed on the surface, as previously observed on the surfaces of the stage-1 M-GIC (graphite intercalation compound, M=Li, K, Rb, Cs). On the contrary, substrate lattice structure was observed on NaOH-treated MoS2. In addition, new structures near the Fermi level were found to be formed by NaOH-treatment on the surface.
  • 長澤 善雄, 野口 雅敏
    1994 年 15 巻 8 号 p. 545-550
    発行日: 1994/10/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    金属容器としての飲料缶はビール,コーヒー,炭酸,果汁,スポーツ,ウーロン,緑茶などあらゆる分野にまで勢力を拡大し,今やビールにおいては,全ビール中に占める缶ビールの比率すなわち缶化率はすでに41%を越えるまでに成長している。これは金属缶のもつ各種の特性,たとえば安全性,衛生性,内容物の保護性,機能性,リサイクル性に優れていることなどが社会的に高く評価されたことによるもので,今後も他の容器と共存しながら飲料缶はますます発展し続けていくものと思われる。特に金属缶が,香味に対して最も厳しい要求のある嗜好飲料や,何よりも微量変化の受けやすいお茶や飲料水などにも金属缶が広く利用されるようになった理由は何か,これは金属缶が他の容器に比べ優れた密封性とガスバリヤー性のほかに遮光性と耐衝撃性強度をもち,加えて近年飛躍的に進歩した缶内面被膜の性能が内容物の香味に対してまったく影響のないレベルまで改善されたことに集約できる。以下食品の香味とは,また香味に影響する金属缶の要因について述べ,これらの関係が飲料と容器との表面科学にほかならないとの観点において考察してみた。
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