表面科学
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16 巻, 1 号
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  • 吉原 一紘
    1995 年 16 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    電子分光を用いる表面分析法が実用化されて,広く市場に出回りはじめてからすでに20年以上が経過している。その間に,電子分光法に対するユーザーの認識は「定性分析法」から「定量分析法」へと厳しいものになってきた。1982年にVAMASプロジェクトが発足して以来,ハードウェアの面では,強度軸,エネルギー軸の較正法に関して,いくつかの提案がなされたし,またソフトウェアの面でも,バックグランド差し引き法や脱出深さ計算法などに関して精力的な研究がなされた。さらに,スペクトルデータの記録方式の統一基準が提案され,各メーカーのスペクトルデータをこの方式に変換し,データ処理法を共通で評価するためのソフトウェアも開発され,スペクトルデータベースを構築する目途が立つようになった。これらを受けて,1991年より表面分析の国際規格化を図るためにISO/TC201委員会がわが国の提案を基にして設立された。このように,電子分光法による表面組成の定量精度の向上を目指した研究はこの15年で大きく進歩した。
  • 大島 忠平
    1995 年 16 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    過去15年間の表面科学で私の身近で注意を引いた装置を紹介する。とくに,表面構造解析ではCAICISS装置とLEED顕微鏡を紹介する。粒子のエネルギー分析器では2次元分光器とHe散乱装置を述べ,最後に極高真空技術の発展についてふれる。
  • 馬場 宣良
    1995 年 16 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    最近の表面技術の進歩について真空蒸着やスパッタリングのようなドライプロセスと電気めっき,陽極酸化のようなウエットプロセスに大別して解説した。前者のドライプロセスはクローズドシステムの容器中でガス反応により行われるのが一般で,この分野の進展は主にその装置の開発と価格によって普及の度合いが決まったといってよい。密閉容器中の反応であるため,その中で行われる反応をモニターするための測定装置も付随して重要である。このようにして表面分析装置の開発と共に進歩してきた。一方ウェットプロセスは電解質溶液中の化学反応が中心であるので,水溶液の化学である錯体化学,電気化学の基礎理論と共に進展してきた。大気開放下での反応が一般的であるが,最近の特長として完全密閉型の非水溶液反応や高温高圧条件での水熱反応も現れてきている。
  • 田中 虔一
    1995 年 16 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    20世紀の物質文明は触媒を使って創り上げた物質文明であるともいえる。この化学工業に支えられた物質文明は,20世紀末になりエネルギー問題,公害問題食料問題など人類の生存を左右するような問題を新たに生じているが,これらの困難な問題を解決する鍵もまた触媒にある。このように社会に対しきわめて大きな影響力を与える固体表面の触媒作用も,その機能や機構は本質的な点でほとんどわかっていない。この数年間の表面研究の進歩はめざましく,ようやく表面で起きる現象をアトムスケールで議論できるところまできた。その結果,固体表面の特徴をアトムレベルで理解できるようになり,触媒作用にたいする考え方も大きく変わり始めた。ここでは炭化水素合成反応の一つであるメタン生成反応とNOx除去の3元触媒として知られるPt-Rh合金触媒を例に,触媒作用がどこまでわかるようになってきたかを解説する。
  • 石谷 炯
    1995 年 16 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    最近の高分子表面解析技術について解説した。はじめに解析技術の全体について概観し,特に注目される分野をあげた。表面の形態観察では最近のSPM,特にSTM, AFMの応用例を示した。元素分析ではAES, SIMS, RBSの高分子材料への適用について述べた。状態分析では表面化学修飾法を用いたXPSの応用,また最近注目されているTOF・SIMSについても述べた。
  • 真下 正夫
    1995 年 16 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    薄膜の研究および応用分野において近年注目された材料や技術,すなわちメモリー用酸化物誘電体薄膜,酸化物超伝導薄膜,薄膜トランジスタや太陽電池用アモルファスシリコン薄膜,ダイヤモンド薄膜,そして単原子層レベルで制御しようとする薄膜技術の今後の中核となるべき単原子層成長や選択成長について解説する。
  • 逸見 学
    1995 年 16 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    この15年,MOSLSIの急激な高集積化高密度化に伴い,要求されるゲート酸化膜厚は50nmから10nmに急速に薄層化してきた。この要求を満たすため,ゲート酸化膜の薄層化と高品質化を阻害する要因を解決してきた。まず,LSIの歩留りを支配する酸化膜欠陥対策として,CZ-Si結晶に起因した酸化膜欠陥,選択酸化工程に起因したゲート酸化膜欠陥を早期に見出すとともにプロセス上の工夫で解決した。また,LSIの信頼性を損なう汚染物質の低減については,早期から製造プロセスの清浄化を強力に推進してきた。各種の微量分析技術は,この清浄化の推進に常に重要な役割を果たした。つぎに,微細加工のために全体的に導入したプラズマプロセスの損傷を低減するためのさまざまな措置を講じた。この間,ゲート酸化膜の薄膜化限界を見極める試みや,薄い酸化膜の長期信頼性試験(5,000時間以上)を比較的早い時期に行い,物理と実用の両面から先駆的な貢献を果たした。
  • 鈴木 堅市
    1995 年 16 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
     鉄鋼の表面処理・プロセスに関連した表面解析例を紹介した。冷延鋼板の焼鈍時の表面偏析Cは化成処理性に悪影響を及ぼすが, 鋼中SiはCの表面偏析を増長し, Mnは抑制する。接着缶用TFSの表面残留Sが多いとオキソ結合の度合いが低下して接着耐久性が低下する。GDSによるZn-Fe系合金2層めっき鋼板の管理分析法が開発され, 工業的に利用されるとともに, 鉄鋼業における表面分析手法としてGDSが普及した。GDSはコーティングやイオン注入など金属の表面改質層, 有機塗膜の分析にも有効である。
  • 鈴鴨 剛夫
    1995 年 16 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    γ型のアルミナを攪拌しながら200~600℃で水酸化ナトリウム,金属ナトリウムと逐次加熱処理することによって,塩基強度(H_)が37以上の固体超強塩基が得られることを見出した。本固体超強塩基の調製の要点は,まずアルミナを水酸化ナトリウムと反応させて表面にアルミン酸ナトリウムを生成させ,ついで加熱下に金属ナトリウムで処理することである。このことにより塩基強度(H_)が37以上という最強の固体超強塩基触媒が得られるが,ここで,(1)原料のアルミナとして,γ型を用いることが超強塩基性を発現するうえで重要である,(2)アルカリ金属添加時の処理温度も重要な因子である,(3)アルミン酸ナトリウムの常圧における二つの構造,すなわちβ型(低温安定型)とγ型(高温安定型)のうち,こうして調製したものは室温でもγ型構造が保持されることから,このアルミン酸ナトリウムはアルミナとの相互作用により束縛された構造を有している,(4)触媒の23Na固体NMRスペクトルでは,Na+に帰属されるピークのみを示し,(5)XPSスペクトルによると,金属ナトリウムからアルミン酸ナトリウムに電荷の移動が生じて酸素原子の電子密度がさらに高くなっている,などのことが明らかになった。かかる新知見をいかすことによって,高活性な固体超強塩基触媒が安定して製造され,実用化されるに至った。
  • 透明断熱フィルム
    側島 重信
    1995 年 16 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    可撓性・透明性など高分子の特徴を生かしながら,導電性や光の反射など自由電子が関与した機能材料を探索する過程で,高分子自体の機能化よりも「高分子は基板材料とし,その上に目的の機能薄膜を積層して機能材料とするほうがよい」と考えた。そして,透明導電性フィルム,透明断熱フィルム,可撓性基板太陽電池などを開発した。可視光は透過し,赤外光(熱線)は反射する波長選択光学特性を示す薄膜には,半導体薄膜と誘電体/金属/誘電体の多層膜との二つのタイプがある。製造コスト予測などから,TiO2/Ag/TiO2の多層膜タイプを選び,計算機シミュレーションと,光学モニターを備えたスピンコーターによる実験で構成を決定した。得られた多層膜は,設計どおりの初期特性を示したが,100時間程度光照射すると,赤外反射特性が劣化した。この劣化は光照射前後のXPSとSIMSスペクトルから,銀の光誘起移動による銀層の崩壊によることがわかった。これは,たとえば銀を合金にすることで防止できる。以上の基本構成に保護層や粘着層を加工し,透明断熱フィルム「レフテル」を完成した。このフィルムは,優れた波長選択光学特性を有し,建物や冷凍・冷蔵ショウケースの窓に貼ることによって,顕著な断熱効果・結露防止効果を示した。
  • 柴田 英夫
    1995 年 16 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    表面分析装置について過去10~15年間の歴史を回顧し,現在の表面分析技術の課題やトピックスについて述べる。
  • 釘宮 公一
    1995 年 16 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 1995/01/10
    公開日: 2010/06/17
    ジャーナル フリー
    魔鏡:おどろおどうしい響きがあり,とても現在のハイテクに関与する技術とは思えない。しかし,現実にはシリコンウエハを初め,コンピューター用のハードディスクや液晶用のガラス基板などの超鏡面の評価には不可欠の重要技術であり,世界のハイテクに貢献している。Makyohとして,世界に広く知られ,すでに多方面の鏡面評価に活用されている。わずか5nmの高低差の緩やかな凹凸を有する鏡面全面の評価には本方法しかない。本稿ではこのような魔鏡技術の発展について,特に超LSIの発展やSiウエハの大口径化・高品質化での貢献を中心に記述する。
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