半導体/金属界面が電子またはホールに対して理想的なブロッキング接触であるとき,Schottky-Mott則が成立する。ZnTPP固体膜について,このSchottky-Mott則を検証した結果,ZnTPP膜が表面準位のない理想的な有機半導体として挙動すること,またこの関係則よりZnTPPなどの有機半導体の仕事関数φ
sが容易に求まることが判明した。一方,Kelvin法ではポルフィリン分子固体膜のφ
sを正しく評価することができなかった。UPSの実験結果から導かれるZnTPP/金属界面のエネルギー構造モデル(c)は,Schottky-Mott則で仮定されるモデル(a)およびKelvin法の結果から間接的に推測されるモデル(b)のどちらにも対応しなかった。モデル(a)は,ZnTPP/金属界面で真空レベルとフェルミ準位がともに一致し,空間電荷層でバンドの曲がりが生じるエネルギー構造である。モデル(b)では界面で真空レベルが一致するが,フェルミ準位は揃わず,バンドの曲がりはない。また,モデル(c)では界面においてほぼ一定(約-0.7eV)のシフトがある構造である。現段階では,いずれか一つのモデルで有機半導体/金属界面がかかわる現象を統一的に説明することは困難であり,それらの妥当性をさらに検討する必要があることが示された。
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