本稿では,金属酸化物表面における反応過程の動的STM観察について解説する。筆者らは,代表的な遷移金属酸化物であるルチル型二酸化チタン(TiO
2)の(110)結晶面とギ酸イオン単分子吸着層の原子分解能観察に成功した。さらに,観察中のSTMチップに高電圧を印加することによってギ酸イオンを選択的にはぎ取り,単分子吸着層をナノメータースケールで加工した。加工した単分子層の構造緩和過程を追跡して,吸着ギ酸イオンの移動速度に著しい異方性を見いだした。また,800Kに加熱した(110)表面と酸素雰囲気との反応によって粒状の部分酸化物核が生成し,表面特有のひも状Ti
2O
3準安定構造に転移する過程を画像化した。これらの例をもとに,酸化物表面における動的STM観察から表面反応過程を追跡する手法について述べる。
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