Seを含んだ金属クラスターの構造,電子状態を制御し,効率よく選択的な触媒作用が進行する系を開発した。Se原子をRh原子10個の骨格内に包蔵した[Rh
10Se(CO)
22]
2-クラスターをTiO
2に担持した触媒は,CO
2をエタノールに高活性(8.0mol・cluster
-1min
-1)かつ高選択的(~83%)に転換した。触媒反応前の真空処理温度とエタノール合成活性との関係をみると,623Kで真空処理した場合に活性最大となった。Rh,SeK吸収端EXAFS解析より,Se-Rh結合距離は623K真空処理のとき2.41Åで極小値をとり,活性最大温度と対応した。包蔵Seを取り囲む[Rh
10]クラスター骨格は真空処理温度を上昇させていくに従って,目玉焼きの白味のように中心のSeを覆ったまま徐々にTiO
2表面に2次元的に広がったと考えた。XPSおよびSeK吸収端XANES測定より,包蔵Seはelectron acceptorとして働いていることが分かった。以上から,バルク内部Seからのコントロールにより,Rh表面でのメタン生成が抑制された(ロジウム金属的からロジウムカルコゲナイド的になった)と考えられる。 一方,[Rh
10Se(CO)
22]
2-の代わりに炭素を包蔵する[Rh
6C(CO)
15]
2-や何も包蔵しないRh
6(CO)
16クラスターを用いた場合,あるいは[Rh
10Se(CO)
22]
2-をSiO
2,Al
2O
3またはMgOに担持した場合はいずれもエタノールへの転換の効率が非常に悪いかゼロだった。エタノール合成に必要な因子として,上記の包蔵SeによるRh表面のコントロールのほかに,[Rh
10Se]とTiO
2との界面にCH
yO
z種ができる必要があると考えられる。このCH
yO
Z種が,素早くRh上のCH
xと反応することにより,エタノールが選択的に合成されたものと推定した。[Rh
10Se]クラスターをTiO
2表面への吸着分子と考え,その構造変換,電子状態の変化と触媒作用との関わりについて述べる。
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