計算機によりソフトウェアプロセスの実行支援を行なうには,プロセスに含まれる全ての技術者の作業内容とその実行順序,およびデータの受け渡しや作業間の同期などの技術者間の通信(連絡作業)をプロセス記述に指定する必要がある.しかし,技術者間の通信を逐一記述するのは繁雑であり,誤りが含まれる可能性も高くなる. そこで本論文では,技術者間の通信を指定せずにプロセス全体を記述し,データの依存関係や作業の実行順序などを解析して必要な通信のタイミングとその内容を計算し,個人プロセス記述と呼ばれる各技術者ごとの動作仕様を自動生成する方法を提案する.個人プロセス記述は,我々が作成した支援系を用いて実行する.プロセスの記述には,仕様記述言語LOTOSを若干拡張した言語を用いる.ISPW-6の例題を対象に個人プロセス記述を導出して評価した結果,ソフトウェアプロセスの主研究目的である,記述の容易性や読解性の点で本手法が有効であることが分かった.
本稿では,共通目標が動的に変化する環境でのマルチエージェントによる協調プランニングに関して,環境の変化に適応して動的に組織スキーマを再編しながら共通目標を達成する手法と,そのような動的組織再編を実現するためのメタレベル整合戦略(エージェント間で,どのような組織スキーマをとるかを決定するためのメタレベルの戦略)を提案し,追跡ゲームを用いてそれらの評価・考察を行なう.メタレベル整合戦略の設計に関しては,(1)共通目標への接近度合の変化量,(2)エージェント間の共有知識量,そして,(3)協調組織におけるエージェントの意思決定の自由度,の3つを考慮する.メタレベル整合戦略の概略は次のようになる.現在の組織スキーマによる協調プランニングで,ある定数ステップ以上の間,共通目標への距離が改良されない場合,その組織スキーマは有効でないと推定し,次に有効と思われる組織へと変更する.本稿の最後では,このメタレベル整合戦略に基づく動的組織再編による協調スキーマの限界性能について報告する.
マルチエージェントシステムにおいては,単一エージェントでは達成不可能な目標や組織的タスクを達成するために,複数のエージェントが協調してプランを生成し,実行することが重要である.しかしながら,そのシステムでは,各エージェントの生成・消滅は動的である,また各エージェントの世界に関する知識や技能が部分的である,そしてエージェント間の信念が不整合な場合がある,などの理由により,複数エージェントによる共同を動的かつ整合的に行なうことは一般に困難な作業となる.本稿では,このような部分性,および相互に不整合な信念を有する可能性のある複数エージェントが,機会に応じて共同の可能性を推定し,整合的に共同プランを生成する共同プランスキーマについて提案する. まず,共同プランスキーマでは,エージェント相互に不確定な情報の下でも不必要な通信を行なわずに,効率の良い,そして適切な共同プランを生成するために,各エージェントが合理的選択基準を持つことを前提とする.合理性を仮定することは,各エージェントに対して自己の行為に対する選択基準を与えるだけでなく,共同における他のエージェントの行為選択に関する良い予測を与える.このような合理性に基づいて,共同プランスキーマは次のように述べられる. 共同プランスキーマでは,まず,共通の目標に対して複数のエージェントが最良の個別プランを生成する.これらの個別プランに基づいて,どのエージェントが共同すれば目標を達成できるかを決定する.次に,共同する各エージェントは,最初に求めた個別プランの中で,自分がどの行為を実行するべきかを決定する.この場合,他の共同エージェントとの依存関係を考慮し,共同する上での障害が最小となるように行為を選択する.さらに,各エージェントは共同から得る効用が均等化されるように行為を選択する. 本稿では,共同プランスキーマの概要を述べた後に,その定式化を行なう.上述の共同における各エージェントの合理的行為選択に関して,効用に基づいた1つのモデルを提案し,それの性質について考察する.
マルチエージェント系の問題解決の1つの課題は,効率的な問題解決を実現する部分問題の構成法である.全エージェントが有効に活用され,問題状況に適応できる構成が望まれる.分散して活動する複数のエージェントが1地点に集結する問題を取り上げ,これに対して全エージェントが移動して機会主導的に集結地点を求める解法を示す.この解法では,各エージェントが担当する部分問題は動的に変化する.エージェントが実行済みの処理を記録した地図を生成・維持する方法によって,集結問題の動的な解法を効率良く実現できることを示す.
複数のエージェントが互いに異なるゴールを目指しているようなマルチエージェント・システムでは,エージェント同士がそれぞれのゴールを達成しようとする過程で相手に関する知識を持たずに競合を解消しなければならない場合がある.本稿では,他のエージェントに関する完全な知識を持たずに,競合を解消する方法を提案する.