近年,データベースの研究分野では,演繹データベースとオブジェクト指向データベースに関する研究が盛んに行なわれている.演繹データベースは一階述語論理にもとづいた演繹機構を備え,強力な数学的基盤が確立されているが,実世界のデータのモデリング能力の限界が指摘されている.一方,オブジェクト指向データモデルは,対象となるデータの複合的構成や属性値の継承などの現実世界の対象のもつ性質を有効にとらえることを主な目的の一つとしており,関係データモデルに代わる新しいデータモデルとして注目されてはいるが,理論的基盤は充分に確立されていない.本稿では,これらの双方の利点を発展的に融合する項表現の構築を試みる.まず,型と実体の区別をなくしたうえで,オブジェクトやその属性値をDOT (Deductive and Object-oriented Term representation)式を用いて表現する.次に,それらの間の関係を,IS-A関係として表す.このようにして,従来,簡潔には記述するのが困難であったさまざまなパターンをもつ属性値の継承や,型の属性値に関して記述される属性値制約の条件が,ともに,IS-A関係の継承として取り扱えることを示す.また,これらの関係を記述するための項表現を提案し,その項により表現される意味論を完備束上の順序構造を用いて論ずる.
グラフィカルなユーザインタフェース(以下UIと略)を持つアプリケーションを表現・構成しやすくするため,また,視覚的・対話的な環境でUIを作成できるようにするために,Smalltalk-80のアプリケーション作成のパラダイムMVC (Model-View-Controller)を拡張したMVCGを提案する.MVCGは,アプリケーションの構成と,UIの作成・編集環境をユーザに提示する. アプリケーションの構成として,MVCにおいてGモデルと呼ぶオブジェクトをモデル(M)と対峙する位置に組み入れたものを提示する.Gモデルは,UI設計・作成の立場から,MVCのビュー・コントローラの持つ情報のうち,見た目の情報,モデルと情報を授受するための情報などを独立させ,持続性を高めるために導入したオブジェクトである.また,マルチメディア・ハイパーメディアのシステムを構築するためのオブジェクトとしての性質を持つ. UIの作成・編集環境として,従来のMVCに従いつつ,視覚的・対話的なものを提示する.その環境に基づくUIMS, Talkieを実装した.Talkieにより,従来の環境と比べ,柔軟にプロトタイピング(既存のUIのコピーや流用)を行なったり,UIMS的な使い方とハイパーメディア的な使い方を習熟度や好みに応じて使い分けたりすることが可能となった.
チェスやオセロゲームに代表される2人零和完全情報ゲームでは,ゲーム本探索には一般にMin-Maxアルゴリズムが用いられる.そして,効率良く探索するためにα-β法やSSS法などの枝刈りアルゴリズムが併用される.これに対し,n人完全情報ゲームでのゲームの木の探索では,一般にMAX^Nアルゴリズムが用いられるが,併用される枝刈りアルゴリズムは特定の条件の下で有効なものしか提案されていない.本論文ではその条件が成り立たない別種のゲームにおける新しい枝刈りアルゴリズム「限界増分枝刈りアルゴリズム」を提案する.そしてこの種のゲームの一つである「ダイヤモンドゲーム」に適用し,評価結果を示す.