メッセージの送受信を通信のプリミティブとする分散系においては,メッセージの送信と受信との間に時間的遅延が生じる.この時間的遅延の大きさは一般に不定であるために,あるプロセスから別のプロセスに対して発せられた2つのメッセージの到着順序は,必ずしも送信順序とは一致しない.したがって,分散系で問題を表現する場合には,このarrival order nondeterminizmを考慮した受信順序の制御を行う必要がある.本研究では,actor流のメッセージバッシングを基礎とした分散システムを対象とし,メッセージの到着順序に対する宣言的表現に基づいた,分散計算のためのオブジェクト指向計算モデルを提案する.また,それを用いたオブジェクトの協調動作の様々な形態に関する議論,および,宣言された到着順序を保証するためのメカニズムについての考察も行う.
条件Kのもとで行為Cを選択したとき効果Jがあたえられる環境の中で,経験を通じて,任意のKに対しJからみて常に適切な行為Cを選択できるようになる仕掛けを,学習あるいはより一般に適応機械と見做す.本報告では,学習機械の構成問題が未知時変非線形関数の最小稜線探索問題として定式化できることを示すと共に,あるクラスの非線形関数に対して,その実時間解法が存在することを,学習機械TAMPOPOを構成することによって証明する.TAMPOPOは経験事実のメモリーとメモリー書き換え作用素とを持つ開放システムである.メモリー書き換え作用素は無用な経験すなわち未知非線形関数の最小稜線要素と見做せない経験をメモリーから放逐し,メモリー内容を作用素の不動点である最小稜線に漸近収束させる.無用経験認定機構の工夫によって古い不動点からの脱却が可能となり,時変系に対する適応能力をも実現できる.これは,ニューラルネットなどに比べたTAMPOPOの新しい特色である.
ソーティングアルゴリズムの系統的な発見については,これまでにも数多くの研究がなされており,すでにいくつかの分類も提案されている.しかし,これらの分類には直観的な考察に依存する部分が少なからず含まれており,結果の必然性は必ずしも明らかでない.本論文では,先に提案した構造帰納法に基づくアルゴリズムの系統的な発見法をソーティングアルゴリズムに適用し,同一の仕様から各種のソーティングアルゴリズムを系統的に導出することによって,ソーティングアルゴリズムの新しい分類を示す.