Kyoto Common Lisp (KCL)の日本語化を通じて,言語仕様を変更することなくCommon Lisp処理系を日本語化することの現実性と実用性を探った.2バイト文字と1バイト文字を対等に扱う日本語化は,プログラムの可搬性やプログラム開発の効率という点では期待が高いにもかかわらず,実行効率やメモリ効率の点から問題があるように考えられており,ユーザに2バイト文字と1バイト文字の文字の区別を要求するような言語仕様の変更を行なった処理系が現存する.そこで,既存のCommon Lisp処理系をこれらの文字を対等に扱って日本語化し,従来の処理系と比較することによって,日本語化に伴う効率低下を実際に計測することを試みた.当然のことではあるが,日本語化にあたっては,文字や文字列などのデータ型の内部表現やその参照方法などを工夫することにより,効率の低下を抑えるように努めた.このようにして日本語化を行ったKCLの性能は従来のKCLとほぼ同等であり,効率低下の問題は克服できる.
グループウェア(組織の協調作業を支援するシステム)の開発に伴い,様々なグループウェアを構築することのできる汎用ツールが開発されてきている.ところが,既存のツールには非同期通信に基づき,複数のユーザ間に跨る仕事の処理の流れを扱えるものはなかった.そこで我々はマルチエージェントモデルに基づくグループウェア構築ツールMicheleを提案する.Micheleのマルチエージェントモデルでは分散環境において協調作業を行なうユーザや協調作業で利用される知識や書類など,協調作業を構成する任意の要素をエージェントとしてモデル化することができる.しかも,ユーザ環境と呼ばれる概念の導入により,ユーザ間での仕事の処理の流れを表現することができる.本論文ではMicheleのマルチエージェントモデル,マルチエージェント記述言語MDL,分散環境に対応した実装,そしてMicheleを用いて実装されたアプリケーションについて説明する.
KJ法のようなカードによる情報操作を計算機上で行なうためのツールであるKJエディタについて述べる.カードは,知的作業のための最も優れた道具の一つとして広く知られているが,広い作業机を必要とし,糊づけされたカードの編集がめんどうであるなど,運用上の欠点もある.そうした欠点の多くは,カード操作を計算機上で行なうことにより解決される. KJエディタは,こうした観点からパーソナル・コンピュータ上に実現したカード操作ツールであり,特に,カードに対する高い操作性を計算機上に実現することを第一義に開発したものである.最大250枚のカードを扱え,それらをグループにまとめ,関係線で結び,図解化するための機能を有している.KJエディタのようなカード操作ツールを実現する場合,最も問題となるのは,計算機の表示能力の低さである.現在のディスプレイ能力では,取り扱うすべてのカードを一覧することができない.KJエディタではその解決策として,作業領域上を高速に画面がスクロールする方式をとった.これは,カードの移動とともに視線が移動していく机上でのカード操作をシミュレートしたもので,カードに対する高い操作性と一覧性を両立させるためのものである. KJエディタの使いやすさをカードの操作性の観点から評価するために,机上作業との比較実験を行なった.その結果,高速パニング方式がユーザの不快感を誘発する場合があり,同方式が一覧性の問題の解決には不十分であることと,基本的なカード操作の能率は机上での作業に劣ることが明らかになった.しかし,計算機の特性を利用した操作においては,机上より効率的に作業できる.KJエディタは,すでに多くのユーザに利用されており,ユーザから仄聞する感想からも,その使い勝手は十分実用レベルに達していると判断される.
4月1日から3日までイタリアのTrentoでおこなわれた第3回応用自然言語処理国際会議(3rd Conference on Applied Natural Language Processing)とその直後の4月5日から7日までTrentoから35km離れたCastel Ivanoという古城でおこなわれた第6回自然言語生成に関する国際ワークショップ(6th International Workshop on Natural Language Generation)に参加する機会を得たのでその様子を報告する.