本研究は,北海道内にあるA園に入退園した児童およびその保護者を対象に,児童およびその保護者の抱える問題を把握するとともに,児童の入園時の問題行動の有無と保護者の問題との関連性について検討したものである。調査の対象は,A園に1946(昭和21)年から1997(平成9)年にかけて入園および退園した児童867名(男児463名,女児404名)およびその保護者とした。なお,調査票の記入は,施設の担当職員を通して行った。解析に当たり,まずすべての調査項目に対し記述統計で検討した。次に,入園時の児童の問題行動の有無については,入園時の保護者の問題に着目し,χ^2検定で検討した。その結果,入園時の保護者の問題は,養育困難の領域においては,「離婚・別居」が最も多く,次いで「経済的理由」であった。虐待等の領域においては,「放任等怠惰」が最も多く,次いで「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」の順であった。疾病等の領域においては,「精神疾患以外の長期療養」が最も多く,「精神疾患」「アルコール依存」の順であった。入園時の児童の問題行動は,「問題なし」と判断された児童は45.6%,逆に「問題あり」と判断された児童は54.4%であった。個々の行動に着目するなら,「盗み」「その他」「低学力ボーダー」「家出」の順であった。退園時の児童の問題行動は,「問題なし」と判断された児童は59.1%,逆に「問題あり」と判断された児童は40.9%であった。個々の行動に着目するなら,「盗み」「金品持ち出し」「その他」「不登校」の順であった。入園時における児童の問題行動の有無と保護者の問題との関連性は,男児においては,「問題行動あり群」は「問題行動なし群」に比較して,離婚・別居,身体的虐待,放任等怠惰,精神疾患以外の長期療養,アルコール依存,その他の各項目において,保護者が問題を有する家庭に多いことが示された。一方,女児においては,「問題行動あり群」は「問題行動なし群」に比較して,離婚・別居,就労,身体的虐待,心理的虐待,放任等怠惰,その他の各項目において,保護者が問題を有する家庭に多いことが示された。
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