本研究は,児童虐待防止法施行3年後の見直しに向けて,児童虐待防止における,児童相談所を中心とする自治体ソーシャルワークに関して法制度,システムについての提案を行った。具体的には,児童相談所は子どもの権利擁護機関に特化すべきこと,児童福祉司の質,量ともに改善すること,ネットワーク指導の創設,また,裁判所の親子再統合を視野に入れた関与による援助の枠組み,および子どもや親へのアドヴォケイトの創設について提案した。わが国において児童虐待防止の中心機関は児童相談所であり,児童虐待の調査,診断,子どもの保護,法手続き,親子への心のケア,親子再構築等すべての援助が一点集中し,応じきれない状況である。また,親子分離が必要であるが親がそれに同意しない場合,強制的行政介入により親と児童相談所は対立関係となるため,その後の親への援助は困難を極めている。家族へ公権力でもって介入する場合,専門性の高いソーシャルワークが確保される必要がある。
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