本研究は,ソーシャルワークが,社会問題の解決に対してより効果的に働くことができるために,欠くことのできない重要な知識はなにか,ということに関心がある.そのため,まず,ソーシャルワーク教育で教えられる知識に対する批判的見解を直視するところから始め,次に,国家とイデオロギー,ソーシャルワークとイデオロギーの関係の分析的記述について調べた.さらに,イデオロギー分析を含むソーシャルワーク理論の再編に携わった研究について考察した.その結果,パラダイムの認識的視座から,異なるイデオロギーの比較検討を行うこと,それによって既存の社会秩序の支配的パラダイムを対象化し客観的な諸事実として捉え返すこと,そして,望ましい社会のあり方,目指すべき社会のビジョンを問うこと,それらの社会分析を含めたソーシャルワーク理論の再編・再形成を行うことが,ソーシャルワークの知識にとって,重要課題であることを確認した.
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