高齢者問題は,わが国内だけでなく,ヨーロッパ諸国に住む日本人にとっても大きな問題となっている.そこで,ドイツで老後を迎える日本人の老後意識を検証するためにアンケート調査を実施した.その結果,108名から回答を得た.本調査の場合,調査対象者の6割が60歳以上,滞在年数も30年以上であり,主に国際結婚者であった.調査対象者の多くは,ドイツ語会話能力を有し,ドイツ人と日本人との両方に交流があり,ドイツの社会生活に順応していた.しかしながら,一方で,彼らは家庭で,日本食を食べ,インターネットなどを通して日本の情報収集を得,日本文化と密着した生活を送っていた.老後生活については,彼らは,ドイツの老人ホームよりも在宅生活を希望し,日本食や日本人との交流が持てる福祉サービスを望んでいた.したがって,ドイツ在留邦人の高齢者福祉サービスには,日本の文化を尊重したものが必要であるように思われる.そして,このサービスの実現のためには,ドイツで老後を迎える日本人の自助団体と日本領事館・大使館,ドイツの社会福祉機関の行政機関との連携が重要となる.
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