日本と韓国では,介護保険制度による福祉の市場化に伴い多様な変化が生じている.本研究では,介護保険機関を4類型に分け(非営利・営利,施設・在宅),各機関の運営責任者を対象に福祉の市場化に関する意識を効率性,応答性,選択性,公平性,サービスの質に基づく評価基準により自記式質問紙調査によって比較検討した.対象は各国の在宅機関400ヵ所,施設400ヵ所の運営責任者である(有効回収率は,日本が29.6%,韓国が32.8%).その結果,両国の運営責任者の意識は広範囲で異なり,韓国の運営責任者のほうが市場化について肯定的な意識を有しており,日本の運営責任者は効率性と公平性についてのみ肯定的な意識を有していることが明らかになった.また,両国とも在宅機関のほうが肯定的な意識をもっていた.こうした差異が生じる背景には,制度設計上の相違をはじめ,歴史的,文化的要因も影響していることが示唆された.
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