社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
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58 巻, 3 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
論文
  • 鈴木 浩之
    2017 年 58 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,子ども虐待の危機介入において,不本意な一時保護をされた保護者と児童相談所の協働関係の構築についてのプロセスとその構造を検討することを目的とする.研究においては,神奈川県下の児童相談所職員267人(回収率71.4%)にアンケート調査を行い,探索的因子分析を実施した.その結果,協働関係を構築するための支援として四つの因子が抽出された.つまり,「目標・目的の共有」,「スキル・治療・助言」,「子育ての対話」,「現実受入れ支援」である.そして,その結果を共分散構造分析によって協働関係構築の関係性を検討した.その結果,「子育ての対話」から「目標・目的の共有」,「目標・目的の共有」から「現実受入れ支援」の潜在変数間に有意な関連が認められた.また,「スキル・治療・助言」は「子育ての対話」を媒介することで有意な関連が認められることがわかった.これらの関係性を協働関係構築支援モデルとしてまとめた.協働関係構築支援モデルの適合度はGFI=.904, AGFI=.858, RMSEA=.071であり,統計学的に優位な関連性を示した.

  • 日田 剛
    2017 年 58 巻 3 号 p. 14-26
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    本研究は成年後見制度の首長申立てケースを受任している専門職後見人の実践から何が権利擁護に当たるのかを分析したものである.分析の前提として多義的な権利擁護という概念を「誰」の「何の権利」を「誰が」,「どのようにするのか」に視点を当て整理して定義化した.

    研究方法は専門職後見人(弁護士,司法書士,社会福祉士)8名に対してインタビュー調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.その結果,専門職後見人の成年後見実践のプロセスとそれを支える権利擁護の基盤が具体的に確認された.権利擁護の基盤には主に「ソーシャルワーク的要素」に関する態度や意識が多く含まれており,これらは調査したすべての専門職の実践において見られた.よって今後は専門性を超えてソーシャルワークを成年後見実践にいかに落とし込むかが課題となる.

  • 橋本 力
    2017 年 58 巻 3 号 p. 27-40
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    介護老人福祉施設の介護職員のワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)の現状および構成要素を明らかにすることを目的とした.

    全国の介護老人福祉施設を無作為に1,000カ所抽出したのち,施設の介護職員を対象に,自記式調査質問紙を用いた郵送調査を行った(回収率32.1%).

    介護職員の自身のWLBに対する回答は,「まったく満足していない」と「あまり満足していない」の合計が42.8%,「やや満足している」と「非常に満足している」の合計が38.1%であった.また,介護職員のWLBの構成要素を明らかにするために,探索的因子分析を行った結果,ワークとライフの側面を捉えた4因子が抽出された.さらに確証的因子分析を行った結果,適合度(GFI=.936, AGFI=.909, CFI=.974, RMSEA=.053)も良好であった.抽出された因子ごとに,Cronbachのα係数を算出した結果,すべての因子において,0.80以上を示し,一定の信頼性が確認された.

    介護職員は,自身のWLBに満足している群と満足していない群が同程度存在している可能性が示唆された.また,介護職員のWLBは,ワークとライフの多様な側面により構成されており,これらの側面を総合的かつ多角的に捉えていくことが重要である.

  • 根本 輝
    2017 年 58 巻 3 号 p. 41-53
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    本研究は,定期巡回随時対応型訪問介護看護における随時対応型訪問に着目し,コール回数,支援内容,ならびに介護職員のヒアリングから集合住宅型と地域提供型とを比較検討することで,その使用方法を明らかにした.その結果,第1にコールの使用回数については,集合住宅型ではほとんどの利用者がコールを使用していたのに対し,地域提供型では半数以上が未利用者であった.第2に支援内容に関しては,集合住宅型と地域提供型とでニーズの質が異なっており,支援方法についての差異が明らかになった.また先行研究との比較から,地域提供型における調査事業所のコール対応では,利用者に対する柔軟な支援方法がわかった.これら結果から,本研究は,地域提供型におけるコールの使用方法の改善と利用者のニーズが表出しやすい環境の必要性を示唆するものである.

実践報告
  • 梅崎 薫
    2017 年 58 巻 3 号 p. 54-67
    発行日: 2017/11/30
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,開発した日本の高齢者デイサービスセンター(以下,デイ)版,修復的正義(RJ)の対話プログラムを評価することである.また,長期目標の高齢者虐待予防の地域プログラム開発にむけてデイでの成果からインパクト理論をより具体的に仮説構築する.協力デイにおいて,5カ月間の試行後,デイ職員とともに短期目標を参加型で評価した.その結果,確認した成果は以下のとおりであった.30分の対話プログラムだが参加者間に相互理解が深まり,職員と利用者間,利用者間にもつながりが生まれていた.高齢者はデイで家族のことなど個人的な話をすることに抵抗感が減り,職員にも利用者への認識の変化が生じ,新たな情報収集の場と,利用者への敬意が生まれていた.短期目標は達成されていたと結論した.しかしながら,1カ所での試行のためさらに検証を要する.これらのことから,長期目標にむけてデイでRJ対話を実施すると利用者の家族関係の悪化などを予見しやすくなり職員が関与できる可能性が高まる論理をインパクト理論に仮説構築した.また施設内虐待予防にも可能性が示唆された.

2016年度学界回顧と展望
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