社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
Print ISSN : 0911-0232
59 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
論文
  • 神部 雅子
    2019 年 59 巻 4 号 p. 1-15
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    本稿では,本人の会に所属し,当事者運動をしている知的障害者のインタビュー調査をもとに,本人の会の経験が知的障害者の権利意識の醸成に与える影響について考察する.知的障害者は,【本人の会に参加するきっかけとなる活動】や【本人の会への参加】によって,それまでに経験した違和感や理不尽な経験は障害者差別であり,権利侵害であったと捉え直している.また,【本人の会への参加】をし活動を行うことは,〈自信の回復〉や,権利意識の醸成につながっている.本人の会の活動を通して,知的障害者は自分が置かれている現実を捉え直し,自分の権利を社会関係の中で実現しようという権利意識が生まれ,その権利意識を持つ当事者とのかかわりの中で,権利意識は伝達される.本人の会には,活動の積み重ねや仲間との出会いや他団体と連携するなかで権利意識が醸成され,さらに他者に伝えられていくという循環がある.

  • 鈴木 良
    2019 年 59 巻 4 号 p. 16-29
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,知的障害者入所施設の解体を実施した法人Aを取り上げ,職員が1)施設解体を実施したのはなぜなのか,2)小規模分散型の地域生活への移行を目指した計画を修正したのはなぜなのかを質的調査によって明らかにした.この結果,第一に,施設解体を実施したのはまず,「無力化による受容の重視」と「虐待構造への自覚」によって,職員・入居者間の上下関係を可能な限り解消することを目指したからであった.次に,施設内改革や地域移行を実施しても職員・入居者間に生じる上下関係は解消しえないという構造的限界を認識したからであった.第二に,計画を修正したのはまず,補助金や法人運営の観点から町との協力関係を重視したからであった.次に,施設解体を実現させることが重視され,残る施設の解体を視野に入れて,地域に出ることを優先する意識があったからである.本研究は外発的政策誘導と内発的意識改革による脱施設化政策の必要性を示唆する.

  • 國重 智宏
    2019 年 59 巻 4 号 p. 30-40
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,長期入院精神障害者の退院支援場面における相談支援事業所の精神保健福祉士(PSW)の「かかわり」のプロセスについて明らかにすることを目的とする.A圏域の7名のPSWに対するインタビュー調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行った.分析の結果,三つのカテゴリーからなる「かかわり」のプロセスを明らかにした.まずPSWは,退院支援という自らの業務をいったん横におき,長期入院精神障害者との〈お互いを知るための「つきあい」〉を通して,彼らに「人」として信用してもらう.次に彼らと〈パートナーとして認めあう関係〉を築き,退院という共通の目標に向けて協働する.最後に退院という目標がなくなり,援助関係が終結した後も,彼らと「人」として〈つながり続ける「かかわり」〉を築くに至っていた.

  • 小野内 智子
    2019 年 59 巻 4 号 p. 41-53
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,介護保険施設に勤務する経験3年以上の介護職員のワーク・エンゲイジメントと職場環境との関連を検討することであった.協力が得られた72施設において,アンケート調査を行い,284名から得られた回答をもとに分析を行った.調査項目は,修正版Job Demands-Resourcesモデルを参考に構成した.ワーク・エンゲイジメントと職場環境の重回帰分析の結果,ワーク・エンゲイジメントを高める要因として,『仕事の資源(事業場レベル)』の「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」と「役割の明確さ」,『仕事の資源(作業レベル)』として「仕事の意義」と「成長の機会」,「仕事の適性」に有意な影響が認められた.これらのことから,『仕事の資源(部署レベル)』のチームや人間関係よりも普段の介護業務において,仕事の意義を感じることができるような職場環境づくりが求められると考えられた.

  • 鶴田 智子
    2019 年 59 巻 4 号 p. 54-66
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,「配置型」「派遣型」の両方を経験し活動しているスクールソーシャルワーカー(SSWer)4名にインタビューを行い,意識はどう変容するのか,配置形態の違いによって支援プロセスはどう違うのかを,TEAを用いて明らかにする.その結果わかったことは次の3点である.①〈学級崩壊や虐待されて暴れる子どもとの出会い〉,〈SSWerが主導的に活動すること〉,〈子どもに直接助言しSOSの出し方を教えること〉という分岐点を4名が「配置型」勤務の際に経験していること.②〈学校や子どもを他機関とつなぐこと〉は,配置形態に関係なく経験すること.③「派遣型」では〈配置形態のジレンマ〉を感じるようになり,現場への直接的支援や教師との協働がより可能な「配置型」の重要性を認識するようになることなどが明らかになった.本研究では,SSWerの支援は配置形態により質的違いがあり,子どもとその環境への直接的支援や学校・地域との協働が重要であることが示唆された.

  • 寺田 千栄子
    2019 年 59 巻 4 号 p. 67-79
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,わが国のLGBTQの児童生徒の支援において,学校ソーシャルワークにおける有効な支援のあり方を検討することを目的とする.そのために,LGBTQ児童生徒の支援において重要な役割を担っていると考えられる養護教諭を対象としたアンケート調査を行い,わが国の学校教育現場の支援状況を分析した.その結果,学校教育現場にはスティグマをはじめとした子ども達を抑圧する構造が存在し,これらがパワーの減退につながっていることを示した.また学校教育現場の課題として,①早期支援が行われていない,②学校教育現場は当事者にとって相談しやすい環境にない,③養護教諭は学校全体への働きかけを積極的にできていないことを明らかとした.ソーシャルワークの専門的価値基盤である人権,社会正義,多様性の尊重の観点から学校ソーシャルワーク実践が必要であり,とりわけパワーの減退についてはエンパワメント理論の導入が有効であると考えられる.

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