社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
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最新号
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論文
  • 黒田 文
    2019 年 60 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/13
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    グループワークはソーシャルワークの主要な援助方法と位置づけられ,欧米の実践では,利用者への支援提供のために複数の援助専門職が定期的に集う支援会議やケア会議はタスク・グループの実践としてグループワークの介入対象となっている.わが国のグループワーク実践がこの潮流に乗り遅れていることを鑑み,本研究では,タスク・グループを介入対象とする実践に寄与する専門教育について考察する.特に対立を極力避けようとする妥協行動が優先される日本のグループ原型を克服する必要があると捉え,原型と異なるグループ経験を演習で意図的に提供し,その経験からグループワークを問い直す学びを企画した.演習前・後のグループワーク実践に対する認知の変容について考察した結果,受講生は内在化させていた準拠枠とは異なり,多様な情報や考えが内包される状態を対立と捉え,それを協調的に乗り越えることが可能だと認識している.

  • 西岡 弥生
    2019 年 60 巻 1 号 p. 17-32
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/13
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,「心中による虐待死」事例の家族危機形成プロセスを検証することによって,加害者とされた母親の「喪失体験」を明らかにすることである.具体的には,自治体報告書で報告された9事例を対象に,心中が企図されるまでの家族の生活状況を二重ABC-X理論を援用し検討した.家族は【前危機段階】で,すでに不安定な生活基盤と脆弱な家族機能の状態にあった.【危機発生段階】で母親は既存の役割を失い,【後危機段階】では母親を支える重要な家族成員や日常生活の安全感,さらに関与のあった支援機関等の間での社会関係を失うという複数の「喪失体験」にみまわれていたことが示された.喪失の累積によって母親は「悲哀の病理」に陥り,認知が閉塞した状況で「心中」を企図したものと推察された.母親の精神の危機は虐待の定義では捉えきれず,社会生活が困難な母親の状況と支援者側の認識との間に齟齬が生じ見過ごされた可能性が高いと考えられる.

  • 鈴木 良
    2019 年 60 巻 1 号 p. 33-46
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/13
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,知的障害者入所施設によるグループホームへの移行を前提とした施設解体を受け入れた家族がこれをどのように捉えたのかを自立規範に焦点を当てた質的調査によって明らかにした.第一に,移行前は,家族は施設からの移行は生活・就労面の自立を意味するものと認識し,ここには障害者自立支援法に関わる施設側の説明も影響していた.この結果,家族は子の自立困難性に伴う不安感や自宅復帰への懸念を抱えた.しかし,家族は職員への信頼や遠慮ゆえに施設側の決定に委ねるという受動的態度が見られ,これは家族が自立規範に基づき養育すべきだという家族規範が影響していた.第二に,移行後はまず,グループホームは生活・就労面の自立を前提とする場と認識されていた.次に,自立困難になる将来の予測不可能性に伴う不安ゆえに施設入所を容認/肯定する状況が見られた.本研究は自立規範の相対化と家族支援による脱施設化政策の必要性を示唆する.

  • 狩野 俊介, 三浦 剛
    2019 年 60 巻 1 号 p. 47-62
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/13
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    精神障害者の地域生活支援において医療と福祉が連携したクライシス・プラン(CP)の作成と活用が注目されている.本研究は,精神科病院(病院)と相談支援事業所(事業所)に所属するソーシャルワーカーのCP実践のあり方について半構造化面接により調査した.そして,分析方法はテキストマイニングを用いた.その結果,①CPはストレングスアプローチを基調にし,当事者が希望する地域生活を実現するための目標志向型のケア計画であること.②CP実践の過程には,事前の関係づくりの過程と修正を図っていく過程が存在すること.③医療と福祉が連携したCP実践に向けて,“危機・悪化”の状況では病状や生活状況に応じた医療による対応方法が明示され,“早期・予防”の状況では事業所と病院が協働した具体的な生活支援活動が計画されることが明らかになった.これらを踏まえ,精神障害者の地域生活支援におけるCP実践が展開されることが重要である.

  • 河野 高志
    2019 年 60 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/13
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    本研究は,地域包括ケアシステムにおける多職種連携の方法に関する知見を得ることをねらいに,多職種連携を促進する要因の抽出とそれらの関連の検討を目的とした.質問紙調査は,全国5,053カ所の地域包括支援センターに所属する社会福祉士または主任介護支援専門員を対象に実施した.調査内容は,対象者と地域包括支援センターの基本属性,ケアマネジメントの実施状況,インタープロフェッショナルワークの実施状況,連携の内容,連携の状態で構成した.分析では,回収した1,567名のデータを使用し,主成分分析による連携の要因の抽出と重回帰分析による要因間の関連の検討を行った.その結果,地域包括ケアシステムにおける多職種連携の促進には【チームワークの促進】が最も影響を与え,【チームワークの促進】には【IPW】が最も影響を与えるという関連を明らかにした.

  • 中村 秀郷
    2019 年 60 巻 1 号 p. 75-88
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/13
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,保護観察所の保護観察官がソーシャルワークで直面する困難性への対処プロセスの構造・展開を明らかにし,その実態を体系的に整理することである.保護観察官23名を対象として,インタビュー調査による半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて逐語データの分析を行った.分析結果から15個の対処プロセス概念が生成し,概念間の関係性から〈保護観察官としてのアイデンティティーの意識〉,〈対象者との関係構築の姿勢〉,〈組織ライン・ピアによるフォロー〉,〈他機関との関係構築の姿勢〉,〈保護司との協働態勢の姿勢〉,〈処遇の展望化〉の6つのカテゴリーに収斂された.本研究では保護観察所の保護観察官に共通する困難性への対処プロセスを明らかにし,刑務所出所者等の社会内処遇の実践現場で直面すると考えられる困難性への対処方法,さらには効果的な処遇や有効なアプローチについて示唆を与えた.

実践報告
  • 丸岡 稔典
    2019 年 60 巻 1 号 p. 89-101
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/06/13
    ジャーナル 認証あり

    障害者の参加を阻む障壁には内面化された規範や他者との相互作用により生じる抑圧,それらの結果としての自己抑制といった明示的でないものも含まれる.本稿では,こうした障害をめぐるスティグマを障害者と健常者の間で共有する技法を明らかにする.そのために,障害者と健常者による芝居作り集団への参与観察を実施した.結果,芝居作りの過程では,障害者・健常者メンバーが互いの対等性と差異を確認しながら,一人一人の異なる障害をめぐる経験や出来事,ならびに経験に関わる人物の行動や気持ち,それらを支える思考について,別の他者に伝えるために,各メンバーが自分の経験を対応させながら理解を深める「対話」がなされていた.「対話」は,芝居作りという日常的な相互行為の場面とは異なる空間を実験的に構築することで実現していた.「対話」には障害のスティグマを可視化し,障害者と健常者の双方が解決すべき課題として共有していく可能性がある.

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