社会福祉学
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論文
  • 小笠原 慶彰
    2020 年 60 巻 4 号 p. 1-13
    発行日: 2020/02/29
    公開日: 2020/05/23
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    社会福祉史において,戦前・戦後の「断絶」と「連続」という課題がある.たとえば戦前の役割を戦後に「連続」させたと推測できるにもかわらず関心を払われていないテーマの一つに,社会事業主事がある.厚生省年史では戦後の社会福祉主事の先駆的存在としているが,詳しく説明されていない.そこでその法的根拠である地方社会事業職員制の概要を明らかにし,次に何人かの社会事業主事の人物像を探った.さらにその養成制度である社会事業研究生も検討した.その結果,戦前の社会事業行政専門職といえる社会事業主事は,1944(昭和19)年の時点でいったん「断絶」したと捉えなければならないとわかった.しかしその養成制度が戦後の社会福祉専門職教育に与えた影響や社会事業主事を務めた人物が戦後の社会福祉界で果たした役割による「連続」も無視できない.この点を検討することが今後の研究課題になる.

  • 平松 喜代江, 堅田 明義
    2020 年 60 巻 4 号 p. 14-27
    発行日: 2020/02/29
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,児童養護施設在籍者が大学等の進学を可能にする支援の在り方を検討するために,大学等へ進学した児童養護施設退所者に対して面接調査を行った.その結果,大学等進学実現までの経過を「自己調整型」「他己調整型」「一貫型」の三つに分類した.そして,大学等の進学を実現するのに必要な支援には,進路希望がもてるように進路に関する情報の提供と説明や幅広い進路選択肢を提示する「情報説明型支援」,および進路希望を実現するための具体的な知識や方法などを教示する「情報教示型支援」があることを示した.これらの支援は在籍者自身の境遇や育ちによって目標や進路のイメージがもてない場合でも,自らの進路希望を見いだす過程に影響を与え,進路希望を考える契機となり,さらに支援者自体が在籍者の進路の目標となり,支援者の存在は進路決定に大きく影響することがわかった.

  • 天畠 大輔
    2020 年 60 巻 4 号 p. 28-41
    発行日: 2020/02/29
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,兵庫青い芝の会会長澤田隆司の介護思想とその実践について検討し,その問題点を浮かび上がらせることで,いまだ解明されていない「発話困難な重度身体障がい者」の介護思想の枠組みを模索することである.

    はじめに,青い芝の会の活動の中心を担った横塚晃一の主張に着目し,青い芝の会の思想である「健全者文明の否定」や「健全者手足論」について考察する.次に,横塚の思想に影響を受けた澤田がどのような実践を行っていたのかを整理する.次に,特に重度の発話障がいを抱えていた澤田の,青い芝の会の介護思想を実践することへの限界と課題に言及する.また,介護者が兵庫青い芝の会会長という属性による解釈を行ったことから,両者の間に生じた問題を明らかにする.最後に,本研究の結論として,澤田独自の介護思想とその実践から,「発話困難な重度身体障がい者」における介護思想を考察する.

  • 山下 幸子
    2020 年 60 巻 4 号 p. 42-55
    発行日: 2020/02/29
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,重症心身障害者への地域生活支援および意思決定支援の構造を明示することである.本研究では主にインタビュー調査を行った.親元を離れ地域で暮らす2名の重症心身障害者と,その支援者たちが調査協力者である.調査結果から,支援は複数のカテゴリーの関連から成り立つことがわかった.【日常的に行われる意思決定支援】とともに【地域生活特有の課題への対応】が支援者には求められる.それら支援にはキーパーソンの役割が不可欠であり,【支援キーパーソンによる本人の生活の旗振り】がなされる.こうした支援の継続により,支援者たちの間で【本人を中心に,支援者たちが共同して生活を作るという志向の生成】がみられる.支援構造が明らかになることで,生活支援と切り離さない意思決定支援の議論の必要や,生活に根差した意思決定支援には柔軟な支援体制の確保と,障害者本人の社会経験の蓄積が必要だとわかった.

  • 藤江 慎二
    2020 年 60 巻 4 号 p. 56-67
    発行日: 2020/02/29
    公開日: 2020/05/23
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,介護老人福祉施設の介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセスを明らかにすることで,不適切な介護の予防的研究および実践に寄与することを目的とした.研究方法には,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.これらには〈他職員介護による苛立ち・負担〉という苛立ちを増加させる要因があった.そして最終的に介護職員の〈利用者への苛立ち〉は〈自分自身への苛立ち〉となり,諸種の焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていた.このような現状を介護職員だけの問題にせず,職員,施設,行政機関などが個々の役割を果たし,不適切な介護の予防に向けた総合的な取り組みを検討していくことが必要であると考えられた.

  • 中村 秀郷
    2020 年 60 巻 4 号 p. 68-81
    発行日: 2020/02/29
    公開日: 2020/05/23
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    本研究の目的は,保護観察所の社会復帰調整官が医療観察制度のソーシャルワークで直面する困難性の構造・展開を明らかにし,その実態を体系的に整理することである.社会復帰調整官7名を対象として,個別インタビューによる半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて逐語データの分析を行った.

    分析結果から14個の困難性概念が生成し,概念間の関係性から,〈司法における福祉実践へのストレス〉,〈制度・組織上の処遇環境面へのストレス〉,〈対象者の言動へのストレス〉,〈地域処遇への調整困難のストレス〉,〈処遇の行き詰まりへのストレス〉の5つのカテゴリーに収斂された.本研究では,医療観察制度のソーシャルワークの実践現場で直面すると考えられる困難性の予測に示唆を与えた.

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