本稿では,知的障害者の本人の会や当事者運動組織の支援者に対するインタビュー調査を通して,知的障害者の本人活動や当事者運動に長年携わってきた経験がどのような支援者の役割認識とその変化をもたらすのかを明らかにする.
【支援者の役割】には,〈情報提供〉,〈本音を引き出す〉,〈情報発信支援〉,〈経験の機会をつくる〉,〈交流の場をつくる〉,〈現実を突きつける〉,〈自分と仲間を関連付ける〉などがあり,支援者の働きかけによって,当事者の権利意識が芽生え,当事者運動の意欲へとつながっている.そこには支援者の〈共に学び,共に戦う〉姿勢,そして当事者の意思決定を尊重し〈見守る〉ことが求められる.当事者運動において支援者と知的障害者本人は相互に影響し合う関係であり,支援者は「支援を提供する」だけの存在ではなく,ともに活動していくなかで支援者自身の価値観も変容し,支援の仕方も変化していくのである.
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