社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
Print ISSN : 0911-0232
62 巻, 3 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
論文
  • 増田 裕子
    2021 年 62 巻 3 号 p. 1-16
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,継時的な母親のワーク・ファミリー・コンフリクト(WFC)の推移を把握し,WFCが高い時と低い時にウェルビーイングを高く保持する対処行動を明らかにすることである.調査方法はWFCとウェルビーイングの推移をライフラインで把握し,葛藤の高い時点について尺度を用いた質問紙調査と対処行動に関する面接調査を行った.尺度結果よりウェルビーイング度の高いWFC対処行動を抽出し,定性的(質的)コーディングで分析した.仕事領域で「働き方改革の活用」「職場・上司・同僚の理解」「仕事をする自己を肯定」「就労の安定」,家族領域で「夫・家族・友人に協力要請」「保育所・幼稚園・自治体に協力要請」「病院に協力要請」「子どもの安定」「自身のプラスの変化に着目」「環境・状況の変化」を抽出した.働く母親のウェルビーイングを高く保持するには,WFC度の高低によって異なる対処行動と支援が必要だと示唆された.

  • 神部 雅子
    2021 年 62 巻 3 号 p. 17-31
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本稿では,知的障害者の本人の会や当事者運動組織の支援者に対するインタビュー調査を通して,知的障害者の本人活動や当事者運動に長年携わってきた経験がどのような支援者の役割認識とその変化をもたらすのかを明らかにする.

    【支援者の役割】には,〈情報提供〉,〈本音を引き出す〉,〈情報発信支援〉,〈経験の機会をつくる〉,〈交流の場をつくる〉,〈現実を突きつける〉,〈自分と仲間を関連付ける〉などがあり,支援者の働きかけによって,当事者の権利意識が芽生え,当事者運動の意欲へとつながっている.そこには支援者の〈共に学び,共に戦う〉姿勢,そして当事者の意思決定を尊重し〈見守る〉ことが求められる.当事者運動において支援者と知的障害者本人は相互に影響し合う関係であり,支援者は「支援を提供する」だけの存在ではなく,ともに活動していくなかで支援者自身の価値観も変容し,支援の仕方も変化していくのである.

  • 佐草 智久
    2021 年 62 巻 3 号 p. 32-44
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,復帰前後の沖縄における高齢者福祉政策の動向が復帰を境にいかに変化したかを示すことで,本土の歴史に回収できない,当時の沖縄の高齢者福祉政策の特徴を明らかにすることである.復帰前沖縄の高齢者福祉政策については先行研究が皆無に等しく,その実態は明らかにされていない.そこで本稿は,本土の動向と比較しつつ,琉球政府や社会福祉協議会の刊行物,県内の戦後新聞記事,沖縄県公文書館所蔵の福祉事務所資料などの文献資料から,当時の沖縄の高齢者福祉政策の特徴を明らかにした.その結果,琉球政府が定めた公的社会福祉制度が周縁部から都市部に伝播したこと,社会資本の偏在と財政上の問題という消極的な理由ではあるが在宅処遇が中心となっていたこと,その後復帰により日本国政府の高齢者福祉政策に沿ったことによる「在宅」から「施設」へという潮流の変化,この3点が復帰前後の沖縄の高齢者福祉政策の特徴として示された.

  • 狩野 俊介
    2021 年 62 巻 3 号 p. 45-57
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,東北地方のスクールソーシャルワーカー(SSWer)を対象とした実態調査から,SSWerの実践活動に影響を与える要因を明らかにすることである.そこで,SSWerの実践効力感とSSWerに関する事業達成感に影響を与える要因について検証する.調査は,東北地方のSSWer99名を対象として,調査票調査を実施した.その結果,47名のSSWerから66自治体における実践活動のデータが得られ,多変量解析によりSSWerの実践活動に影響を与える要因を分析した.これにより,SSWerの実践効力感とSSWerに関する事業達成感に対して,SSWerの活動状況や活動形態,その実践活動を取り巻く環境要因が影響を与えていたことが明らかになった.本研究により,SSWerが実践効力感と事業達成感を得られる学校現場や教育委員会の体制,SSWerの活用内容について整備されていくための示唆を得た.

  • 岩田 千亜紀
    2021 年 62 巻 3 号 p. 58-72
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,2020年に一般社団法人Springによって実施された「性被害の実態調査アンケート」の質的調査の2次分析を行った.その結果,性暴力被害者のニーズを踏まえた相談支援についての課題として,“相談機関のアクセシビリティ(利用しやすさ)”,“相談機関のアクセプタビリティ(受け入れやすさ)”,“相談機関の相談の質”の三つがあることがわかった.そのため,性暴力被害者が相談支援に繋がるためには,物理的アクセシビリティを高めるだけでなく,相談支援の質の向上や,中長期的な相談支援の提供など,包括的かつ総合的な支援サービスへの改善が求められる.性暴力被害者への相談支援におけるソーシャルワーク支援は,著しく乏しい現状にある.今後,ワンストップ支援センターや地域のソーシャルワーカーが,性暴力被害者の生活再建・回復を目指した中長期的な支援の中核になることが必要である.

2020年度学界回顧と展望
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