序論:生体吸収性プレートを用いた眼窩底骨折治療は一般的になっているが,その至適強度保持期間について検討した文献は渉猟し得た範囲ではない。われわれは,術後の眼窩底骨片の変化に着目し検討した。 対象・方法:2009年4月から2017年3月に当施設で吸収性プレートを用い眼窩底骨折手術を行った症例のうち,評価可能であった28例を対象とした。単純CT画像で眼窩底骨片-プレート間の縦軸距離 (FPD),同軸上の眼窩長 (POD),その合計 (TD)を経時的に計測し,u-HA+PLLA群,PGA+PLLA群で比較検討した。 結果:全症例でFPDの短縮を認め,u-HA+PLLA群で有意に短縮した。FPDの短縮は34~37週持続した。 考察:強度保持期間の違うプレート間でFPDの短縮に違いがみられた。十分な眼窩底骨片の改善を望むには,34~37週程度強度保持可能なプレートを使用する必要があることが示唆された。
人工血管感染を伴う縦隔炎は治療に難渋し,死亡率も高い。その治療の原則は,感染した人工血管の除去・再置換手術が検討されるが,難易度や侵襲性などの問題から抜去が困難な場合も多い。われわれは,人工血管感染を伴う縦隔炎に対して,十分なデブリードマンを施行後,陰圧閉鎖療法(以下NPWT)を用いた創傷管理により感染制御を図り,二期再建手術を行っている。 対象は10例(男性6例,女性4例),平均年齢60歳であった。人工血管の再置換を行えた2例以外では,人工血管の除去は全身状態などの問題で行えなかった。全身麻酔下にデブリードマンを施行し,二期再建手術までの創部感染のコントロールと創傷管理を目的にNPWTを適用した。全例で良好な肉芽増生,感染の鎮静化が得られた。再建方法は,筋弁による被覆を行った3例以外は,大網弁か大網弁と筋弁の併用であった。感染を認める人工血管は除去・再置換を検討するが,全身状態などの問題で困難な場合には,感染の鎮静化と十分な創傷管理が得られてから人工血管周囲を大網弁や筋弁で完全に被覆することが重要である。
骨盤底が欠損するような悪性腫瘍切除術では,体表面の形成とともに,筋や軟部組織の充填が必要である。薄筋皮弁は,腹腔鏡手術と緩衝せず,術中の体位変換が不要で,術前の放射線照射野から外れている利点がある。 目的:悪性腫瘍摘出後の骨盤底欠損に対し,short gracilis myocutaneous flap(以下:短茎薄筋皮弁)を用いた再建術の安定性と課題を調査した。 方法と対象:2017年5月から2018年10月に当科で経験した悪性腫瘍摘出後の骨盤底欠損に短茎薄筋皮弁による再建6症例。 結果:皮弁は全例で生着した。平均年齢66.3歳,男性2例,女性4例,骨盤底欠損の平均値は5.8cm,片側皮弁による再建4例,両側皮弁による再建2例であった。合併症は2例で認めた。 考察:適応症例では再建成績は安定しており,有用である。しかし,広汎な組織欠損をきたす症例では再建組織の不足をきたす可能性がある。
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