創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
2 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 吉田 哲也, 山本 有平
    2011 年 2 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/01
    ジャーナル フリー
    糖尿病性足病変は,感染を伴っていることが多く,神経性潰瘍・湿性壊死である。全身管理として,厳重な血糖管理と,十分な抗生剤投与による感染制御が重要である。全例皮膚灌流圧 (SPP) 検査を施行して,虚血性因子の有無を評価する。創治癒遅延があり,足背・後脛骨動脈の拍動が触れないまたはSPPが50mmHg以下の場合,血管造影検査を行う。局所療法として深部感染例では,まず創の開放と壊死組織の減量を行う。血管の狭窄や閉塞がある場合,血行再建後にさらに徹底した壊死組織除去を施行する。非侵襲的治療として,術前後に陰圧閉鎖療法などを駆使して創の環境を整える。さらに塩基性線維芽細胞増殖因子 (bFGF) 製剤などを使用して,肉芽の増生を図る。縫合する場合,真皮・皮下縫合をわずかにとどめる。創の被覆には,おもに極薄分層植皮術を施行している。糖尿病性足病変の治療は,単に局所の治療にとどまらず,総合的な視点から徹底的な集学的治療と細かな処置が必要である。
原著
  • 元村 尚嗣, 大橋 菜都子, 藤川 平四朗, 丸山 陽子, 須賀 久司, 原田 輝一
    2011 年 2 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/01
    ジャーナル フリー
    糖尿病や末梢動脈疾患 (peripheral arterial disease; 以下PAD) による足部潰瘍は難治となることが多く,その治療には難渋する。Schultzらにより提唱されたwound bed preparation (以下WBP) という概念を踏まえたうえで,われわれは従来の保存的療法と手術療法の折中的治療法として,積極的デブリードマンおよび遺伝子組み換えヒト型塩基性線維芽細胞増殖因子: トラフェルミン (フィブラスト®,科研製薬社,日本) (以下bFGF) と陰圧閉鎖療法 (negative pressure wound therapy; 以下NPWT) を用いた積極的保存的療法 (aggressive conservative therapy) を糖尿病およびPADに起因する骨露出を伴った足部難治性潰瘍21例に対して行った。途中死亡した1例を除いて,90%で下肢を救済することが可能であった。治癒までの期間は平均5.7ヵ月であった。本法は膝下または大腿切断術を行う前に考慮すべき方法であり,大切断を拒否している例や組織移植などの高侵襲な手術療法に耐えられない例において,簡便で,優れた方法であると考えられた。
  • 西 由起子, 守永 圭吾, 渡部 功一, 力丸 英明, 奥田 希和子, 坂本 有孝, 王丸 陽光, 清川 兼輔
    2011 年 2 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/01
    ジャーナル フリー
    術後腹部創感染・離開は,感染が沈静化し創治癒にいたるまで数ヵ月を要することも多い。創内持続陰圧洗浄療法を用いて,創を早期に治癒させることが可能であったため,実際の方法と結果にについて報告する。
    まず創内のデブリードマンを行う。ただし,腹壁の縫合糸は,強固な癒着が得られる術後3週以降に除去する。次に,創の形状に合わせたスポンジに多くの側孔を開けたチューブを2本埋入し,創面に密着させる。その上面をフィルムドレッシングで被覆し創内を完全な密閉腔としたのち,1本のチューブを生食ボトルに,もう1本を持続吸引器に接続し,本法を開始する。スポンジの交換は3~4日に1度行う。
    症例は18例で,14~63日 (平均35日) の期間内に創は治癒した。
    本法は,腹壁創離開の早期治癒を可能とした。腹部創離開はあらゆる施設で起こり得る合併症であることから,施設を問わず容易に行える本法は今後ルーチンの治療法になり得ると考えられる。
  • 田中 顕太郎, 矢野 智之, 森 弘樹, 岡崎 睦
    2011 年 2 巻 1 号 p. 26-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/01
    ジャーナル フリー
    腹壁瘢痕ヘルニア修復術後の人工物感染症例に対して,遊離大腿筋膜移植術を用いて治療した経験を報告する。対象は2006年9月から2007年12月に治療した3例である。人工物を周囲の感染組織を含めて完全に切除し,その後の再建術式を検討した。われわれは確実な感染制御と手技の簡便さを優先し術式を選択した。腹膜が残存した場合,植皮術を行い二期的にヘルニア修復術を行った。腹膜が欠損した場合,遊離大腿筋膜移植による腹膜再建を行った。全例で創治癒し感染を制御できた。移植した筋膜は全例で生着した。しかし移植筋膜を被覆する腹壁組織が不足した症例では,術後感染が再燃し治癒に時間を要した。血流のない遊離大腿筋膜移植による治療は可能だが,十分な血流と組織量をもつ組織での移植筋膜の被覆が必要であった。今後の課題として,被覆組織量が不足する場合の有茎・遊離皮弁移植の適応の考慮,術後の腹壁強度に対するさらなる配慮,などがあげられた。
  • 副島 一孝, 田邉 裕美, 八巻 隆, 河野 太郎, 櫻井 裕之
    2011 年 2 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/01
    ジャーナル フリー
    培養表皮細胞および線維芽細胞を含有する創傷被覆材を真空凍結乾燥させて室温保存を可能とし,そのサイトカイン放出能について検討した。
    培養表皮細胞,線維芽細胞を市販の創傷被覆材上に播種した。(1)表皮細胞単独群 (2)線維芽細胞単独群 (3)表皮細胞,線維芽細胞混合群を作成して,それぞれ凍結保存群と真空凍結乾燥群に分けた。1週間経過後にDMEM培地単独で12時間インキュベートして,その上清中のbFGFとVEGFを定量評価した。
    bFGFは線維芽細胞単独真空凍結乾燥群で大量に放出されたが,表皮細胞との混合群では少量であった。VEGFは線維芽細胞単独真空凍結乾燥群では細胞単独の凍結保存群よりも有意に多く放出したが,混合群ではさらに多量に放出された。
    真空凍結乾燥することで多量のサイトカインが放出されることが示唆された。表皮細胞と線維芽細胞は共培養下で相互しあっていることが推測された。
速報
症例報告
feedback
Top