創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
3 巻, 3 号
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第3回日本創傷外科学会総会・学術集会(2011年7月,札幌)特別プログラムより
特集1:陰圧閉鎖療法~私の工夫
  • 岡本 泰岳, 水野 清行, 小池 学
    2012 年 3 巻 3 号 p. 99-107
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    V.A.C.治療システム (以下VAC) は, 陰圧閉鎖療法 (negative pressure wound therapy ; 以下 NPWT ) を臨床現場で安全かつ効率的に実践する治療器具である。われわれは VAC 専用ポリウレタンフォーム (以下, 黒フォーム) の製材特徴が, NPWT の効果発現において大変有用と考えている一方で, その特徴がゆえの不利益もあると考えている。
    2010 年 4 月 ~ 2011 年 3 月に VAC を使用した 15 症例を提示する。黒フォームは, 組織欠損の 3 次元的形状に成形加工し創面に広く接触させた。皮下ポケット症例における黒フォームの使用方法は, 皮膚軟部組織の厚みとポケットの長さにより 3 タイプに分類した。全 15 症例ともに早期に良好な肉芽増生, 皮下ポケットの縮小や消失, 創の収縮を認め, 低侵襲の手術や保存的治療により全例治癒にいたった。
    VAC による NPWT の効果, 特に力学的変形作用を最大限に引き出すには, 黒フォームの製材としての特徴を活かした形状加工や皮下ポケットへの対応が重要と考える。
  • 榊原 俊介, 寺師 浩人, 櫻井 沙由理, 橋川 和信, 田原 真也
    2012 年 3 巻 3 号 p. 108-116
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    2010 年にわが国でも健康保険に収載された V.A.C. ATS® 治療システム (以下V.A.C.) では, フォーム材を直接健常皮膚に当てることでびらんや小水疱, 皮下出血などを生じる。これらの予防のためにハイドロコロイド製剤などの創傷被覆材が用いられているが, 保険診療請求ができない。われわれは健常皮膚保護のために, 創傷被覆材 (ハイドロコロイド製材, シリコンフォーム材) ・ 被膜材 ・ 低刺激性サージカルテープをそれぞれ用い, 皮膚保護効果とコストの比較を行った。ハイドロコロイド製材およびサージカルテープでは高い保護効果が認められたが, ほかは保護効果に乏しかった。また, 保護効果が認められた製品のコスト比較を行ったところ, サージカルテープを使用した場合にかかる経費はハイドロコロイド製材の 30 分の 1 以下であった。以上より, 医療コストを配慮すると,低刺激性サージカルテープの使用はV.A.C. 使用時の創周囲の健常皮膚保護に有用であると考える。
特集2:下肢~足切断術の新しいアプローチ
  • - A Modified Transmetatarsal Amputation の有用性 -
    辻 依子, 石田 泰久, 中山 真紀, 寺師 浩人, 田原 真也
    2012 年 3 巻 3 号 p. 117-122
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    CLI (重症下肢虚血 : critical limb ischemia) では, 血行再建術を行い十分に局所への血流を改善させたにもかかわらず, 足部切断後に断端部の創治癒遅延や壊死拡大を認めることがある。血行再建術によって増強し得た血流が, 手術侵襲自体により低下したことが一因であると考えられる。手術侵襲による局所血流の低下を防ぐために, われわれは横断的中足骨切断術 (TMA : transmetatarsal amputation) を行う際, 足背動脈と外側足底動脈の arterial-arterial connection が存在する中足骨間の軟部組織をできるかぎり温存する modified TMA を施行している。末梢血行循環を維持できるため, 原法の TMA と比較し切断後の創治癒率は 95% と高率である。また, TMA 後の歩行維持率は 86% であり, 歩行機能の維持が可能であった。
  • 榊原 俊介, 寺師 浩人, 櫻井 沙由理, 橋川 和信, 田原 真也
    2012 年 3 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    足趾潰瘍や腫瘍が MTP 関節レベルまで及ぶ例では, 切除断端の被覆のために中足骨近位での切断を要する場合や, 肉芽の増生を待ったのちに二期的に植皮を要する場合がある。しかし足部切断例においては切断レベルが術後の ADL を左右し, また術後の長期安静期間は廃用性障害につながるため, 早期の創治癒が求められる。そこで, われわれは足趾切断時に切除が足趾の半側までに留まる場合では趾動脈を血管茎とする fillet toe flap を作成し, 可及的に骨を温存し, 一期的に創を閉鎖している。今回, 強皮症および PAD による虚血性潰瘍と悪性腫瘍切除後の欠損に対して本法を施行し良好な結果を得た。足趾の片側に潰瘍が留まるのは限られたケースではあるが, fillet flap として残存組織を利用するにあたり, なんら犠牲を伴わないばかりか, 知覚皮弁としても利用できるうえ, 切断レベルを最小にし, すみやかな創治癒を期待できることから, 一考に値するとわれわれは考える。
  • - 大切断のために血行再建術を施行した 5 例の検討
    古川 雅英, 佐藤 精一, 松本 健吾, 澁谷 博美
    2012 年 3 巻 3 号 p. 129-138
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    足関節より近位での切断を大切断といい, 重症下肢虚血 (critical limb ischemia : CLI) の治療において, 救命や除痛, 再建不能などの理由で救肢ができず, 大切断を余儀なくされることがある。しかし, 病状によってはその大切断でさえ安全ではない。私たちは当科で大切断を目的に血行再建術を施行した 5 例について検討した。その結果, 全例再手術することなく創治癒していた。また 4 年以上の経過観察期間において死亡例は 1 例であり, いわゆる重症下肢虚血における大切断後の予後よりもよかった。大切断が必要な症例においても切断部位の血流精査を行い, 切断に耐えられる血行再建術を施行することは, 生命予後の改善においても有用であると思われた。
原著
  • 常川 主裕, 松尾 清, 杠 俊介, 山口 梨沙, 三島 吉登
    2012 年 3 巻 3 号 p. 139-143
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/01
    ジャーナル フリー
    赤外線サーモグラフィーは誰でも計測でき, 広範囲表面温度が色で示される。われわれは, 携帯型の赤外線サーモグラフィーを切断指再接着術後の血行モニタリング法として利用できないか検討した。挫滅された切断指再接着 14 例 16 指を対象とし, 携帯型赤外線サーモグラフィーを用いて血行再建指の温度と隣接する指の温度との差を比較した。術後 5 日目までの最低温度の平均は生着群で 32. 7℃, 不生着指群で 29. 8℃ であった。温度差は生着群で - 1. 7℃, 不生着群で - 5. 9℃ であった。サーモグラフィーは周囲環境に影響を受けやすく, 温度でカットオフ値を求めるのはむずかしいが, 温度差を比較して周囲環境に影響される欠点を補完できると考える。赤外線サーモグラフィーは広範囲表面温度を周囲と比較でき, 直接触れずに計測できる。携帯型を用いれば場所を選ばず誰でも簡単に計測でき, 切断指の状態を評価することも容易である。
症例報告
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