保健医療社会福祉研究
Online ISSN : 2436-4193
Print ISSN : 2435-0060
ISSN-L : 2435-0060
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
日本保健医療社会福祉学会第34回大会
基調講演
シンポジウム
論文
  • ―Health Belief Modelを用いた考察―
    福神 大樹
    原稿種別: 論文
    2025 年 33 巻 p. 45-56
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は建設業一人親方の石綿検診事業の受診率が低い状況に対して、Health Belief Modelを用いて、受診行動の消極性に関連する要因を検討することである。

    一人親方から得られたデータ104例を解析した結果、受診行動のカテゴリーとして促進要因は「心理社会的問題の発生頻度(治療内容・病状)」「名前を知っている疾病」、阻害要因は「心理社会的問題の発生頻度(家族関係)」「既に自覚している身体症状」であった。促進要因であるカテゴリーは発症に対する不安感情の発生に影響されており、不安感情の発生は一人親方の過去の石綿粉塵がある環境での作業経験の影響が示唆された。

    受診行動を起こす一人親方が少ない状況では石綿ばく露の自覚、健康被害の重大さの自覚が十分に形成されておらず、検診施設まで足を運ぶ負担感や家族関係の変化が生じる可能性は検診で得られるメリットよりデメリットの方が強く意識されていること、受診行動の強化因子といえる疾病・治療に関する医療情報の知識が獲得できていないため、ソーシャルワークとして石綿ばく露の機会、疾病の重大性に関する周知や教育、生活課題の抽出や解決、労働者保護政策相当の施策創設への働きかけが求められる。

  • ―史実に基づく知見から―
    富樫 八郎
    原稿種別: 論文
    2025 年 33 巻 p. 57-69
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、史実に基づくソーシャルワーカーおよび医療ソーシャルワーカーの起源を明らかにすることである。

    わが国のソーシャルワーク関連の文献を概観すると、ソーシャルワーカーの起源は、1869年に設立されたロンドン慈善組織協会に誕生した友愛訪問員と記されている。

    また、医療ソーシャルワーカーの起源は、1895年にロンドンのロイヤル・フリー・ホスピタルに誕生したアルマナーと記述されている。

    しかし、イギリスやアメリカのソーシャルワーク史や医療史の文献には、わが国のようなソーシャルワーカーおよび医療ソーシャルワーカーの起源の記述はみられない。

    このことから、わが国におけるソーシャルワーカーおよび医療ソーシャルワーカーの起源の記述を史実に基づき再考する必要がある。

  • ―成人した子どもへのインタビュー調査の分析から―
    木村 友紀
    原稿種別: 論文
    2025 年 33 巻 p. 71-82
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    本研究は、統合失調症の母親をもつ子どもに必要なソーシャルサポート(SS)を、情報的、手段的、評価的、情緒的の4つの観点から明らかにすることを目的とした。ヤングケアラー経験を持つ成人した子どもへのインタビュー調査を質的統合法で分析した結果、〔対処できずに我慢を強いられる生活〕や〔自己犠牲を伴う母親サポート〕といった困難が、SSの不足によるものであることが示唆された。情報的SSでは、統合失調症や社会資源に関する正確な情報提供と支援者のスキル向上が求められる。手段的SSでは、訪問看護や家事支援、経済的支援などの包括的な生活支援のほか、地域や行政の制度改善、学校や地域との連携が課題として挙げられた。評価的SSと情緒的SSでは、〔支えとなる身近な理解者との交流〕を通じて自己の肯定感を高め、〔病の母親を家族だけで支えなくていい〕という過去の再解釈を可能にする場の提供が重要とされた。これらの知見から、個別のニーズに応じた包括的かつ継続的な支援体制の構築が必要と考えられる。また、母親について他者に語ることを選択した子どもの意識変容を理解するため、本研究の構造をさらに検証していく必要がある。

  • ―感覚処理感受性をもとにしたセルフケアの検討―
    本岡 悟, 大西 次郎
    原稿種別: 論文
    2025 年 33 巻 p. 83-94
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の気質特性に着眼し、感覚処理感受性(以下SPS)の概念を用いてSPSの高低による業務負担感の違いと、対処の状況を質的に調査した。対象はMSW20名、SPSの程度はHighly Sensitive Person Scale日本語版により評価した。

    その結果、MSWの気質上のバリエーションは【気質の特性】【MSWの支援観】【多種多様な負担感】【負担感への対処】に整理できた。そして、SPSが高いMSWは外的な刺激を負担感として自らの内に溜め込むだけでなく、その負担感を家族や気を許す同僚などに表出し対処していた。一方、SPSが低いMSWは負担感を自分以外の対象に抱き、その負担感をもっぱら自分のなかで処理していた。

    望ましい対処(セルフケア)としてSPSが高いMSWには、自身の敏感さをプラスに捉え、負担感を理論に落とし込んだり、研修会で新たな知識を得たりする解決への評価があげられる。またSPSが低いMSWには、自らの意図と異なる言動を余儀なくされた過程を内省し、上司や同僚との関係を見直したり、自身のネットワークを活用したりする情報の整理があげられる。

feedback
Top