移植
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55 巻, Supplement 号
選択された号の論文の348件中301~348を表示しています
  • 沖原 正章, 赤司 勲, 木原 優, 今野 理, 岩本 整, 尾田 高志, 河地 茂行, 竹内 裕紀, 平野 俊彦
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 379_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言】腎移植においてエベロリムス(EVL)併用によるタクロリムス(TAC)の減量免疫抑制療法は臨床的に、その有用性が確立しつつある。しかし、EVLとTACの薬理学的相互作用に関しては、併用により免疫抑制効果の増強を認められるものの高濃度域においては拮抗作用を認めるとの報告がある。腎移植での治療濃度域におけるTACとEVLの薬理学的相互作用についての検討は極めて少ない。【方法】in vitroにおいて健常被験者から採取したヒト末梢血単核球細胞(PBMC)を使用し、EVLのPBMC増殖抑制効果に対するTACの影響およびTACのPBMC増殖抑制効果に対するEVLの影響について調べし,腎移植での治療濃度域におけるEVLとTACの薬理学相互作用について検討を行った。【結果】TACは臨床濃度域においてはEVLのPBMC増殖抑制効果を増強する相乗作用を認めたが、臨床濃度以上の高濃度においては反対に拮抗作用を認めた。拮抗作用に関してさらに検討したところ、FKBP12を競合的に奪い合う機序のため、両剤の総モル数(分子数)が一定上になると起こる可能性が示唆された[h1] 。【考察】in vitroにおいて、腎移植での治療濃度域ではEVLとTACの間の拮抗作用は認めず、TACはEVLに対する相乗作用を認めたため、薬理学的観点からも両剤を併用することの有用性が示唆された。 

  • 海寳 大輔, 鈴木 秀海, 松本 寛樹, 豊田 行英, 稲毛 輝長, 田中 教久, 坂入 祐一, 石橋 史博, 中島 崇裕, 木内 政宏, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 380_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】肺移植での拒絶反応における免疫チェックポイント分子の関連性を検討する。【方法】BALB/cとC57BL/6を用いたマウス皮下気管移植モデル(Allograft)を用いて、レシピエントへのマウス抗PD-L1抗体(αPD-L1)、PD-L1 Fcリコンビナント蛋白(RP)投与の有無による拒絶反応の変化を評価した。【結果】閉塞率はαPD-L1投与群でAllograft群に比べて有意に高く(p=0.024)、PD-L1 Fc RP投与群では、気管閉塞が軽度である傾向を認めた。またIL-6において、αPD-L1投与群で最も高く、PD-L1 Fc RP投与群に比較して有意に高値であった(p=0.0366)。同様の傾向は、IL-17A、IFNγでも認めた。【結語】PD-L1を介する免疫チェックポイント機構は、拒絶反応に関与している。今後免疫寛容誘導の可能性について検討する。

  • 岩崎 研太, 三輪 祐子, 平光 高久, 岡田 学, 鳴海 俊治, 渡井 至彦, 武田 朝美, 堀見 孔星, 松岡 裕, 友杉 俊英, 奥村 ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 380_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    長期に渡り免疫抑制剤が不必要となる「免疫寛容」は、移植医療における究極的な到達点であり、制御性T細胞(Treg)はその中心に位置する。本研究では、内皮細胞HLA-class II応答性にde novo foxp3 陽性となるCD4 T細胞のTreg機能について検討した。本研究ではCD25+CD127-PD-1+CD4T細胞をTreg細胞と定義している。内皮細胞応答性CD4T細胞のうち、約50%がCD25+CD127-PD-1+CD4T細胞であった。Foxp3の発現は、naïve Tregと同等であり、effector Tregより低値であった。この細胞を回収し、CD4T細胞-内皮細胞共培養に添加したところ、細胞増殖に影響を与えなかった。サイトカイン産生はIFNɤを強く産生し、IL-10産生のは少量であった。一方、抹消よりCD25+CD127-PD-1+CD4T細胞を回収し、内皮細胞で6日間共培養したTregは、通常のTregに比べ、強い細胞増殖抑制のを保持していた。本研究では、de novo にTreg様の表現型となる細胞群には、抑制能を持たない細胞群が多く含まれる可能性がしさされた。Tregを用いる場合には、その細胞の質を担保することが重要であると考えられた。

  • 佐々木 一樹, Yuchao Wang, Ryosuke Nakano, Lien Lu, Julia Hughes, Veronica V ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 380_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】げっ歯類で制御性T細胞(Treg)はグラフトの生着を促進することが報告されている。今回、アカゲザル腎移植モデルを用いてex vivoで培養したTregの輸注の有用性を調べた。【方法】アカゲザル9匹にMHCミスマッチドナーから腎移植を行った(Treg投与群5匹、対象群4匹)。移植6日前にレシピエントの末梢血からCD4+CD25+TregをMACSで単離した。aCD3抗体を結合させたマウス由来線維芽細胞(CD32、CD58、CD86を発現)を用いてTregを培養した。Treg投与群に、術後6~30日目までTreg(10~50x10^6 cells/kg)を計8回輸注した。免疫抑制剤にCTLA4IgとFK506を用いた。拒絶の判定は、Crの持続的な上昇(Cr>2.5mg/dl)、手術時からの体重減少20%以上とした。【結果】Treg投与群では優位にグラフト生存期間が延長した(中央値50日vs 32日、p<0.05)。CD4/CD8T細胞セントラルメモリー分画に差は認めなかったが、Treg投与群でCD4T細胞エフェクターメモリー分画が優位に少なかった。抗ドナーIgM・IgG抗体の産生や、T細胞の抗ドナー反応性に差を認めなった。Treg投与群では腸間膜リンパ節のTreg%は優位に高かった。【結論】Treg輸注はアカゲザル腎移植モデルで、グラフトの拒絶を遅延させた。

  • 岩原 直也, 堀田 記世彦, 田邉 起, 岩見 大基, 篠原 信雄
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 381_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】腎移植において拒絶反応は移植後6ヶ月以内に多く、移植後安定した経過の症例ではその後免疫抑制剤の減量が可能であり、移植後に免疫状態が変化していると考えられる。【目的】腎移植後安定した経過である症例の免疫学的状態の変化を評価する。【対象・方法】移植腎機能正常かつ拒絶所見を認めない症例が対象。移植後1年以内: 15例、1-4年: 14例、5-9年: 25例、10年以上: 16例、ESRD: 16例で、CFSE/MLRによるT細胞 の反応を評価した。【結果】ESRDでは、Donorと3rd partyに対するT細胞の反応に差はなかった。しかし、CD4+ T細胞は移植後1年から、CD8+ T細胞は移植後1年以内からDonor特異的に反応が抑制された。T細胞のDonor特異的低反応は、移植後10年以上まで継続した。【結語】腎移植後安定した症例では、Donor特異的なT細胞の低反応を認めた。

  • 吉丸 耕一朗, 内田 康幸, 河野 雄紀, 梶原 啓資, 鳥井ケ原 幸博, 高橋 良彰, 松浦 俊治
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 382_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    <背景>主としてEB virus感染により発症する移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は臓器移植後の免疫抑制状態に発症するBリンパ球あるいは形質細胞の増殖性疾患である。今回われわれは、生体肝移植後に中枢神経系(CNS)-PTLDを来した1例を経験した。<症例>15歳女性。胆道閉鎖症に対し葛西術施行後。肺高血圧および肝肺症候群のため、血液型適合生体肝移植術を施行した。術後6ヶ月より頭痛を認め、MRIにて中脳左側に直径16mmの腫瘍と閉塞性水頭症を認めた。第三脳室開窓術を行い、症状は改善。開窓術後10日目に腫瘍生検を行い、病理検査からmonomorphic B-cell PTLDと診断された。一方で、末梢血EBV-DNAは基準値未満であった。治療として、MMF中止、CyA 1週間休薬し、リツキサン全身投与およびMTX+AraC+PSL髄注を計4回行った。その後の画像評価で病変の縮小および髄液中EBV-DNA 3x102 copy/mlから2x102 copy/ml未満に改善を認めた。現在発症後約2年半が経過し、明らかな後遺症はなく、病変は徐々に縮小している。<考察>肝移植後のCNS-PTLDは血清学的診断は困難であるため、移植後に中枢神経症状を認めた場合にはCNS-PTLDを疑い、画像、髄液検査や腫瘍生検による早期診断、早期治療に努めなければならない。

  • 河合 昭浩, 佐々木 ひと美, 友澤 周平, 糠谷 拓尚, 竹中 政史, 全並 賢二, 深谷 孝介, 市野 学, 高原 健, 住友 誠, 星 ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 382_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    3例のPTLDを経験した。症例1:56歳,女性。36歳時に2次心停止下献腎移植施行。維持免疫抑制剤はsteroid,CsAの2剤。移植後19年に、右膝裏に紅斑と腫脹を認めた。皮膚生検でCD30陽性リンパ球を認め、骨髄生検を追加しEB関連T/NKリンパ増殖性疾患と診断。免疫抑制薬減量 (Reduction in immunosuppression: RIS)としてCsAを減量(25%)し,皮疹は安定。後に移植腎機能が増悪したが透析再導入を拒否し死亡。症例2:64歳,女性。39歳時に心停止下献腎移植施行。維持免疫抑制剤はsteroid,CsA,MZRの3剤。移植後21年に左扁桃腫大を認め生検。病理診断はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)。RISとしてCsAを減量(40%)し、MZR中止。R-CHOPを6コース施行し完全奏効。症例3:59歳,女性。47歳時に心停止下献腎移植施行。維持免疫抑制剤はsteroid,Tac,MMFの3剤。移植後12年経過し,大腸憩室穿孔をきたしS状結腸切除術施行。病理診断はDLBCL。RISとしてMMF中止。R-CHOPを開始し、現在加療中である。いずれの症例も心停止下献腎移植後10年以上経過していた。B細胞リンパ腫は、RISとR-CHOPで経過良好であるが,非B細胞リンパ腫に対しての加療は困難な場合が多い。非B細胞リンパ腫の症例を中心に報告する。

  • 高本 大路, 樋口 はるか, 佐々木 元, 平野 哲夫, 平田 由里絵, 高田 祐輔, 西村 陽子, 三浪 圭太, 守屋 仁彦, 田中 博, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 382_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】免疫抑制療法の進歩に伴い、より強力な免疫抑制が施行され移植後リンパ増殖症(PTLD)は重要な合併症として注目されている。移植腎喪失、生命予後にまで影響をきたす腎移植後PTLDは症例報告で散見されるもののまとまった報告は少ない。当院で経験したPTLD症例について検討を行った。【対象と方法】1985年2月から2020年4月までの間に市立札幌病院で行われた腎移植849例を対象にPTLDを発症した10例(1.2%)について移植後発症までの期間、病理的所見、治療方法、EBV感染や生命予後について検討を行った。【結果】発症までの平均期間は8.6年(4か月-34年)であった。移植後2年以内の早期発症例は2例、それ以外の8例は2年以上経過してからの発症であった。病理所見は7例がびまん性大細胞性B細胞リンパ腫であった。治療については3例は免疫抑制剤の減量のみで寛解となり、5例で化学療法を行った。EBERは4例で陽性であった。3例が死亡、7例は現在も腎機能を維持し生存されている。【結論】当院での発症率は1.2%であり諸家の報告と同程度であった。近年、移植後の免疫抑制を最適化するようTDMやプロトコル生検も行い、またウイルスの監視も行うことでPTLDも減少すると思われた。PTLD発症のリスクや予後などを検討できるようにより症例数を増やして検討していく必要がある。

  • 森澤 洋介, 佐藤 温子, 佐藤 裕之, 原田 涼子, 濱田 陸
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 383_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言・目的】小児の移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorder: PTLD)は移植後早期に発生し、Epstein-Barrウイルス(EBV)関連のPTLDが多い。当院における小児腎移植後のPTLD症例を後ろ向きに検討。【対象・方法】2001年から2019年までに腎移植が施行された小児腎移植症例213例が対象。PTLDの発症率、臨床経過、リスク因子(移植時年齢、移植時EBV感染既往、生体/献腎移植、タクロリムス/シクロスポリン)を検討。【結果】12例(5.6%)がPTLDを発症(男児7例、女児5例)。10例(83%)はEBV関連PTLDであったが、2例(17%)はEBV非関連であった。10例(83%)は移植後2年以内に発症したが、1例は移植後15年後に発症した。初期症状としては下痢・下血などの消化器症状が最多(83%)。治療は全例で免疫抑制剤の減量・中止が行われ、9例(75%)にrituximabを含む化学療法が施行された。2例(17%)がPTLDにて死亡した。EBV未感染がPTLD発症のリスク因子であった(P=0.031, HR=5.47)。【結語】EBV未感染の小児腎移植患者はPTLDのリスクが高い。しかし、頻度は低いがEBV非関連や移植後長期経過後の発症など、多様な疾患であり慎重なフォローアップが必要である。

  • 氏家 秀樹, 加藤 達哉, 稲毛 輝長, 石綿 司, 新垣 雅人, 樋田 泰浩, 加賀 基知三, 若狭 哲, Shaf Keshavjee, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 383_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    目的 気管支腔内超音波検査法(EBUS)は低侵襲かつ高い診断能を有する検査手技である。本研究では、肺移植待機患者および移植後患者の経過中に、悪性腫瘍が疑われた肺・リンパ節病変に対するEBUSの有用性を検討した。方法 2008年~2018年までの間にEBUSガイド下経気道的肺生検 (EBUS-GS-TBB, EBUS-TBNA)が施行された肺移植後患者及び待機患者に対し後方視的検討を行った。結果 全28例に対してEBUS-TBNA:20例、EBUS-GS-TBB:8例 が施行された。肺移植術後患者19例の内訳は、移植後に肺腫瘤を認め悪性腫瘍が疑われた11例、肺門及び縦隔リンパ節腫大を認め移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)が疑われた8例であった。全症例において確定診断が可能であり、重篤な合併症を認めなかった。診断の内訳は、原発性肺癌6例、PTLD 4例、感染性疾患3例、良性疾患6例であった。PTLDが疑われた8例中、4例(50%)がPTLDと診断され、肺悪性腫瘍が疑われた11例中、6例(55%)で肺悪性腫瘍の確定診断が可能であった。また、肺移植待機9例のうち、5例(56%)にて肺悪性腫瘍の確定診断に至り、治療方針が変更された。結論 移植待機中の末期慢性肺疾患症例及び肺移植術前後症例におけるEBUSは、肺病変及び縦隔肺門リンパ節に対する安全かつ高精度な質的診断が可能な検査法と考えられた。

  • 吉永 香澄, 荒木 元朗, 関戸 崇了, 和田里 章悟, 丸山 雄樹, 光井 洋介, 定平 卓也, 窪田 理沙, 西村 慎吾, 佐古 智子, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 384_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】生体腎移植において低用量リツキシマブ(Rit)がウイルス感染症を増加させるかどうかを明らかにする。【方法】対象は2009年5月から2020年4月までに当院で生体腎移植を施行し、術後3ヶ月以上フォローしたうち、ABO血液型不適合/不一致、DSA陽性、FSGSのいずれかが該当する症例で術前にRitを200mg/body使用した106例。【結果】Rit使用群75例、Rit非使用群31例。使用群でやや高齢であった (47 vs 39 (median), p=0.04)。術後の単純ヘルペス (3 vs 1, p=1.00)、帯状疱疹 (6 vs 1, p=0.67)、CMV (22 vs 14, p=0.11)、BKV (2 vs 0, p=1.00)、インフルエンザ (3 vs 4, p=0.19)、アデノウイルス (1 vs 2, p=0.20)に有意差はなく、その他のウイルス感染症を認めなかった。非使用群で1例PTLDを認めたがEBVとの関連はなかった。術後5年 (1.38 vs 1.25, p=0.32)までの腎機能、急性細胞性拒絶 (1 vs 1, p=0.50) や抗体関連型拒絶 (3 vs 0, p=0.56)、graft survival (p=0.71)も同等であった。【結語】低用量Rit投与は移植後ウイルス感染症を増加させることなく良好な生着率を実現する。

  • 関戸 崇了, 荒木 元朗, 吉永 香澄, 和田里 章悟, 丸山 雄樹, 光井 洋介, 定平 卓也, 窪田 理沙, 西村 慎吾, 佐古 智子, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 384_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植後患者において、尿細胞診のSimian virus 40 (SV40)染色はBKウイルス腎症 (BKVN)発症予測に有用か否かを検討した。【方法】対象は2012年05月から2020年03月までに当院で腎移植を行った121例。SV40陽性が5ヶ月以上持続した (SV40≧5M)群および持続が5ヶ月未満であった (SV40<5M)群に分け、BKVN発症率および術後腎機能を比較検討した。【結果】SV40≧5M群 45例、SV40<5M群 76例であった。年齢、ABO血液型の一致・不一致・不適合、DSA陽性例、CREG陽性例、リツキシマブ投与の有無やPEKT症例を含めた患者背景で両群に有意差を認めなかった。SV40≧5M群 はSV40<5M群 に比べ、BKVNの発症率は有意に高かった (3 vs 0, p=0.049)。また、腎機能 (eGFR)は術後5年まで両群に差はなく、5年生着率も同等であった (96% vs 92%, p=0.286)。BKVNを発症した3例の転機を以下に示す。①移植後5ヶ月で診断、移植後37ヶ月でgraft loss に至った。②移植後9ヶ月で診断、治療が奏効し移植後30ヶ月現在まで経過良好である。 ③移植後26ヶ月で診断、免疫抑制剤減量し経過観察中である。【結語】SV40染色はBKVN発症予測に有効である可能性が示唆された。

  • 高井 公雄, 西嶋 淳, 松田 健二
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 384_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例1は47歳女性。移植後14日目にステロイドパルス療法。21日目に尿中からHPoV感染細胞(Decoy cell)が認められ、PCR法にて、血中、尿中からBKウイルスが検出された。ガンマグロブリン5gを3日間投与、MMFを中止し、everolimus 2mg/dayの内服を開始した。以後、速やかに改善した。同様の症例をもう1例経験、併せて発表する。BK腎症はステロイドパルス療法の直後にDecoy cellを認めることがあり注意が必要である。拒絶反応との鑑別が重要で、気づかずに経過すると移植腎喪失原因ともなる。BK腎症の治療として、 Tac+MMFの組み合わせであれば30-50%を減量、Everolimusへ免疫抑制剤の変更が最近では主なものである。文献的考察を加えて発表する。

  • 山崎 智貴, 白井 博之, 金綱 友木子, 唐仁原 全
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 385_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言】BKウイルス腎症(BKVN)は50%で移植腎機能廃絶をきたすが、特異的な治療法がないのが現状である。今回、BKVNに対して、レフルノミド(LEF)を投与し、軽快した4症例を経験した。【症例1】50歳男性。術後7MでCr 1.4→2.24 mg/dl、生検にてBKVNの診断。GFK+MMF→CyA+EVRに変更したが、Crさらに上昇。術後9MからLEF投与開始し、Cr 3.04→2.50 mg/dlまで改善、血漿BKV-PCRも陰性化。【症例2】37歳男性。術後10MでCr 1.39→2.04 mg/dl、生検にてBKVNの診断。GFK+MMF→GFK+EVR+MZに変更、LEF投与開始。術後12MからCr上昇改善。【症例3】65歳男性。術後18MでCr 1.5→2.45 mg/dl、生検にてBKVNの診断。GFK+MMF →CyA+EVRに変更したが、Cr上昇と血漿BKV-PCRも陽性継続。術後20MよりLEF投与開始後、Cr上昇も軽快し、血漿BKV-PCRも陰性化。【症例4】72歳男性。術後10MでCr 1.5→2.18 mg/dl、生検にてBKVNの診断、MMF→EVRに変更。Cr上昇継続しGFK→CyAに変更したが、改善なく、術後12ヶ月よりLEF開始。Cr 3.62 → 2.86 mg/dlまで改善。【結論】BKVNに対して、LEFが有効である可能性がある。

  • 佐々木 元, 高本 大路, 樋口 はるか, 高田 祐輔, 平野 哲夫, 原田 浩
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 385_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】免疫抑制導入期からのEVR投与がCMV感染を減少させる報告がありハイリスク症例である当科のCMV D+/R-症例を検証した。【対象と方法】2006-2019迄の腎移植508例中、CMV D+/R-のためVGCVの予防投与が行われ、CMV抗体を追跡した41例を対象とし、導入免疫抑制をTACER/MMF/EVRで行った25例(EVR)と、TACER/MMF/MP or notで行った16例(Cont)の2群に分けて、患者背景、予防投与期間、1年以内のCMV初感染率と時期、治療方法、CMV抗体獲得率を検討した。【結果】移植時年齢、性別、ハイリスク免疫抑制、1年以内の急性拒絶反応の発生率について2群間に差はなかった。予防投与期間(月数)に差はなく(EVR: 5.3,  Cont: 4.2)、1年以内の初感染率は共に68%である一方、その発生時期(移植後月数)はEVR群で有意に遅かった。(EVR: 7.8, Cont: 6, p=0.04)。またCMV diseaseにてGCVを要した症例はEVRで有意に少なかった。(EVR: 52%,  Cont: 90%, p=0.04) 最終的なCMV抗体獲得率には差がなかった。(EVR: 80%, Cont: 87%)【結語】導入期からのEVRが、VGCVの予防投与後のCMV初感染を遅らせ、CMV diseaseの発生を抑制した可能性がある。

  • 安藤 恭久, 大島 稔, 須藤 広誠, 岡野 圭一, 鈴木 康之
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 385_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    [症例1] 30歳代女性。1型糖尿病に対して腎移植後膵臓移植を施行。移植歴を考慮し、導入はATG, Tac, MMF, CSの4剤を用いた。術後はVGCVの予防投与を3か月間行ったが、移植後4か月目にCMV 抗原血症を認めた。入院でのGCV投与およびMMF減量を行ったがCMV抗原血症 が継続したため、EVRを付加しCMV抗原の陰転化を確認した。 [症例2]40歳代女性。膵腎同時移植に際して妊娠・出産歴を考慮し、導入にATGを用いた。移植後16か月目にCMV 抗原血症を認めGCV投与を行うもCMV 抗原陽性が続いたため、MMF減量、EVR付加 を行い、CMV 抗原は陰転化した。 [症例3] 40歳代女性。感染歴としてCMV IgGがD(+)R(-)であった。導入にATGを用いた。術後にVGCVの予防投与を3か月間行ったが、移植後5か月目に腹痛とCMV 抗原血症の異常高値を認めた。入院でのGCV投与およびMMF減量を行ったが、CMV 抗原血症 が継続したため、EVRを付加し、その後、腹部症状の改善とCMV抗原の陰転化を確認した。[考察]ATGによる導入後はCMV抗原血症が高頻度で認められ、ときにMMFなどの免疫抑制剤減量が必要となるが、抗細胞増殖効果も有するEVRを付加することにより、続発する拒絶反応を認めることなく、CMV抗原の陰転化を図った3症例を経験した。

  • 福原 宏樹, 西田 隼人, 山岸 敦史, 加藤 智幸, 山辺 拓也, 内藤 整, 櫻井 俊彦, 八木 真由, 菅野 秀典, 土谷 順彦
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 386_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は68歳男性。63歳時にIgA腎症を原疾患とした慢性腎不全に対し妻をドナーとした血液型適合生体腎移植を行った。維持免疫抑制はステロイド、タクロリムス、MMFで行い、血清Crea 1.0mg/dl前後で経過していた。血尿と顔面浮腫を主訴に当院救急外来を受診した。受診時に膀胱炎症状と発熱は認めなかったが、腹部エコーで移植水腎症および移植尿管拡張を認めた。CTでは尿路結石や腫瘍性病変を認めなかった。膀胱鏡を後日施行したところ、膀胱粘膜に異常は認めず、移植尿管からの血尿流出を認めた。その後発熱と血清Crea上昇を認めた。ウイルス感染症を疑いMMFを中止し、エベロリムスを開始した。尿中Decoy cellと血中BKウイルスPCR検査は陰性、尿中アデノウイルスPCR陽性からアデノウイルス感染と診断し、バルガンシクロビルを開始したところ顔面浮腫、発熱、血尿、血清Creaは改善した。膀胱炎症状を伴わない血尿であっても、アデノウイルス感染症の可能性を念頭に置く必要がある。

  • 高橋 雄介, 荒井 太一, 米倉 尚志, 若林 宗弘, 松井 哲平, 篠原 美絵, 酒井 謙
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 386_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    [緒言]腎移植後、HEVによるウイルス性肝炎を発症した2例を報告する。[症例]症例1、42歳、男性。原疾患不明。33歳時に母親をドナーとする生体腎移植施行。入院2週間前から倦怠感が出現、肝酵素の上昇も認め、各種ウイルス検査の結果HEV-IgA抗体陽性であり、E型急性肝炎で入院した。免疫抑制剤の減量では肝機能の改善が得られず、リバビリンを開始したところ速やかに肝機能改善し、HEV-RNAも陰性化した。症例2、51歳男性。原疾患ADPKD。48歳時に妻をドナーとする生体腎移植施行。入院半年前から肝機能異常があり、改善がないため各種ウイルス検査を行ったところHEV-IgA抗体陽性であり、精査目的で入院した。肝生検を施行したところ新犬山分類でA2/F1に相当する慢性肝炎像を呈した。[結語]腎移植後原因不明の肝機能障害を認めた場合には、HEVによる肝炎も鑑別にあげる必要がある。

  • 西田 翔, 木村 隆, 泉 恵一朗, 芦刈 明日香, 仲西 昌太郎, 斎藤 誠一
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 386_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    ドナーに起因B型肝炎ウイルス(HBV)への感染は移植後に深刻な合併症を引き起こす可能性がある.したがって, HBV抗原陽性ドナーからHBV抗原陽性レシピエントへの腎移植は許容されるが, HBV既感染レシピエントへの移植の報告は少ない. 今回我々はHBV抗原陽性ドナーからHBV既感染レシピントへの生体腎移植で術後肝炎ウイルスの再燃なく経過する一例を経験したためこれを報告する. 症例は56歳男性. 慢性糸球体腎炎による末期腎不全に対し妻をドナーとする血液型不一致生体腎移植(A+ → AB+)を希望され当院紹介となった.レシピエントはHBsAg陰性、HBcAb陽性、HBsAb陽性の既感染パターンであった.ドナーはHBsAg陽性, HBeAg陰性, HBeAb陽性, HBV-DNA陽性のHBV非活動性キャリアであった.ドナーに対し術前よりエンテカビル内服を開始し, HBV-DNA陰性化を確認した後生体腎移植を施行した.レシピエントは腎移植当日よりエンテカビル内服を開始し, HBs人免疫グロブリンを周術期5日間に投与した. 周術期免疫抑制剤はタクロリムス, セルセプト, メチルプレドニゾロン, バシリキシマブの4剤併用で行った. 周術期に肝機能障害は認めず, 術後経過良好にて術後20日に退院となった. 周術期および術後のエンテカビル内服は継続し, 術後1年においてHBVの再燃に至っていない.

  • 松田 剛, 望月 保志, 郷野 すずな, 迎 祐太, 中西 裕美, 光成 健輔, 松尾 朋博, 大庭 康司郎, 山下 鮎子, 北村 峰昭, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 387_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言】高齢腎移植レシピエントは過剰免疫抑制による感染症の発症や重症化に留意が必要である。敗血症性ショックから急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)を発症したが、加療により救命し得た1例を経験したので報告する。【症例】78歳男性。66歳時に、9年間の血液透析を経て、妻をドナーとする生体腎移植を施行した。シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロンで維持免疫抑制を行った。移植後発症糖尿病にてインスリン導入となった。移植後11年目に神経因性膀胱のため自己導尿開始となった。認知機能に問題あり、排尿管理は困難であった。免疫抑制剤調整するも移植腎腎盂腎炎を繰り返していた。導尿回数を増やしたが、重症尿路感染症から敗血症性ショック、ARDSを発症し、ICU管理となり、昇圧剤・人工呼吸管理・持続的血液濾過透析による全身管理および抗生剤投与・エンドトキシン吸着療法による治療を行った。入院5日目で全身状態・画像所見改善を認め、ICU退室となった。抗生剤継続・免疫抑制剤の調整・尿道カテーテル留置により入院1か月後に退院となった。【結語】尿路感染症を契機に敗血症性ショック・ARDSを発症したが、集学的治療・免疫抑制剤の調整・排尿管理により救命し得た高齢生体腎移植レシピエントの1例を経験したので考察を加えて報告する。

  • 米田 真也, 青山 有, 喜早 祐介, 樋口 知見, 忠地 一輝, 下田 次郎, 石井 修平
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 387_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    既往歴:糖尿病を原疾患とする末期腎不全。X-1年6月14日妻をドナーとする生体腎移植術施行。移植後糖尿病はコントロール不良でHbA1c7.7。現病歴:X年10月29日プロトコール生検施行し、特に問題なく退院した。11月14日から鼻閉感、鼻汁、関節痛あり、11月19日近医受診し感冒として対症的に加療。その後も37度台の発熱が続き11月21日当科受診。体調は改善傾向で、解熱しつつあるということで経過観察。11月29日微熱が続き、倦怠感、関節痛が増悪したため受診。採血検査ではWBC8610、CRP15と上昇しており入院加療とした。入院後経過:エコー、造影CTで移植腎背側に膿瘍を疑う所見あり。膿瘍に尿管が圧排され、移植腎は水腎症を呈していた。経皮的穿刺が難しそうな場所であったため、まずは尿管ステント留置の上、抗菌薬投与を開始。炎症は軽減したが十分な改善が得られなかったため、12月3日エコーガイド下穿刺、ドレナージ施行した。膿汁グラム染色ではグラム陽性球菌が検出され、抗菌薬を内服薬にde-escalation。12月6日ドレーン抜去。2月12日まで抗菌薬治療継続し、以後再燃なく経過している。考察:免疫抑制下での経皮的生検は感染のリスクがあると思われるが、移植腎生検の合併症として局所感染はほとんど報告されていない。糖尿病症例では自覚症状が乏しく、注意しなければならない合併症の1つだろう。

  • 西村 慎吾, 荒木 元朗, 関戸 崇了, 吉永 香澄, 和田里 章悟, 丸山 雄樹, 光井 洋介, 窪田 理沙, 山下 美里, 和田 耕一郎 ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 387_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は65歳男性。糖尿病性腎症による末期腎不全に対する腎移植術前CTにて右蝶形骨洞に真菌を疑う軟部影を認めたが、無症候性であった。しかしながら、移植後の免疫抑制状態で劇症型になる可能性を考慮し、移植3カ月前に内視鏡下副鼻腔手術ESSにて糸状菌塊を除去(粘膜への真菌浸潤なし)、追加治療することなく経過は安定していた。 生体腎移植については妻をドナーとしたABO不適合(術前減感作療法としてRituximab 200mg/body×1、DFPP×2、PE×1を実施、免疫抑制剤はTac-ER、MMF、PSL、Basiliximabを使用)、経過は良好でPOD18に退院となった( Cr 1.28mg/dl )。 移植後2カ月が経過し、右顔面痛・頭痛が出現、近医で副鼻腔洗浄や抗菌薬投与を受けるも改善せず。β-Dグルカン 53pg/mlと異常高値、副鼻腔MRIでは一部骨への浸潤を疑う軟部影を認め、再度ESSを施行、紙様板は腐骨化を認めたが真菌塊を可及的に除去した。VRCZも併用・継続し、術後1カ月でβ-Dグルカンも正常化、現在、再燃を認めていない。 浸潤性副鼻腔真菌症は副鼻腔から眼窩,海綿状静脈洞,頭蓋内へ浸潤し致死的となり、全生存率は概ね50%と、予後不良とされる。今回、予防的にESSを先行したが、腎移植後、急性浸潤性に再燃した症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。 

  • 齋藤 拓郎, 齋藤 満, 山本 竜平, 提箸 隆一郎, 嘉島 相輝, 小泉 淳, 奈良 健平, 沼倉 一幸, 成田 伸太郎, 佐藤 滋, 羽 ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 388_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は56歳、女性。妊娠中毒症を契機として腎機能が低下し、41歳時に血液透析導入。夫婦間生体腎移植を希望し当科受診。DSA陽性でnMFI値が高く術前にRituximab 200 mg/bodyを1回投与、新鮮凍結血漿を用いた血漿交換を4回施行した。2019年7月にABO血液型適合生体腎移植術を施行。移植後は軽度の脳梗塞を発症するも後遺症無く回復。全身状態、移植腎機能とも良好で明らかな拒絶反応を認めず、当初の予定通り退院した。腎移植後8カ月が経過した2020年3月初旬から微熱が持続し、その後38度台の発熱となり近医受診。発熱以外の自覚症状は無く細菌尿を認めたため尿路感染症として抗生物質投与で解熱するも投薬終了後に再び発熱したため当科受診。細菌尿及びCMVアンチゲネミアの陽性化を認め抗生物質及びVGCV投与を開始。速やかに解熱するも抗生物質投与が終了すると再び発熱。全身CTで右肺に境界明瞭な類円形の腫瘤像を2つ認め、精査加療目的に当科入院。呼吸器内科にコンサルトするもあらゆるマーカーが陰性。気管支鏡検査でBALを行うも確定診断に至らず退院。抗生物質投与期間中のみ解熱が得られていた。フォローの胸部レントゲン写真で右肺腫瘤陰影の増大を認め再度気管支鏡検査でBALを行い、最終的に肺アスペルギルス症の診断を得た。

  • 横瀬 崇寛, 竹内 優志, 尾原 秀明, 篠田 昌宏, 川久保 博文, 北郷 実, 八木 洋, 阿部 雄太, 松原 健太郎, 長谷川 康, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 388_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】プレセプシンは精度の高い敗血症の診断バイオマーカーであることが知られているが、これまでプレセプシンと肝移植術後の感染性合併症との関連性を調べた研究はない。今回、肝移植後の感染性合併症の診断におけるプレセプシンの有用性を検討した。【方法・対象】2018年10月から2019年7月の間に当院で生体または脳死肝移植を受けた15例を対象とし、術前に細菌感染症が疑われた2例は除外した。術前、術直後、術後1,2,3,5,7日目に血清プレセプシン、プロカルシトニン、CRP、白血球数を測定し、感染性合併症との関連を比較した。感染性合併症診断の予測精度を見るためにROC曲線を用いて曲線下面積(AUC)値を算出した。【結果】全13例で生体肝移植は7例、脳死肝移植は6例に施行された。感染性合併症は肝移植後15日以内に6例で発症した。肝移植後5日目および7日目のプレセプシン値は、感染性合併症群で非合併症群に比べて有意に高値であった(p=0.022,p=0.014)。肝移植後の感染性合併症に関するROC曲線解析では、肝移植後5日目および7日目のプレセプシン値(AUC: 0.881, 0.905)がプロカルシトニン、CRP、白血球数よりも有用であった。【結論】本検討は症例数は少ないが、術後5日目と7日目のプレセプシン値は肝移植後の感染性合併症の検出に有用な指標となる可能性がある。

  • 臼井 正信, 東口 髙志
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 388_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】周術期管理の上でプロバイオティクスの有用性が認識されるようになってきたが、酪酸産生菌が新たな腸内有益菌として注目を集めつつある. 今回,生体肝移植後の頻回の水溶性下痢に対し,酪酸菌の投与が有効と考えられた1例を経験したので報告する. 【症例】75歳女性.主訴:体重減少と全身筋力低下.【現病歴】肝硬変合併肝癌にて7年前にA大学病院にて生体肝移植を施行.術後外来通院の後、高齢のため近くの老健施設に入所となったが、食事摂取量の低下と下痢から急性腎不全となり同大学病院に緊急再入院となった.集中治療により救命したが、体重減少と長期臥床による廃用症候群にて栄養管理とリハビリ目的で当科入院となった. 入院時現症:身長142cm,体重39.5kg,BMI 19.6 で,車いす移乗もできず臥床のままでの生活であった. 入院後中心静脈栄養とリハビリ療法を開始したが10日目より突然12回/日の頻回の水溶性下痢が出現し,血液検査でCMV抗原が強陽性で検出された.免疫抑制剤を減量し,抗CMV薬としてバルガンシクロビルの投与とプロバイオティクスとして酪酸菌製剤の投与を行った.投与開始後3週で水様便は改善し、排便回数も4回/日となった. 1か月後には普通便、2回/日となりCMV抗原も陰性となった.その後栄養状態は改善し転院となった.【まとめ】肝移植後患者の水溶性下痢に酪酸菌が有効であった症例を経験した

  • 高原 武志, 新田 浩幸, 片桐 弘勝, 梅邑 晃, 菅野 将史, 小林 めぐみ, 武田 大樹, 真壁 健二, 佐々木 章
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 389_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    (背景)NASHやアルコールを背景とした非代償性肝硬変に対する肝移植は増加傾向にある。そのレシピエントが肥満を伴っていることは少なくない。生体肝移植においても術後早期死亡のリスク因子に関しては、様々な報告がこれまでされている中で、肥満もその中の一つとされている。 (目的)当院で施行した生体肝移植症例において、レシピエントの術前BMIが周術期に与える影響について検討する。 (対象・方法)2007年以降2019年までに施行した生体肝移植94例を対象とした。術前BMIが術後3ヶ月生存に及ばす影響をROC曲線として作成し、術前BMIのカットオフ値を設定し2群に分けて、術前・術中・術後因子に分けて多角的に検討する。 (結果)術前BMIのカットオフ値は29であり、肥満群 (n=16) と非肥満群 (n=88)に分けた。2群間で、術前因子に有意な差はなかった。手術時間、出血量、冷阻血時間、GW/RBW、GV/SLVに有意な差はなかったが、肥満群で温阻血時間が有意に長かった。血管系の合併症や拒絶の頻度に差はなかったが、胆管合併症、敗血症、術後RRT導入の頻度が肥満群で有意に高かった。 (考察)他施設でさらにデータを集積する必要があるが、ある程度待機可能な肥満レシピエントの場合、術前栄養療法によるダイエットも一つの選択肢になる可能性がある。

  • 中村 篤司, 高山 哲郎, 阿佐美 健吾, 芳賀 泉
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 389_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言】免疫抑制療法により脂質代謝異常は助長され、多くの例で腎移植後にスタチン製剤を要するが、その投与量には限界がある。今回、LDL受容体リサイクルを促進させ著明なLDLコレステロール(LDL-C)低下作用を有するPCSK9阻害薬を使用した症例について、その安全性と有効性を報告する。【対象】腎移植後、当科で継続して経過観察中の症例で、スタチン効果不十分な高LDL血症に対してPCSK9阻害薬であるEvolocumabないしはAlirocumabを投薬した例を対象に、LDL-C値の推移を主とし、移植腎機能や有害事象につき観察検討した。【結果】平均年齢47歳、男女比10:3の13例に対し、Evolocumabを12例に、Alirocumabを1例に投与した。平均490.9日の観察期間内で継続投与しているのは11例で、13例全例で投薬後LDL-Cは著明に低下した(p=0.001)。投与前後のCNI濃度に変動はなく、治療1年後のCr値に有意な変化は認めなかった。糖尿病の増悪や新規発症もなく、投薬後のCVDイベントや新規拒絶反応も全例で認めなかった。【考察】腎移植後患者への投与報告がないPCSK9阻害薬だが、本観察では概ね有害事象なく、著明なLDL-C低下を得られた。PCSK9阻害薬が移植後の動脈硬化進行やCVDイベントの阻止に寄与できるか、更なる長期観察を検討している。 

  • 樋口 はるか, 佐々木 元, 高本 大路, 平田 由里絵, 高田 祐輔, 西村 陽子, 三浪 圭太, 守屋 仁彦, 田中 博, 原田 浩
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 389_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】当科では萎縮膀胱に対する膀胱尿管吻合は、吻合部leakの危険因子であるため自己尿管を用いた尿管尿管吻合(UUS)を選択している。【対象・方法】2015年1月‐2019年11月に施行した腎移植191名のうちUUSを施行した23例中の術後尿leakを来した5例(21.7%)ついて検討した。UUSは全例端々吻合で尿管ステント(DJ)を留置した。【結果】移植時年齢は中央値58(47-67)歳、透析歴25(14-32)年、膀胱容量は30 (20-40) mlであった。ドナーは献腎3例、生体2例、年齢54(40-63)歳であった。尿leak診断時期は術後17(8-35)日目であった。全例でDJ留置の延長や再留置を行い、1例で改善、4例で腎瘻管理しこのうち1例が改善した。最終的に修復手術を施行したのは3例で、2例で再UUS、1例で膀胱尿管新吻合(UVN)を施行した。再建術の所見では全例組織壊死を認め、部位は吻合部2例、自己尿管1例であった。術後2例は改善し、UVNの1例は尿管狭窄のため腎瘻管理している。【考察】吻合部治癒不全の一因としての血流障害はgraft、自己尿管双方の要因がある。対策として自己尿管の血流を温存するため最近の症例では端側吻合を行っている。DJ留置単独での改善は少なく、早期に再建術に踏み切るのも選択肢の一つである。

  • 小川 悟史, 石村 武志, 藤本 卓也, 遠藤 貴人, 西岡 遵, 横山 直己, 中野 雄造, 藤澤 正人
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 390_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    腎移植後リンパ嚢胞について臨床的検討を行った。2008年12月から2020年12月に腎移植行った271例中40例(14.8%)にリンパ嚢胞を認め、症候性(Symptomatic lymphocele : SL)14例(35%)、無症候性(Asymptomatic lymphocele : AL)26例(65%)であった。ALは偶発性に長径30mm以上のリンパ嚢胞を認めた場合と定義した。SLの症候は感染6例(42.9%)、腎後性腎不全5例(35.7%)、創傷治癒遅延3例(21.4%)、腹痛2例(14.3%)で、診断時期はSL、ALそれぞれ腎移植後平均25±11.6日、55±36.8日であった。ALは全例無治療で軽快、SLは9例が保存的に軽快したが、そのうち感染嚢胞の4例では抗菌薬投与を行った。5例で観血的加療を行い、うちわけは尿管ステント留置3例、リンパ嚢胞持続ドレナージ1例でいずれも一定期間の後に軽快し抜去した。1例で尿管ステント留置、リンパ嚢胞持続ドレナージ、リンパ管塞栓術を併用し軽快せず、リンパ嚢胞開窓術を施行し治癒した。SL群、AL群、非リンパ嚢胞群の1年後のeGFR(mg/dl)は、44.9±15.3、46.2±17.4、52.4±32.7で、有意差は認めなかった。腎移植後リンパ嚢胞は、無治療経過観察を含めて可及的に低侵襲な治療法を順次選択するのが望ましいと考えた。

  • 加藤 桃子, 西川 晃平, 佐々木 豪, 舛井 覚, 井上 貴博, 山中 隆嗣, 藤森 将志, 佐久間 肇
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 390_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言】腎移植後のリンパ嚢腫は治療に難渋することが多い合併症である。今回我々はリピオドールによるリンパ管造影検査を行うことにより治癒した腎移植後リンパ嚢腫の症例を3例経験したので報告する。【症例1】40歳台男性。腎移植後15日目に腎機能低下と水腎症、右外腸骨動脈周囲の液貯留を認めた。術後18日目にCTガイド下ドレナージを施行したが排液量が減少せず、術後25日目にリンパ管造影検査を施行した。その後排液量の減少を認めた。【症例2】60歳台女性。腎移植後48日目に軽度腎機能低下と膀胱周囲液貯留を認めた。術後50日目にCTガイド下ドレナージを施行したが排液量が減少せず、術後62日目にリンパ管造影検査を施行した。リンパ節へ直接穿刺することは出来なかったがその後排液量の減少を認めた。【症例3】30歳台男性。腎移植後11日目に移植腎腹側の液貯留を認めた。術後12日目にCTガイド下ドレナージを施行したが排液量が減少せず、術後19日目にリンパ管造影検査を施行した。しかしその後も排液量は減少せず、術後29日目に穿刺部位を変更し再度リンパ管造影検査を施行したところ排液量の減少を認めた。その後3例ともリンパ嚢腫の再発を認めていない。【結語】腎移植後リンパ嚢腫に対してリンパ管造影を行うことは比較的低侵襲であり、リンパ嚢腫の治癒も期待できるため有効な方法と考える。

  • 木村 隆, 西田 翔, 泉 恵一朗, 斎藤 誠一, 大城 吉則
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 390_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は45歳、女性。26歳時にループス腎炎を原疾患とする慢性腎不全に対して母をドナーとした生体腎移植を施行。45歳時に慢性拒絶による移植腎機能廃絶にて血液透析再導入となり、再導入後2カ月で父をドナーとして二次移植(血液型不適合)を施行した。レシピエントの背景として30年以上のステロイド使用歴があり、これまでフルニエ壊疽、解離性大動脈瘤、両側大腿骨頭壊死の既往があった。二次腎移植術後、腎機能は順調に改善したが、術後10日目にドレーン量が増加したためドレーン生化学を提出したところ尿の混在を疑う所見であった。膀胱造影では吻合部のリークはなく、造影CTの排泄相でドレーン先端の遠位部付近で尿管の後腹膜への穿孔を疑う所見を認めた。保存的に経過をみたが、ドレーンからの尿のリークが減少しないため術後15日目に再手術となった。尿管は腎盂からの3cm程度(中枢側)と膀胱吻合部からの2cm程度(末梢側)は血流良好であったが、間の2-3cmは血流不良で尿管粘膜が露出・菲薄化して尿が全体的にしみ出している状態であり、ドレーンと交差する部位と一致していた。血流不全部位からマージンととって切除すると腎盂から2cm程度しか確保できなかったため、膀胱吻合は困難と判断し、固有尿管との端側吻合で吻合を行いDJステントを留置した。経過は良好で術後2カ月でDJステントを抜去し、現在はステントフリーで腎機能も良好である。

  • 井藤 綾人, 山口 剛史, 守口 万里子, 薄 善孝, 松浦 朋彦, 加藤 廉平, 前川 滋克, 加藤 陽一郎, 兼平 貢, 高田 亮, 杉 ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 391_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    症例は31歳、男性。XX年に献腎移植術を施行、以後腎機能は良好に経過していた。XX+10年、スクリーニング検査で大動脈弁異常を指摘、大動脈弁輪拡張症の診断でXX+11年に大動脈弁形成術及び大動脈弁基部再建術を施行された。その後、XX+15年に施行した心エコー検査で大動脈閉鎖不全の増悪を認め、再手術を行う方針となったが、本人・家族が経過観察を強く希望。以後、心臓血管外科への受診を自己中断していた。XX+16年、発熱、悪寒を主訴に当科を予約外受診。その時点での免疫抑制剤はタクロリムス、ミゾリビン、ステロイドの3剤、採血ではCre 1.81、WBC 16200、CRP 6.97であった。入院での精査加療を薦めるも拒否し、帰宅。その2週間後に症状改善が無いと再受診した。CT検査で肺に浸潤影と多発結節影を認めたため、即日入院。入院後の精査で大動脈弁・三尖弁に疣贅、大動脈弁輪部から右心房へのシャント血流を認め、頭部MRI検査では急性期多発脳梗塞像を認めた。血液培養検査でMRSAが検出され、感染性心内膜炎による多発塞栓症と診断した。その後、当院心臓血管外科にて緊急手術を施行、術後経過は良好で26病日にリハビリ目的転院となった。感染性心内膜炎は適切な対応をとらないと死に至る重要な疾患である。今回我々は腎移植後16年を経て発生した感染性心内膜炎の症例を経験したため文献的考察を加え報告する。

  • 岩下 山連, 黒澤 明, 小川 智也, 長谷川 元
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 391_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    20歳前の女性. X-5年11月抗GBM型腎炎の診断により, PE, PSL薬の投与を行うも維持透析に至った. その後肺胞出血をきたし, Goodpasture症候群と診断されPEを施行. X年3月に抗GBM抗体価10EU未満にて献腎移植候補で入院した. ドナーとのHLAは3ミスマッチで, 特記すべきアレルギー疾患の既往はなし. 右腸骨窩に献腎を移植されたが、day2に創部周囲に疼痛が出現し, day4に自制困難となったため再開創した. 移植腎は, 一部に裂創を伴う約20cmの腎腫大であり, 移植腎を摘出した. 腎組織は, 一部にフィブリン血栓形成を伴う, 腎動脈から葉間動脈レベルの動脈内皮炎と診断し, 抗体関連型拒絶反応の関与が考えられた. 一方で本症例は, DSAを含め拒絶に関連する免疫反応は検出されなかった. Goodpasture症候群は非常に稀な疾患であり、献腎移植を受ける頻度は低く、報告に乏しいため、若年でもある本例は貴重な症例である. また、腎静脈血栓症は移植後早期のグラフト喪失原因としては代表的であるが、発症頻度は5%以下と頻度は低いとされ、拒絶反応を原因とするものはさらに少数であるため、併せて若干の文献的考察を踏まえ報告する.

  • 横山 直己, 石村 武志, 田代 裕己, 藤本 卓也, 遠藤 貴人, 西岡 遵, 小川 悟史, 藤井 秀毅, 西 愼一, 藤澤 正人
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 391_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】先行的腎移植(PEKT)での慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)を検討した。【方法】2006-2019年の生体腎移植206例のうち、PEKT群(77例)と非PEKT群(129例)における術前、1週、3ヶ月、1年後のintactPTH(iPTH、pg/ml)、補正血清カルシウム値(Ca、mg/dl)、血清リン値(P、mg/dl)を比較した。【結果】術前iPTH(PEKT群vs非PEKT群)は367.3±291.8vs230.4±203.6 (p<0.05)とPEKT群で有意に高値であったが、術後は有意差を認めなかった。術前、1年後Caは8.8±0.7vs9.3±0.8 (p<0.05)、9.3±0.4vs9.6±0.6 (p<0.05) とPEKT群で有意に低値であった。術前P値は4.8±1.0vs5.3±1.6 (p<0.05)と非PEKT群で有意に高値であったが、1週後P値では2.3±0.9vs1.7±0.6 (p<0.05)と非PEKT群で有意に低値となった。【考察】PEKT群で術後iPTHは非PEKT群と同等であったがCaは低値で経過し、CKD-MBDに対し有利である可能性が示唆された。PEKT群の術前iPTH高値は腎不全によるクリアランス低下の要素もあると考えられた。

  • 後藤 了一, 嶋村 剛, 川村 典生, 渡辺 正明, 巖築 慶一, 渋谷 一陽, 神山 俊哉, 武冨 紹信
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 392_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】生体ドナー長期予後の検討は十分でない。生体肝ドナーの術後脂肪肝(FL)発症リスクを検討した。【方法】1997年-2019年の当院生体肝移植のうち, 術後1年以上 (平均1983日)後のCTで評価可能なドナー216例を対象とした。肝脾(LS)比0.9≧をFLとした。【結果】FLは15例(6.9%)の術後ドナーに認めた。FL評価時のAST (33.4±14.7U/l), ALT (55.9±40.1U/l), TG (198.4±170.9mg/dl), APRI (0.50±0.26)はFL無(n=201)に比べ有意に高値であった。術後FLの術前危険因子は父親ドナー(33.3%, p=0.052), 外側区グラフト(53.3%, p=0.02), 高身長(168.6±6.1cm, p=0.04), 高体重(69.4±14.6kg, p=0.009), 高BMI(24.3±4.3, p=0.03), TG(116.9±48.2, p=0.01), 残肝容積大(959.6±209.2ml, p=0.006)が単変量で有意差を認め、多変量で外側区グラフト(p=0.015)と体重(p=0.035)が独立した因子であった。ドナーとレシピエントの長期経過後のFLに関連は無かった。【結語】高体重の外側区ドナーは術後FLの発症リスクが高く、栄養指導を含めた綿密なフォローが重要である。

  • 佐藤 幸毅, 大平 真裕, 今岡 祐輝, 谷峰 直樹, 黒田 慎太郎, 田原 裕之, 井手 健太郎, 小林 剛, 田中 友加, 大段 秀樹
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 392_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    生体肝移植の高齢ドナーにおける術後短期予後に関わるリスク因子を検討。対象は2008年から2019年の生体肝移植138例。ドナー年齢50歳以上を高齢ドナー群 (n=29)として術後一年生存のリスク因子解析を行った。高齢ドナー群で一年生存率は有意に不良(p=0.0411)。高齢ドナー群のうち、レシピエントのpsoas muscle index (PMI) が術前低値 (日本肝臓学会;男性6.36 cm2/m2以下、女性3.92 cm2/m2以下)の症例で有意に短期生存は不良(p=0.010)。栄養指標として、prognostic nutritional index (PNI)、geriatric nutritional risk index (GNRI)、controlling nutritional status score (CONUT score) を用いてリスク因子を解析。高齢ドナーでの一年生存率は低PNI群(PNI<30) で有意に不良(p=0.027)、CONUT中等度障害 (CONUT>5)で不良傾向 (p=0.061)、GNRI重度リスク群 (GNRI<82) で有意に不良(p=0.0021)。高齢ドナー群における短期予後不良因子として、レシピエント低PMIや低栄養状態が挙げられた。高齢ドナー症例では術前からのレシピエント栄養状態改善に向けた介入が望まれる。

  • 堀 俊太, 田中 宣道, 米田 龍生, 西村 伸隆, 富澤 満, 中井 靖, 三宅 牧人, 藤本 清秀
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 392_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】術前の正確な分腎機能評価と残腎機能の予測が可能であれば、術前・術後の介入やフォローをリスク別に施行でき、生命予後を改善させ得る。生体腎移植ドナーにおける残存腎機能予測因子について検討した。【方法】2008年~2018年の期間に当院で腎採取術を実施した116例を対象とした。術前の患者背景や画像検査結果を収集した。術前分腎機能評価としては核医学診断法(測定GFR)と腎体積で評価した。残腎機能は手術1年後のeGFRで評価し、術前腎機能の>60%が保たれている症例を予後良好群、≦60%の症例を予後不良群と定義した。ROC曲線を描き、残腎機能予測を行った。【結果】 116例中追跡可能であった103例について検討した。男女比は39/64で、手術時の年齢とBMIの中央値はそれぞれ58と23.0であった。年齢・24時間クレアチニンクリアランス(CCr)・残腎測定GFR・残腎体積/体重・残腎体積/体表面積のAUCはそれぞれ、0.67・0.68・0.64・0.73・0.76であった。測定GFRと残腎体積/体表面積および年齢を用いた場合AUCは0.77で、24時間CCrと残腎体積/体表面積および年齢を用いた場合AUCは0.79であった。【考察】 残腎機能の予測として、核医学診断法のみでは不十分であり、腎体積や年齢、24時間CCr等を用いて総合的に評価することが重要である。

  • 赤羽 祥太, 五十嵐 優人, 三宅 克典
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 393_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】エホバの証人は国内に約21万人いると言われ, 手術治療を行う際の輸血拒否が問題となる. 今回ドナー及びレシピエントが共にエホバの証人であるペアの生体腎移植を行い良好な経過を得たので, 考察を交え報告する.【症例】レシピエントはエホバの証人である41歳女性. 原疾患は不明であるが既往に高血圧症がある. 15歳頃から血尿を指摘. 32歳時頃に血清Cr値が5mg/dlほどの高値を認めるようになった. 37歳時に当科外来初診となり, 維持透析導入. その後, 当院倫理員会での審議を経て同じくエホバの証人である母をドナーとする生体腎移植の方針となった. 組織適合検査より血液型適合, DSA陰性であったことから右腸骨窩生体腎移植施行. ドナーに対しては後腹膜鏡下左腎摘を施行した.ドナーは術後4日目, レシピエントは術後10日で自宅退院となった. 術後4年が経過した現在も問題なく外来通院中である.【結語】エホバの証人に対する生体腎移植は無輸血で行うという観点からリスク高いものの, 組織適合性や患者の全身状態を考慮した上で施行可能であると考える.

  • 岩藤 和広, 花房 規男, 中島 一朗, 渕之上 昌平, 土谷 健
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 393_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】腎移植患者は終生免疫抑制療法を行うため、長期的な維持管理システムが必要で、特に慢性拒絶の防止が重要である。【方法】1997年以降に当院で維持管理を行った約3,000名の腎移植患者から得られた約600,000件の生化学データや患者情報を分析対象とした。HLAのマッチングや免疫抑制剤の濃度と各種臨床データから慢性拒絶の予測因子などを調べた。【結果】de-novo DSA産生の主な要因は、既存抗体の有無とHLAのアミノ酸配列のミスマッチ数とTacrolimusの濃度だった。MMFの濃度は特に影響しなかったが、Everolimusの濃度は予後と相関が見られた。拒絶後の予後増悪因子は呼吸器感染症とde-novo DSAの発生などだった。それらに基づき患者毎の背景・経過・治療方針を表示するシステムを開発した。【考察】AIを用いた腎移植患者のorder madeの維持管理システムは免疫抑制療法の最適化などに有用である。

  • 中村 祐貴, 藤澤 宏光, 臼田 昌広, 下田 栄彦, 中屋 來哉, 杉村 淳, 小原 航, 宮城 重人, 芳賀 泉, 後藤 憲彦, 鳴海 ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 393_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    当院は腎臓病診療においては年間80~100例程度の新規透析導入を行うなど岩手県の中心的役割を担っているが、腎移植希望の患者はこれまで他院に紹介してきた。患者側からの要望もあり、当院での腎移植実施を長年目指してきた中で、腎臓内科医師が、県外で1年間腎移植研修を受ける機会を得た。当院に再赴任後、多くの課題があったが、岩手県の腎移植を推進するという構想の元に計画を進め、腎臓リウマチ科、泌尿器科、消化器外科、麻酔科を中心に各部門の枠を超えたチームを結成した。また、腎移植研修施設の多大な支援を得て、メディカルスタッフに対する技術指導を行った。手術当日には関連施設から医師の応援を受けたが、再赴任年度内に2例のABO適合生体腎移植術を施行するに至った。いずれの症例も経過良好である。今後、年間10件以上の生体腎移植実施と献腎移植体制整備を目標に部門の枠を超えた腎移植チームの発展に努めていく予定である。

  • 川﨑 剛, 関根 亜由美, 北原 慎介, 岡谷 匡, 重田 文子, 坂尾 誠一郎, 稲毛 輝長, 和田 啓伸, 鈴木 秀海, 中島 崇裕, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 394_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    本邦の肺移植は実施件数および待機患者数とも増加傾向にあり、平均待機日数は長期化している。患者は待機中に全身状態がしばしば悪化し、担当医は長期待機が見込まれる場合に、肺移植ブリッジの可能性が低いことを認識しながら、どこまで積極的な対応をすべきか判断に難渋することが多い。最近経験した以下の事例について検討したい。症例は20代男性、6歳時にIPAHと診断され、最大の内科的治療にも関わらず、進行性であったため、日本臓器移植ネットワークに登録となった。その後、体血圧低下および倦怠感が出現し増強したため、登録6か月後に入院となった。入院時、血圧 75/44 mmHgと循環不全を呈したため、ICUにてカテコラミンの持続静注管理が開始された。その際、循環動態がさらに悪化した場合の対応について、肺移植チームにて検討した。その結果、長期待機の見込みに加え、ECMO用のブラッドアクセスが容易でないことから、肺移植ブリッジの可能性は極めて低いという見解に至った。しかし、若年であること、ご家族の心情、病態改善によるECMO離脱の可能性などを考慮して、医療資源の状況が許せば、一定の期間を念頭においたV-A ECMO管理までを実施する方針とした。本症例のように、移植待機中患者の容態が悪化した場合の診療方針について、平均待機期間の現状、医療資源および倫理面などを考慮した診療ガイドラインの整備が求められる。

  • 寶亀 亮悟, 市原 有起, 山田 有起子, 菊池 規子, 服部 英敏, 野本 美智留, 齋藤 聡, 西中 知博, 萩原 誠久, 布田 伸一, ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 394_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    メディカルコンサルタント(MC)制度は適切なドナー評価・管理の支援をを行い、「可能な限り多くの臓器を良好な状態でレシピエントの元に届ける」という点においても臓器提供数が極めて少ない本邦では、需要な制度である。当院心臓外科も2009年から東日本を中心に東日本を中心にMCの介入を行ってきた。当院ではMCの質を維持するために若い世代への教育も積極的に行ってきた。今回、当院のMC介入方法を振り返る。当院では、重症心不全・補助人工心臓(VAD)治療・移植治療を心臓外科中心で管理を行っていた2013年頃まではMC介入も移植医療に精通していた心臓外科医が1人で行っていた。その後の症例数増加に伴い、MC介入回数も増加するにつれ、心臓外科の医師1人では業務遂行が困難となり後輩の育成が急務となった。そのため、2014年以降後輩の育成のために上級医と共にMC業務に同行し、評価および判断を共有することで経験を積むようにした。また、心臓外科入局者が年々減少していることを踏まえ、将来的にMC業務が立ち行かなくなることが予想されたため、2016年以降循環器内科の医師にも協力を仰ぎ積極的に心臓外科と合同でMC介入を行うようにしている。2019年以降は10年目以上の循環器内科・心臓外科医師が責任者となり現地に赴き、内科外科両側面からドナーの評価を行うことでその質を上げることも心がけている。

  • 瓜生原 葉子, 荒木 尚, 多田羅 竜平, 西山 和孝, 種市 尋宙, 日沼 千尋, 別所 晶子
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 395_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】日頃から家族で移植医療について対話をすることが重要であるが,対話を生むために有用な機会は学校の授業で取り上げられることである。2019年4月より中学校の「道徳」7社の教科書に臓器移植が掲載された。そこで,教員が円滑に授業を実施できる環境整備,授業をきっかけとした家族との対話を促すしくみが必要と考えられる。本研究の目的は,実際に授業を実施した教諭への調査から、行動変容促進を支援するツールを作成することであった。【方法】2019年度に実際に授業を実施した教諭を対象とした半構造化インタビュー調査を行った。調査項目は,実施に関する感想(準備の負担感・不安,生徒の態度,満足度,次回への行動意図),授業前に用いた資料,授業の工夫などであった。【結果】専門用語への理解に対する不安を抱いた、補助資材があればいいと思った割合は100%であった。実際に事前に用いたられた資料は,移植関連のホームページなどであり、様々な資料がひとつにまとめられているwebsiteへのニーズが高かった。自身の満足度、および行動継続意図は100%であり、「思った以上に生徒たちが活発に討議をしていたことに,この教材の意義を感じた」との意見もあった。支援ツールとしてwebsiteが適切であり,特に専門用語などを理解できるコンテンツ,様々なサイトの資料が一か所に集まっていることの必要性が示された。

  • 原田 俊平, 杉本 龍亮, 中村 緑佐, 昇 修治, 牛込 秀隆
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 396_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    血液型不適合生体腎移植に対する術前抗体除去療法には回数・方法などに明確な指標がない。確実にAMRの発症を防ぐことが第一であるが、過剰な抗体除去は循環動態への影響やアレルギー反応など患者の負担も大きく、医療資源の過剰使用も懸念されるため、過不足のない抗体除去を目指すべきである。当院では2005年より血液型不適合腎移植を行っており、抗体価に応じて、titer≦32 抗体除去なし、64≦ ≦128 PE1回、256≦ DFPP3回+PE1回のプロトコールで行ってきた。しかし、抗体除去なしの症例でAMRの発症がみられたことや、PEによるアレルギー反応、AB型新鮮凍結血漿の過剰使用等が問題であると考え、2013年よりプロトコールを変更した。titer≦64を目標とし、≦128 DFPP1回、256 DFPP2回、512 DFPP3回、1024≦ DFPP3回+PE1回としている。2005年10月〜2018年2月までに98名の血液型不適合腎移植を行い、64 名が旧プロトコール群、34名が新プロトコール群であった。AMRの発症は旧プロトコール群:新プロトコール群で4/64(6.3%):2/34(5.9%)と有意差を認めなかった。術当日朝に測定した抗体価では新プロトコール群でIgG/IgM:8/2(中央値, 1-256/1-64)であった。現時点で新プロトコールは有用であると考えられた。

  • 望月 宏樹, 渡邉 琢也, 岩崎 陽一, 米山 将太郎, 姉川 英志, 筋野 容守, 八木 信一朗, 吉竹 功央一, 黒田 健輔, 中島 誠 ...
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 396_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【背景】本邦では HLA classⅠのLCTが陽性の心臓移植は禁忌であるがHLA classⅡのLCTが陽性の場合には移植施設の判断の下で移植が実施される。【症例】57歳女性、第2子妊娠時に拡張型心筋症と診断され移植登録した。抗HLA抗体はclassⅠ/classⅡともに陽性(MFI1000以上)であった(classⅠで12種類、classⅡで6種類保有)。約4年の待機を経て心臓移植を実施した(ドナーHLA-A11/A24-B35/B62-DR4/DR4、レシピエントHLA-A2/A24-B35/B52-DR8/DR15)。DSAはHLA-DR4で陽性であり(MFI7179)、補体結合能(C1q)は陰性であったが、LCTもclassⅡで陽性であった。Basiliximab,Tac,MMF,mPSLによる免疫抑制療法を行った。直後のDSAは陰性であった。術後1週目にAMR(ISHLT Grade pAMR2)を認め(心機能はLVEF 75%)、HLA-DR4-DSAはMFI21980でC1qも陽性でステロイドパルスを行った。術後4週目まではpAMR2の所見を認めたが、その後DSAは陰性化し、AMRは認めず退院となった。経過中、HLA-A,Bに対するDSAの出現はなかった。移植後1年目の時点でPSL5mg/日内服下でDSAは陰性でありAMRは認めず、移植心冠動脈病変の進行もなかった。

  • 藤田 高史, 栃木 宏介, 石田 昇平, 舟橋 康人, 松川 宜久, 田中 章仁, 齋藤 尚二, 安田 宣成, 丸山 彰一, 加藤 真史
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 397_1
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    DSAは抗体関連型拒絶反応のリスク因子であり、①CDC陽性②FCXM陽性③FCXM陰性でDSA陽性の順にDSAの力価が高いと考えられている。クロスマッチ陽性腎移植における脱感作療法後のAMR発生率は12-60%と報告されているが、DSAの力価によりAMRの発生率は異なる。今回われわれは2011年から2019年までに当院で施行された生体腎移植の77例を対象として、FCXM陽性(グループ①、26例)、FCXM陰性でDSA陽性(グループ②、3例)、FCXM陰性(グループ③、48例)に分けて拒絶反応の発生率、CMV抗原血症、生着率について検討した。輸血、妊娠、移植の感作歴はグループ①、②、③でそれぞれ53.8%、33.3%、20.8%、DSAはグループ①に3例、グループ②に3例確認された。脱感作療法としてリツキシマブはグループ①、②、③でそれぞれ65.4%、100%、35.4%に投与されていた。AMRの発生率はグループ①、②、③でそれぞれ15.4%、33.3%、2.1%であった。CMV抗原血症に対してVGCの投与を要した症例はグループ①、②、③でそれぞれ15.3%、33.3%、29.2%であった。3年生着率はグループ①、②、③でそれぞれ100%、100%、92.4%であった。FCXM陽性例およびDSA陽性例はFCXM陰性例に比較するとAMRの発生率は高いが、短期生着率に差は認めなかった。

  • 清水 誠一, 阪本 靖介, 福田 晃也, 内田 孟, 栁 佑典, 入江 理恵, 羽賀 千都子, 中野 憲之, 義岡 孝子, 笠原 群生
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 397_2
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    【緒言】小児肝移植においてもドナー特異的抗HLA抗体(DSA)による慢性抗体関連拒絶反応(cAMR)はグラフト予後に影響するが、治療まで言及した報告は乏しく、文献的考察を加えて報告する。【対象】2005年11月以降当科で小児生体肝移植(移植時月齢13.5(1-215))を施行し、術後3年以上経過して術後DSAを測定した302例を対象とした。【結果】DSA陽性76例(25.2%)のうち、51例に肝生検を施行した。Banff criteriaに準じて8例をcAMR、5症例をpossible cAMRと診断した。この13例においてDSAのMFI が有意に高値であった(p=0.0049)。一方で4例はMFI<3000でもCAMRであった(MFI最低値:1521)。また原疾患、肝生検時の肝機能、術前クロスマッチ陽性、血液型不適合、移植後経過年数、急性拒絶反応の有無、生検時の免疫抑制剤および血中濃度など免疫学的に影響されると思われた因子はCAMRのrisk factorとはならなかった。13症例中8例にフォローの肝生検を施行し、MFI<3000もしくはMMF導入した5症例で改善を認めた。【結語】MFI低値であってもDSA陽性症例には肝生検を検討する必要性がある。またMFI高値のcAMR症例に対してMMFを併用した免疫抑制療法が有用である可能性が示唆された。

  • 田嶋 哲也, 秦 浩一郎, 日下部 治郎, 宮内 英孝, 趙 向東, 上本 伸二
    2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 397_3
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/18
    ジャーナル フリー

    緒言: 抗体関連型拒絶反応(AMR)は臓器移植後の難治性拒絶反応であり、機序の解明と病態の制御が望まれる。方法: DA-to-Lewisラット同所性全肝移植を、肝移植6週前にDA-to-Lewisの皮膚移植を先行する前感作群(PS群)と未感作群(皮膚前感作なし; NS群)の2群で行い(各n=5)、FK連日投与のうえ7日目(D7)まで比較検討。結果: PS群で抗ドナー(DA)抗体の有意な上昇(IgG: P<0.001; IgM: P<0.05)と免疫染色でのC4d沈着が確認された。AST、ALTはPS群で有意に高く(P<0.01)、特にALP、胆汁酸、Bil等胆管障害でより顕著であった(P<0.001)。PS群で血小板数は有意に低くPT-INRは高値であった(共にP<0.05, D7)。病理組織学的スコアはPS群で有意に不良(P<0.001, D3, 7)で、NS群は全例生存(100%)したがPS群はD2,3に1例ずつ死亡(60%, P=0.13)した。結論: AMR診断(Banff)基準を満たすラット肝移植AMRモデルを樹立した。

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