1.日蒸散量は8月上旬に単一ピークを示し, この時期は品種間に生育ステージの差がみられた.蒸散比は登熟前半期ないしは後半期に最大となり, ほぼLAIに比例して高まり, LAI5以上では横ばいを示す.Tadukanのみは飽和現象が認められなかった.蒸散量の推移は各品種とも高温区は自然温区よりまさったが, 蒸散比については大差がみられなかった.
2.稲の蒸散力を示す単位葉面積当り蒸散比は前二者の傾向と異なり, 分けつ前半期ないしは後半期に最大値を示し, LAIの増大にともない減少するが, 両者の間には必ずしも逆数的な関係は認められない.インド型は日本型に比べて, 同一LAIで蒸散が多く, TadukanのみはLAIに関係なく一定の高い蒸散力を示した.
3.孤立個体での生育後期の蒸散量割合は葉身40~60%, 葉鞘30~35%, 穂15~25%を示し, Tadukanはホウヨクに比べて葉身の蒸散割合・乾物重割合が少なかった.また各品種の穂の表面積の葉面積に対する割合は11~36%に達し, Tadukanが最も高く, 穂の蒸散への寄与がうかがわれた.
生育後期の上位3葉の気孔開度の日変化は株当り蒸散量と必ずしも対応がみられず, 気孔開度と蒸散の関係は密接とはいえなかった.また生育中期の晴天昼間の蒸散量は日蒸散量の平均85%を占めた.
4.日蒸散量や蒸散比には生育前期にはLAIと気象要因が, 植被完成後の生育中後期にはLAIよりも気象要因が大きく関与する.株当り日蒸散量は気象要素のうち日射量と飽差との相関が高い.計器蒸発量 (Em) は蒸散量 (T) や気象要素といずれも相関が高かった.同一気温でインド型は日本型に比べて, 自然温区は高温区に比べて単位葉面積当り蒸散量が多く, インド型は高温下でも蒸散力がまさり過剰蒸散の傾向があり, 自然温区 (戸外) では風が影響すると考えられた.
抄録全体を表示