熱帯農業
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27 巻, 3 号
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  • 和佐野 喜久生, 尾路 悟, 城戸 康博
    1983 年 27 巻 3 号 p. 131-139
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    稲紋枯病は, いもち病, 白葉枯病とならんで, 日本および東南アジア諸国において重大な稲病害になっている.しかし, 稲品種の育成に際して紋枯病抵抗性の人為選抜は, 今日までほとんど行われていない.その原囚の一つに, 本病原菌の接種法が考えられる.すなわち, 慣行の接種法 (稲わら培養法, もみ・もみがら混合培養法及びPSA培養コルクボーラ打抜法など) は, 接種方法は容易であるが接種株の発病が不確実である, あるいは発病は確実であるが圃場で接種するには煩雑すぎるなどの欠点がみられた.そのために, 多くの個体を対象とする雑種集団からの個体選抜に適用できなかった.本研究は, 接種方法が容易で, しかも発病が圃場の環境条件あるいは稲個体の生態的・形態的特性に影響されない接種法の確立と, 抵抗性系統の育成を目的として行った.本実験では, 新に注射器による接種法を採用し, 従来の慣用法との比較を行なった.注射器接種法は, 寒天量を20%少なくしたPSA培地で病原菌を28℃で2日間培養し, よく攪拌後100mlの注射器に入れ, 出穂期に止葉から3番目の葉位の葉鞘内に約0.25mlを注入する方法である.抵抗性の判断は, 接種後2および4週目に接種葉位およびその上位2枚の葉鞘での病斑面積率を指数 (0~10) で判読して行なった.慣用の稲わら, もみ・もみがら混合接種法 (いずれも出穂期に接種) は, 接種個体の発病が不確実であったので, 発病株率で抵抗性の大小を判別した.慣用の3接種法による品種抵抗性は, 注射器接種法の第2葉位の4週目病斑指数と有意な正の相関関係がみられ, 品種あるいは系統の抵抗性を比較する場合はいずれの接種法によっても大差がないことがわかった.注射器接種法は, 出穂期にすべての接種個体を確実に発病させることができたが, 同じ日時に接種された品種の間でも病斑指数に大きな差がみられた.なお, 8月24日に接種した極早生系統には抵抗性を示すものは見られなかった.病斑指数は, 接種後2および4週目の間, 第3および第2葉位の間, および第2葉位と止葉の間でいずれの場合にも正の相関関係がみられ, 一次あるいは二次の回帰式が適合した.注射器接種法による選抜は, 遺伝力及び誤差の変動係数の大小から判断して, 第2葉位の4週目の病斑指数によって行うのが最も効率的であると結論された.紋枯病抵抗性と白葉枯病ポリジーン抵抗性との間には有意な相関関係はみられなかったが, 紋枯病抵抗性強系統は白葉枯病ポリジーン抵抗性強系統の中のみにみられた.
  • I菌体外マンナナーゼの諸性質
    高橋 理平, 日下部 功, 前川 昭男, 鈴木 隆雄, 村上 和雄
    1983 年 27 巻 3 号 p. 140-148
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    放線菌菌体外酵素β-1, 4-マンナナーゼの諸性質を粗酵素の段階で調べた.フィリピン各地で採取した土壌試料から平板培養法により放線菌20株を分離し, この中から液体培養法により比較的酵素生産能力の高い4株を選出し, 実験に供した.いずれの菌株の生産する酵素もpH7付近に反応の至適pHを有し, また40℃あるいは47℃に至適温度が存在した.30℃で3時間, 各pHで処理するとpH5~pH7では安定であり, 40℃, 30分間の加熱処理ではいずれの酵素も失活しなかった.さらに, これらの酵素はコブラ搾油残渣より調製したマンナンを速やかに水解し, 反応初期では種々のマンノオリゴ糖が観察された.また, 反応終期ではマンノースとマンノビオースが主産物であったが, マンノトリオースと未確認のオリゴ糖も検出された.反応終期における水解産物の平均重合度は1.7-2.0であった.尚, いずれの酵素もマンノビオースは水解しなかった.
  • 広瀬 昌平, ダーター エンマ S., 瓜谷 郁三
    1983 年 27 巻 3 号 p. 149-157
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    キャッサバ貯蔵上の問題である収穫後の変質の発生過程を環境条件との関連で観察し, 以下の結果を得た.
    1.収穫後24~48時間以内に塊根に生理的な変質 (vascular streaking: 以下VSと呼ぶ) が認められた.塊根基部から皮層の内側の柔組織に灰褐色のリング状に変色するVSのI型と維管束に沿った青黒色の筋に変色するVSのII型が区別された.
    2.塊根に傷害を加えると, VSのI型よりII型が主に発現し, それに伴い塊根の軟腐が発生するのが認められた.
    3.VSのII型は塊根軟腐の初期に発現することから生理的変質よりも微生物による変質に関係があるものと推測された.
    4.VSのI型の発生に対する塊根成熟程度 (挿苗後5, 6, 7, 8, 9と10ヵ月) の影響は認められなかった.
    5.挿苗後8カ月の42品種を供試し, 収穫後3日目にVSのI型に対する感受性を検定したが, 11品種が抵抗性を示し, 他の11品種がスコア4の感受性を示した.VSに対する感受性と収穫時における塊根水分含量との間に負の相関関係 (r=-0.7875**) が認められた.
    6.収穫後のキャッサバ塊根の貯蔵法として地下貯蔵の効果を検討したが, 3週間の地下貯蔵では変質はみられなかった.特に, Hawaiian-5種はVSばかりでなく微生物による変質にも抵抗性を示した.地下貯蔵は農家レベルのキャッサバ貯蔵法として十分有効であった.
  • 第2報開畑2年目におけるトウモロコシの生産量
    林 茂一, 釜野井 正男, ブンプロンマ カンハ
    1983 年 27 巻 3 号 p. 158-165
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    タイ国東北部チュラボーンダムに隣接するコンケン大学所有林を開畑し, 焼畑区と改良畑区を設け, 開畑2年目におけるトウモロコシの栽培を行った.その結果, 全乾物重および子実重とも改良畑で優っていた.これは, 施肥 (窒素, 燐酸およびカリ) および耕起の効果によるもので, 除草の影響はみられなかった.
  • IIキャッサバ栽培における生育阻害要因とアラン・アランの施与効果
    但野 利秋, 蜷木 翠, 大屋 一弘, ルンバンラジャ J., ウトモ M., シトルス A.D., マヒ A.K.
    1983 年 27 巻 3 号 p. 166-174
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    インドネシア・ランポン州に広く分布する赤黄色ポドゾール性土壌のキャッサバに対する養分的にみた生育阻害要因と, キャッサバの収量に対するアラン・アラン (lmperata cylindyica) の施与効果を明らかにするために, 農家圃場に生育するキャッサバ幼植物の無機栄養状態を調査し, さらに圃場試験を実施して以下の結果を得た.
    1.キャッサバに対する赤黄色ポドゾール性土壌の生育阻害要因としては, 土壌の低窒素供給が最も重要な要因であった.キャッサバにおいては, 地上部の窒素要求性が大きいと考えられた.
    2.キャッサバは, 水稲, 陸稲やトウモロコシと比較して低燐土壌に対する耐性が強かった.低燐土壌に対するキャッサバの強い耐性は次のようなキャッサバの特性に起因すると考えられた: (1) 移植に用いる茎には0.1~0.3%のPが含まれており, この燐がキャッサバの初期生育のために利用される. (2) 低燐土壌からの根の燐吸収能が強い, (3) 低燐条件下では, 根で吸収した燐をより効率的に塊茎の形成と肥大のために利用する, (4) 生育期間が著しく長い.
    3.カリ肥料を施与した場合に, キャッサバは多量のカリを吸収するが, 置換性K含量が0.37me/100gである土壌では, 土壌のカリ供給がキャッサバの生育阻害要因とはならなかった.
    4.キャッサバは, 土壌の低pH条件に対する耐性も強かった.
    5.無肥料条件で, マルチとしてアラン, アランを新鮮重で20ton/ha (乾物重では8.6ton/ha) 施与することによって, キャッサバの塊茎収量は著しく増加し, N, P, Kをそれぞれ100kg/ha施与した要素区とほぼ等しい収量が得られた.インドネシアにおいて現在開発されつつある地域には, アランアランがいたる所に生育しているので, 肥料の利用が困難な場合には, これを作物栽培土壌にマルチとして施与することが望ましい.
  • 久島 繁, 新井 勇治, 太田 安定, 椿 啓介, 岡田 元
    1983 年 27 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    デンプン製造中に起こる品質劣化を研究するためマレーシア, サラクク州からサゴヤシの木を輸入した.研究室到着後, 急速に黒色微生物のほぼ単一のエコシステムが樹幹切断面に形成された.その際, 樹幹内部も同一微生物により汚染されていた.サゴヤシ樹幹に寄生する菌あるいは, 樹幹からの微生物の報告がみられないこと, 樹幹に多量に存在するデンプンを資化する微生物である可能性などを考え, この微生物の分離, 純化および同定を試みた.同時に幾つかの性質を検討した.
    本微生物は不完全菌の一種Chalara Paradoxaと同定され, 現在まで本邦で報告のみられない菌であった.また, 本菌の分布から, 東南アジア渡来の菌であることが示唆された.
    M.C.Z.培地を使用する場合, イーストエクストラクトの添加は必須条件と考えられた.本菌は検討した各種炭素源のうち, サゴデンプンを最も良く資化し, アミラーゼ生産菌であることが示唆された.本菌はグルコース, マルトースあるいはジャガイモデンプンよりサゴデンプンを良く資化した.本菌はpH6.0付近で最も良く生長したがpH2.5付近でも良く成長した.また, 生長は若干遅れるが, pH2.0でも十分生育した.本菌はセルロース末およびAvicel S.Fを資化出来ないように見受けられたがセロビオースおよびC.M.C.を良く資化し, β-glucosidase生産菌と推測された.本菌は約2.5日で8-9cm径まで生長する生長速度の高い菌であった.本菌は培地にエタノールおよび未同定の芳香性物質を産生した.
    これらの結果に基ずき, サゴデンプンの生物転換などに言及した.
  • 井之上 準
    1983 年 27 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    伸長性 (Elongation ability) が異なる浮稲60品種を供試し, 1976年に提案された「Standard scoring system」による各品種のScore (本論文では草丈の実測値) と伸長最低節間の位置の関係について検討した.なお, 実験終了時における水深は155cmであった.得られた結果の概要はつぎの通りであった.
    1.全品種とも水位の上昇につれて草丈は高くなったが, 実験終了時に草丈が水位より高かったのは57品種であった.
    2.上記57品種において, 実験終了時の草丈は水面上に抽出している葉数との間には高い正の相関 (r=0.588) が認められたが, 水面上に完全に抽出した葉身の枚数との間には相関は認められなかった (r=0.239n.s.) .水面上に完全に抽出した葉身を多く持っている個体ほど, 水位の上昇につれて正常に伸長したことを示すと考えられる.
    3.水面上に完全に抽出した葉の数は, 伸長節間の数および総節間長との間に高い正の相関 (r=0.866および0.796) , 伸長最低節間の位置との間に高い負の相関 (r=-0.85) が認められた.また, 伸長最低節間の位置は伸長節間数および総節間長との間に高い正の相関 (r=0.866および0.796) が認められた.
    4.以上の結果より, 浮稲の伸長性の指標は「Standard scoring system」による“草丈”よりも, “伸長最低節間の位置”が, より適しているのではないかと考えられる.
  • チャンタラカナ チャラン, ファールンサン スパット, ビラシット パチャン, ウサナコンクン スラチェ
    1983 年 27 巻 3 号 p. 187-190
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    152頭の沼沢水牛の425回の分娩について, 産次および仔水牛の性が分娩間隔と出生時体重に及ぼす影響とその反復率, ならびにこれらの諸形質間の関係を調査した.産次は分娩間隔と出生時体重に有意に影響した.すなわち産次が進むにつれて, 出生時体重は27.2, 27.2, 29.5, 31.0kgと増加し, 分娩間隔は643, 559, 494日と減少した.出生時体重と分娩間隔の推定反復率はそれぞれ, 0.36, 0.39と中等度であった.相次ぐ2つの出生時体重間の相関は正で, 殆んどが高い有意性を示したが, 相次ぐ分娩間隔間の相関は負であることが解った.
  • 第8報二期作後の品種の変遷と主要品種の窒素施肥反応*
    野崎 倫夫
    1983 年 27 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    二期作開始後のムダかんがい地域の品種の変遷を明らかにし, その中の主要6品種 (乾期作では5品種) について窒素施肥反応と収量を検討した.その結果, 同地域の品種は窒素施肥反応の低い品種から高い品種へと漸次変りつつあること, 及びこれらの品種は窒素施肥反応と収量から3つに類型でき, MR1型品種が窒素施肥反応と収量からみて最も優れていることがわかった.
  • 仁科 雅夫
    1983 年 27 巻 3 号 p. 198-204
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 広瀬 昌平
    1983 年 27 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 三宅 正紀
    1983 年 27 巻 3 号 p. 211-212
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 西川 五郎, 香川 邦雄
    1983 年 27 巻 3 号 p. 213-214
    発行日: 1983/09/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
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