熱帯地方における焼畑農耕の常畑農耕への転換技術組立てに資するため, 湿潤熱帯的気候条件下にある西表島において焼畑の農地生態学的研究が行われた.その中で著者らは土壌肥沃度の問題を担当し, 今回は林地バイオマスの賦存する養分量とそれが伐採焼却によって土壌へ付加される量について調査した.
試験地の樹木及び林床リッターの乾物量はヘクタール当たりそれぞれ187.0トン及び4.9トンと推定され, その合量バイオマスに賦存されるC, N, P
2O
5, K
2O, CaO, MgO, NaOなどの養分はヘクタール当たりそれぞれ90.55トン, 0.60トン, 0.10トン, 0.52トン, 0.82トン, 0.23トン, 0.47トンと推定された.
これら林地上のバイオマスを焼却することにより・土壌 (0~15cm) のpHは上昇し, 置換性Ca, K, Na及び塩基飽和度なども増加したが, 土壌全炭素, C/N率, CECなどは減少した.
地上バイオマスの焼却により土壌 (0~15cm) へ付加される養分はK
2Oが最も多く次いでCaO, Na
2O, MgOの順となりP
2O
5は最も少かった.土壌に付加された養分量のバイオマス賦存量に対する比率はK
2O35%, CaO12%, Na
2O8%, MgO14%, P
2O
51%であった.以上より当該試験地においては樹木の伐採焼却による土壌への養分付加量は比較的少く, 焼畑式開墾によりかなりの養分が土壌一森林系から消失すると推定された.
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