わが国においてはIndigofera属作物に関しての研究はほとんど行なわれていない.著者はわが国暖地においてこれが緑肥, 被覆作物および家畜飼料としての可否を検討するため熱帯, 亜熱帯諸地域より導入した代表的な諸種につき1958年に行なつた実験結果の一部を示すと次の如くである.
1) 野生種2種を含めて10種12品種の供試材料による発芽試験結果では発芽の最適温度は35℃またはこれ以上にあり, 硬実歩合は極めて高く, 35℃の場合でも10日間の発芽率が最高50%のI.sumatranaより最低13%のI.hirsutaまでかなり著しい種間差異を認め, 播種前種子の予措を行なわねば生育が極めて不整一となることを認めた.
2) 供試材料中, 採種の最も容易であつたのはI.hirsuta (India) で次いでI.tinctoria (India) であり, I.exiocarpa (U.S.AF.) およびI.sumatranaでは採種不能であつた.また一子梗上の種子の成熟は不整一であり成熟後圃場に放置するときは種子の腐敗を生じ易かつた.
3) 草丈の最も高かつたのはI.sericeaおよびI.surnatranaであり最も低いのはI.exiocarpaであつた.刈取収量で最も多かつたのはI.sericeaでI.hirsuta (U.S.A.) は供試材料中唯一の匍匐型のものであつた.
4) 供試材料中越冬したものは1種もなかつたが, 採種可能のものは何れも種子の自然落下による次年度の生育を認めた.
5) 被覆作物としての利用はI.hirsuta (U.S.A.) が最も適しており, 暖地傾斜地の土壌流亡防止および地力維持用として好適であることを認めた.
6) 根瘤菌については同一根瘤菌群に属する野生および栽培作物が多く, Indigofera属栽培では新墾地においても接種の必要はないと思われる.
7) 緑肥としての価値は風乾比率が高いため土壌改良としての効果は高いものと思われる.
8) 病害虫ではほとんどみるべきものがなく, 成熟期に近ずくと一部白渋病 (Microshhaera polygoni (DC) Saw.) の発生を認めたが, 問題となるべきものではなかつた.
9) 種子重は種類によりかなり相異しI.endedaphillaの1, 000粒重1.89gよりI.exiocarpaの7.14gの範囲内にあつた.
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