熱帯農業
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34 巻, 4 号
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  • 第1報 作付けの季節性
    宮川 修一, コンチャン ソムキアット
    1990 年 34 巻 4 号 p. 235-242
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    東北タイ, ドンデーン村における菜園の作付けの季節性について1983年7月から1984年2月までの間に調査を行った.菜園では栽培, 野生を含め156種の有用植物がみられたが, 栽培面積の上ではトウガラシが群を抜いており, どの季節でもほぼ40%を占めていた.パパイヤ, トウモロコシ, ナガササゲ, ダイジョも比較的広く栽培されるが, これらの作付け率は雨期にとりわけ高かった.一方乾期にはニンニク, シャロットならびに各種のブラシカ類の作付け率が上昇した.生産量は11月に最大値, 8月に最少値を示した.同時に菜園での作業量や種目も変化した.これらの季節的変化は作物の生態的特性や気候の季節的変化のみならず, 稲作暦とも関係が深いものと考えられる.菜園における作物生産の向上のためには稲作作業と競合しない作付け体系の導入が有効であり, これはこの地域特有の不安定な天水農業の改善につながるであろう.
  • 松永 英輔, ドメトン チャチャイ, ボリブーン マリー
    1990 年 34 巻 4 号 p. 243-249
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    プラウノイ樹木から年3回, 葉を収穫することにより樹勢が著しく衰弱し, 毎年安定した葉の収量および品質を得ることはむっかしい.本研究は衰弱した樹木を回復させ, 毎年安定した葉の収量および品質を得るための剪定法ならびに収穫法を検討した.
    1.乾季 (11月~4月) の生長休止期における剪定法.i.頂部剪定法: 薬剤散布および収穫などの諸作業の実施に都合のよい高さ, 約2mで頂部を剪除する.ii.切返剪定および間引剪定: 頂部剪定後, 樹勢を回復させ, 毎年安定した葉の収量および品質を維持するため, 樹冠内の日光の照射不充分な幹と幹, 枝と枝が重なり合う密生部において, 枝の少ない幹, 芽の少ない枝および軟弱な幹, 枝を切返剪定法および間引剪定法により, それらを剪除する.
    2.雨季 (5月~10月) の生長期における収穫法: 多数の葉をつけた枝の先端部を主に収穫し, 葉の少ない枝は収穫をさけ, 次回の収穫期まで残す.
    以上の剪定法および収穫法に基づいて, 3年生以上のプラウノイ葉を収穫するには次の時期が最適であった.
    (a) 生長期の初期.第1回収穫: 5月下旬あるいは6月下旬.第2回収穫: 7月下旬あるいは8月下旬. (b) 生長期の後期: 第3回収穫: 10月下旬あるいは11月下旬
  • 冨永 達, 小林 央往, 植木 邦和
    1990 年 34 巻 4 号 p. 250-254
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    北海道から沖縄県に至る各地で採集し系統維持してきたチガヤ (Imperata cylindrica) の52クローンにっいて, 各クローンの萌芽, 出穂および地上部の枯死期を調査した.また, 各クローンの5分株個体について, 草丈, 分株数, 根茎数および器官別乾物重を測定した.
    10形質 (草丈, 全乾重, 分株数, 根茎数, 根茎長, 根茎への乾物分配率, 移植後萌芽, 出穂, および枯死までの日数, 萌芽から枯死までの日数) の形質問相関行列に基づく主成分分析を行った.ただし, 出穂しなかった北海道および秋田県由来の2クローン, 冬期も枯死しなかった奄美大島および沖縄県由来の3クローンの計5クローンは分析から除いた.
    第1, 第2および第3主成分は, 草丈およびフェノロジー, 根茎長および根茎数, 根茎への乾物分配率をそれぞれ表現していると推定された.主成分分析の結果, 第1から第3主成分までの累積寄与率は84.4%に達した.47クローンは, A群) 東北北部由来の, 小型で出芽が最も遅い, I.cylinclrica var. genuina, B群) A, C群の中間的な特性を示す, 東北南部から九州北部由来のI. cylindica var. koenigiiおよび C群) 九州南部由来の, 大型で地上部の枯死時期が最も遅い, I. cylindrica var. koenigiiの3群に類別された.
  • 第2報 トウガラシ生産
    宮川 修一, コンチャン ソムキアット
    1990 年 34 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    東北タイ, ドンデーン村における菜園の重要作目であるトウガラシの生産性を1983年7月から1984年2月まで調査した.対象とした16の菜園での平均収量は生重で3kg/100m2/月, ないし2kg/100株/月であったが, 菜園間の差異はおおきかった.9, 10月の収量が最も高く, 11月以降は更新によって若齢株が多くなるため収量は低下した.7, 8月の低収量は大雨による着花不良や田植作業との労力競合が原因と推定された。面積当たり収量は株当たりの収量に強く支配されており, 旺盛な生育が得られるように管理方法を改良してゆくことが重要と考えられる.
  • ―グリフォセートと比較して―
    早道 良宏
    1990 年 34 巻 4 号 p. 260-264
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    植物矮化剤サイクロヘキサンジオン (Cyclohexandion) 系化合物KUH833 (クミアイ化学) のサトウキビの生育および登熟に及ぼす影響を生長調節剤グリフォセート (Glyphosate) のそれと比較検討した. KUH833はグリフォセートと同様茎頂及び節間分裂組織の細胞分裂並びに伸長を抑制する作用があり, サトウキビの生長を抑制したが, クロロフィルを減少させる作用は認められなかった.その結果, KUH833処理により蔗茎中のブリックスを高める効果が認められた.しかし, その効果はグリフォセートに比べ低かった.その原因として1茎当たりグリフォセート4mg処理の生長抑制期間が6週間続くのに比べ, KUH833の2mgおよび5mg処理ではそれぞれ2~3週間と短く, その後に再生長があるためと考えられた.本実験のような高温多湿条件下ではサトウキビの登熟を促進するには, 少なくとも6週間を要するものと推定され, 生育抑制期間を延ばすためにKUH833の処理濃度について再検討する必要を認めた.
  • 東 哲司, 三原 富美子, 内田 直次, 安田 武司, 山口 禎
    1990 年 34 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    深水下における浮稲の節間伸長と内生エチレンとの関係について調べるために, バングラデシュの浮稲品種Habiganj Aman IIの茎切片を用いて, 深水処理の水位と節間空隙内のエチレン量及び節間・葉の成長との関係について調べた.
    まず水圧と節間伸長との関係を明らかにするために, 茎切片を横方向に固定し, 水位を100cmまで段階的に変えて深水処理を行った.深水処理により節間は伸長したが, 水深の程度に応じては伸長は促進されず, 節間伸長の促進の差は水中か気中にあるかによる違いだけであった.
    茎切片を縦方向に固定し, 水位を段階的に変える処理を3日間行った.節間の伸長は, 処理開始時に茎切片が水面下にある区で著しい促進が認められた.節間空隙内のエチレン濃度は, 処理終了時に茎切片が水面下にある区で高くなった.
    次に, 茎切片に5日間深水処理を行い, 節間と葉の伸長量および節間空隙内のエチレン濃度を経時的に調査した.深水処理により節間内のエチレン濃度は増加したが, 茎切片の一部が水面上に出ることによりエチレン濃度は減少した.一方節間の伸長は, 深水処理により促進されたが, 茎切片の一部が水面上に出て節間内のエチレン濃度が減少したにも関わらず節間の伸長促進は変化しなかった.
    以上により, 深水下での浮稲の節間伸長の促進は, 水圧の影響は受けず, 水中でのガス拡散の低下による組織内でのエチレン濃度の増加が要因の一つと考えられる.また, 急激な節間伸長にとってエチレンは引金的役割をしているのかもしれない.
  • 東 哲司, 三原 富美子, 内田 直次, 安田 武司, 山口 禎
    1990 年 34 巻 4 号 p. 271-275
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    深水下での浮稲節間の急速な伸長における各種植物ホルモンの役割を調べる目的で, バングラデシュの浮稲品種Habiganj Aman IIの茎切片を用いて, 異なる濃度のジベレリン酸 (GA3) ・アブシジン酸 (ABA) ・ベンジルアデニン (BA) ・インドール酢酸 (IAA) で処理した時の節間の伸長量の変化, 並びに深水とエチレン処理による内生ジベレリン含量の変化について調査した.
    処理した植物ホルモンの中で, 単独のホルモン処理によって節間の伸長を促進したのは, GA3だけであった.IAAは, 10μMのGA3と共に与えると, 10μM以下の濃度でGA3による節間伸長を相乗的に促進した.高濃度のABA・BA・IAAはGA3による節間伸長促進作用を抑制した.
    矮性イネ (短銀坊主) を用いる検定法で内生ジベレリン含量を測定した結果, 深水及びエチレン処理によって有意に節間の伸長が促進されたにも関わらず, 深水処理を行った茎切片の内生ジベレリン含量は増加したが, エチレン処理した茎切片での増加は認められなかった.
    以上の結果より, 深水下での急速な節間伸長に関与する植物ホルモンとして, エチレンとジベレリン以外にIAAも考えられる.さらに, 深水下における浮稲の節間伸長において, ジベレリンとエチレンとは異なる作用過程を通じて関与していることが示唆される.
  • 花田 毅一, 香川 邦雄, 横山 靖子, 野村 真一
    1990 年 34 巻 4 号 p. 276-283
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    浮稲の生育中, 深水によって主茎の葉鞘が水没すると, その葉鞘の葉腋にある分げつ芽の生長が抑制される.深水下の葉鞘水没による分げつ芽の生長抑制の機構を探る目的で三つの実験を行った.第1実験及び第2実験では, 葉齢5又は6以降, それぞれ第4葉又は第5葉の葉鞘を先端まで水没させる深水処理を行った深水対照区と, 同じ深水条件下で第4葉葉鞘と第5葉葉鞘間の間隙 (第4節分げつ芽が生長する空間) 又は第5葉葉鞘と第6葉葉鞘間の間隙 (第5節分げつ芽が生長する空間) の分げつ芽の先端付近の位置に注射針を用いて通気を行った (図1参照) .その結果深水対照区では伸長中の葉身及び葉鞘の伸長が促進され, 葉鞘が水没した葉の葉腋の分げつ芽は生長が強く抑制されたが, 葉鞘間の間隙に通気した区では, 葉身, 葉鞘の生長が抑制されるとともに, 通気を受けた分げつ芽及びその1節下位にある分げつ芽の生長が著しく促進された.特に1節下位の分げつ芽の生長促進が著しく, 浅水対照区に優る生長を示した.
    第3実験では, 浅水下で葉齢6の時期に第5葉葉鞘中肋部の基部を切開し, 小窓をあけて第5節分げつ芽 (平均長1.4mm) を水中に露出させた区, 及び同様に水中に露出させた分げつ芽に, 下方に設置したパイプの小孔を通じて通気した区を設けて, 分げつ芽の生長を観察した (図2参照) .対照として無処理の浅水対照区と深水対照区 (第5葉葉鞘水没) を設けた.その結果浅水状態でも水中に露出させられた生長初期の分げつ芽は, 生長を著しく抑制されほとんど生長を停止した.水中に露出した分げつ芽に通気をすると, その分げつ芽の生長が僅かながら有意に促進され, また1節上位の分げつ芽の生長が著しく促進されて, 浅水区に優る生長をした.
    これらの実験結果から, 主茎葉鞘内で生長中の若い分げつ芽の生長には空気恐らく酸素の供給が必要であること, 葉鞘先端まで水没するとその葉鞘の内側の間隙と外気間の通気が妨げられ, 酸素の不足もしくはエチレンの蓄積が起こり, それによって分げつ芽の生長が抑制されるものと推測した.しかし, エチレンの関与については, この実験内容からは言及することができない.今後の研究課題である.
  • 松永 英輔, ドメトン チヤチヤイ, ボリボーン マリー, スミチナンド テム
    1990 年 34 巻 4 号 p. 284-288
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    プラウノイ栽培園においては, 栽培樹 (Croton sublyratus KURZ) に根腐れを生ずる根腐病 (Fusarium spp.) の発生がしばしば認められる.現在までの防除対策は耕種的防除法と化学的防除法が採用されてきた.
    最近, プラウノイの近縁種であるプラウヤイ (Croton oblongifolius ROXB.) がその根腐病に対して高い抵抗性をもつことが知られた.著者らはそれを確認するため, プラウヤイ台木にプラウノイを接木して, 台木が穂品種の生育や葉中成分に及ぼす影響を調査した.その結果は次のように要約される.
    1. 葉中成分としてプラウノトールを含有しないプラウヤイ台木に接木したプラウノイ樹は無接木樹と同様に生育シーズンを通して (5月から12月まで) 葉中にプラウノトールを含み, その含量に大きな変化はなかった.
    2. 接木樹は無接木樹にくらべその生長が早く, プラウヤイ台木は接木樹の樹勢を強くする特性をもつものと考えられた.
    3. 根腐病感受性のプラウノイと抵抗性のプラウヤイ台木は高い接木親和性を示した.このことはプラウノイ栽培における根腐病回避に, プラウヤイ台木の利用が有効であることを示す.
  • 鍵渡 徳次
    1990 年 34 巻 4 号 p. 289-291
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 第1報 調査地の概要とサゴヤシ林の自然環境
    下田 博之, パワー A.P.
    1990 年 34 巻 4 号 p. 292-301
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    1982年より85年の間にパプアニューギニア東セピック州のセピック河流域に分布するサゴヤシ林の生育環境, 生育状態とその生育特性, 澱粉生産性などについて実態調査をもとに研究した。第1報では調査地の概要とサゴヤシ林の土壌・植生・気象環境等について報告する.
    本調査地域には約40万haのサゴヤシ林が分布するが, その大半は野生林でその一部に多収種の群落がある.サゴヤシは河岸堤防上, 湖・ラグーンの岸辺, 河口に下る低湿原等に生育し, その植生は 1) sago palm phragmites swamp 2) sago palm swamp 3) Sago palm forestの3種に区別された.それらの中でsago palm forestのサゴヤシが最も有用性が高いことが知られた.
    土壌は沖積湿地のhydraquents, fluvaquentsおよびhistosolsに属し, 調査地林では年間地下水位が地上50~60cmから地下1~2mの間を上下移動することが知られた.調査地域のサゴヤシ林は海岸から約15kmの汽水域から約100km上流の淡水域までに多く分布するが, そのほとんどの林は淡水域に属した.
    気象環境は熱帯雨林気候に属し, 林内は樹冠で太陽光が遮られ, 気温・地温とも裸地より低く推移した.
  • 平間 正治
    1990 年 34 巻 4 号 p. 302-310
    発行日: 1990/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 1990 年 34 巻 4 号 p. 313
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
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