アブシジン酸 (ABA) の種子浸漬濃度の相違がアマランサスの生育・収量に及ぼす影響について検討した.
ABAの処理濃度は0, 0.1, 1, 10, 100および1, 000ppmの6段階とし, 種子浸漬処理を30時間行った.その結果,
(1) 地上部の生長への影響についてみると, ABA低濃度処理区は, 種子発芽や生育初期の草丈, 生葉数, 生葉重, 基部茎径および主茎重が促進された.しかし, ABA高濃度処理区の1, 000ppm区では, 種子発芽や初期生育が抑制された.なお, 高濃度処理区では, 生育後期に急激に伸長し, いずれの区より生育が勝った.
(2) 地下部の根系についてみると, いずれのABA処理区も対照区より根の生長は促進され, 処理濃度の高い区の根の生長や側根の発生が著しかった.
(3) ABA種子処理は, アマランサスの葉の葉緑素濃度を高めた.なお, ABA処理濃度の高い区ほど葉緑素濃度が高く保持され, 生育後期の下葉の枯れ上がりも少なかった.
(4) ABA種子処理は, 生育後期の基部茎径の肥大と根系の発達により倒状防止に効果的であることが示唆された.
(5) アマランサスの穀実収量は, いずれのABA処理区も対照区より増収した.特に100, 1, 000ppm区は対照区より, 27.4%, 42.2%それぞれ増収した.
以上の結果, 従来ABAは植物の生長を抑制するホルモンとされており, 本研究におけるアマランサス種子へのABA高濃度処理では, 発芽及び初期生育の生長抑制がみられた.しかし, ABA低濃度種子処理区では, 生育初期から生育後期まで地上部および地下部の生長を促進した.従って, ABAの植物に対する効果は生長抑制のみではなく, 低濃度の処理では生長を促進することのあることが明らかになった.
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