熱帯農業
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39 巻, 4 号
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  • アグバム ジョセフ U.
    1995 年 39 巻 4 号 p. 213-222
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, ナイジェリア ラゴス州のイコロドゥ 自治区における11の土壌管理技術の採用状況と採用に及ぼす要因について検討したものである。
    サンプルは, イコロドゥ自治区の8つの村から160人の農業者を社会の様々な階層別に無作為的抽出を行い, 質問票によるアンケート調査によりデータを得た。
    その結果, 土壌管理技術に関する農業者の知識の程度と技術の採用とは正の相関にあり, 技術革新においても最も大きな影響を及ぼすことが明らかになった。
    なお, 普及員との接触は表4に示される11種の土壌管理技術の採用に有意な影響を及ぼすとおもわれたが, この場合, 高い相関は認められなかった。この驚くべき結果の理由は, 普及貝が作物生産の側面にのみ集中して土壌管理技術の詳細の情報普及を軽視したからである。
    その他, 見出だされた主な事項を挙げれば, 以下の通りである。
    (1) 土壌保全にとって重要な有機質肥料の施肥技術については, 採用率が0.51%であり, 採用度は最も低かった。
    (2) 行動半径の程度と技術に関する知識との間には正の相関が認められた。
    (3) リーダーシップと技術に関する知識の間には有意な正の相関が認められた。
    技術革新した農業者の平均値は3.1 (31%) であった。農業者の平均年齢は38歳で, 彼等の教育水準は低く, 経営耕地面積の平均は2.4haであった。
    本研究は, イコロドゥ村における技術革新の採用状況と土壌の肥沃度は, 農業普及の在り方と新しい土壌管理技術を受容する農業者の特徴の程度に依存していると結論することができる。
    以上の結果から, イコロドゥ自治区においては普及員はテレビやラジオを通じて, 土壌管理技術に関する知識や情報を農業者に伝えると共に, 圃場において実際的な訓練を行うことが望ましいと考えられる。
  • 豊田 正範, ラリナガ フアン, 有吉 誠志
    1995 年 39 巻 4 号 p. 223-228
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    メキシコ, 南ババ・カリフォルニア州で栽培されているトウガラシ8品種を用い, 乾物生産および水利用効率の品種間差を調査した。処理ζして毎日の蒸発散量を灌水する無処理区とその40~50%を灌水する乾燥区を設けた。処理は定植後48日目から2週間にわたって行った。処理期間中の個体当り乾物増加量と水利用効率には大きな品種間差が認められた。乾物増加量の品種問変異係数は対照区21.4%, 乾燥区31.5%であり, 水利用効率のそれは対照区17.9%, 乾燥区31.5%で, 乾燥区においてより大きな品種間差が存在した。水利用効率と乾物増加量との間には, 処理別, 処理こみともに有意な正の相関が認められた。水利用効率はまた, 純同化率 (NAR) と密接な正の相関を示した。このように, 乾物増加量の品種間差はストレスの有意に関わらず水利用効率を介してNARに強く規制され, NARの高い品種ほど水利用効率が高く, 乾物増加量は多かった。NARは, 対照区では処理期間中の積算蒸発散量/同個体当たり平均葉面積比 (ET/LA) と強い正の相関を示し, ET/LAの大きい品種ほどNARは高かった。しかし, 乾燥区ではNARとET/LAの間に有意な相関関係は認められなかった。そこで, ET/LAと処理期間中の個体当たり非同化器官乾物重/同平均葉面積比 (CW/LA) を用いた重回帰分析を行ったところ有意な重相関係数が得られた。ET/LAとCW/LAは約3: 2の割合でNARに関与しているとみられ, 乾燥区ではET/LA力状きく, CW/LAが小さい品種においてNARが高くなった。これらにより, 水ストレスを受けない場合, NARの品種間差は光合成速度によって決定されるが, 水ストレスを受ける場合はその他に呼吸に関わる要因等も影響すると推察された。
  • ブーンセルムスク スミット, 久島 繁, 石塚 晧造
    1995 年 39 巻 4 号 p. 229-235
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    一般に形態的に分類されているサゴヤシは分類に訂正の必要があると指摘されてきた。今後品種の検討, 分類の確定, 育種等を考えると, 生化学的, 分子生物学的あるいは交雑等を加味した変異の研究が必要になると考えられる。タイのサゴヤシは栽培型が知られておらず, 形態学的指標からM.sagas ROTBOLLと分類されている。今後, 分類学的位置の確定, 栽培型の確立, 他国のサゴヤシとの類縁関係の特定等を考えると, 変異の研究が必要と考えられた。そこで, 今回, タイのサゴヤシの生化学的な変異をザイモグラムの面から検討した。
    タイ南部の15のサゴヤシ集団から合計90検体を収集し, 5種のアイソザイム分析に供した。濃いバンドをもとにパターンを比較したところ, 生育地別には傾向が見られなかった。そこで90検体を一括して検討した。パーオキシダーゼとエステラーゼのゲル電気泳動のザイモグラムのパターンは各1種であった。酸性フォスファターゼのゲル電気泳動のザイモグラムパターンはタイプ1と2の2種で, 87%が前者に属していた。ソルビトールデヒドロゲナーゼのゲル電気泳動のザイモグラムパターンはタイプ1から3の3種で, 95%がタイプ1に属していた。エステラーゼの等電点電気泳動のザイモグラムパターンは1種であった。また, 全検体の80%がゲル電気泳動のパーオキシダーゼタイプ1, エステラーゼタイプ1, 酸性フォスファターゼタイプ1, ソルビトールデヒドロゲナーゼタイプ1および等電点電気泳動のエステラーゼタイプ1のザイモグラムパターンを示した。
    これらの結果からこれらのサゴヤシのアイソザイムの変異は小さく, 形質が似ていること, およびこれらが少ない個体から増殖した可能性が示唆された。この示唆は古来サゴヤシはサッカーによる増殖法が一般的であることと考えあわせると興味深い。
    サゴヤシを含む10種のヤシの上記5種のザイモグラムを比較すると, サゴヤシが他のヤシと区分可能と考えられた。同時に, 任意に選定した10種のヤシは相互に区分が可能と考えられた。
  • 関本 均, 深見 元弘, 岸本 修
    1995 年 39 巻 4 号 p. 236-239
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    乾燥や高温による苗の活着率の低下や乾季における幼木の生育不良などの改善は, 乾燥地のみならず熱帯雨林の造林においても必要である。そこで土壌の保水力を向上させる高吸水性樹脂と生長の抑制のみらなず水ストレスの軽減効果が報告されている生長抑制剤を用いて, 熱帯の造林用樹木苗3種類の水利用効率の向上について検討した。いずれの樹種でも高吸水性樹脂または生長抑制剤によって生存日数は明らかに延長され, 両者の組み合わせでさらに伸びた。高吸水性樹脂による生存日数の延長は, 土壌の容水量の増大に基づき, 生長抑制剤においては, 葉面積の縮小による蒸散量の減少に起因するのではないかと考えられる。アカシアマンギウムでは, 高吸水性樹脂および生長抑制剤処理によって1日当たりの平均水消費量は減少して水利用効率は向上し, 両者の組み合わせでその効率はさらに向上した。このように高吸水性樹脂と生長抑制剤を用いることで, 熱帯の造林用樹木苗の水利用効率の向上が図られる可能性が示唆された。しかし, 樹種によっては, 高吸水性樹脂で容水量が増加してもその分を浪費しやすく, 水利用効率が低下する場合があった。蒸散量の多い樹種では生長抑制剤による葉面積の減少作用が水の利用効率を向上させるのに有効であるが, 容水量の増大はその向上にあまり寄与しないと推察できる。生長抑制剤は苗の徒長抑制にも利用できるが, それを処理した苗の生長の回復を確認するとともに, 生長抑制剤の最適処理量を今後検討する必要がある。
  • 山田 雪乃, 杉本 義行, 菊池 眞夫
    1995 年 39 巻 4 号 p. 240-246
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    スリランカの稲作における農家の技術選択を規定する要因を, 県別データを利用し, 耕耘・稲仕立・除草の各作業についてそれぞれ技術採用関数を計測することにより検討した。主要な説明要因として, 稲作賃金率・作付規模・灌漑比率・植民農民による技術移転・近代品種作付率・稲仕立法・気温を選択し, さらに地域・作季・年次についてのダミー変数が用いられた。計測結果は, 賃金率ないし作付規模が採用技術の地域差を規定する有意な要因であることを確証するものであり, 農家の技術選択が, その表面上の多様性にもかかわらず, 誘発的技術変化の理論が予想する「適正技術」と整合的であることが明らかにされた。灌漑・技術移転・近代品種・稲仕立法は特定の作業についての技術採用関数で有意な規定要因であることが見出された。しかし, これらの要因以外に, 幾つかの地域についてのダミー変数が有意な係数を示し, 重要な地域的要因が特定されずに残されていることが示唆された。
  • 高垣 美智子, 柿沼 瑞穂, 伊東 正
    1995 年 39 巻 4 号 p. 247-249
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • IV. 品種育成と社会経済的効果
    河野 和男
    1995 年 39 巻 4 号 p. 250-259
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    アジア各国の育種プログラムによるCIAT関連のキャッサバ奨励品種は, 1984年のタイのラヨン3号に始まり, 現在では24を数えている。またpre-releaseされた系統で, そのまま農家の栽培にまかせられているものは更に多数である。初期の品種は, CIATの選抜系統がそのまま奨励品種になったものも多かったが, 最近ではCIATの交配親を使った材料からの現地選抜の品種の割合が, 高くなりつつある。これら品種の交配親の出身国は, ラテンアメリカを中心に, 10ヶ国以上にわたっており, 国際ネットワークによる育種を物語っている。ラヨン3号, ラヨン60号とインドネシアのアディラ4号が, それぞれ5万ha以上の栽培面積に拡がっており, 奨励品種全体の栽培面積は目下30万haを越えたところと推定されている。これら品種による付加経済価値は, タイ, インドネシア, 中国, フィリピンの4国に於いて, 第一次産品の農場価格だけで, 1987-93年の7年間に128百万米ドル規模に達していると推定される。これは, それぞれ11.3百万米ドル, 5.5百万米ドルと推定される, CIATキャッサバ育種プログラムとこれらアジア主要4ヶ国のキャッサバ育種プログラムの過去20年間の経費を, はるかに上回るものである。この過程を通じて, タイ, 中国, インドネシア, ベトナム, フィリピン, マレーシアのキャッサバ育種プログラムは着実に力をつけた。作物の遺伝子資源の改良と利用を, 熱帯諸国の育種プログラムと共に進めるという, 国際農業研究機関 (CGIAR) の役割を, この遅れて来た作物キャッサバでも, ささやかながら果しつつあると考える。
  • 松谷 広志
    1995 年 39 巻 4 号 p. 260-263
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 西山 喜一
    1995 年 39 巻 4 号 p. 264-270
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 相馬 州彦
    1995 年 39 巻 4 号 p. 270-278
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 山田 明
    1995 年 39 巻 4 号 p. 278-283
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 尾畑 〓英
    1995 年 39 巻 4 号 p. 283-286
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 39 巻 4 号 p. 287-292
    発行日: 1995/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
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