熱帯農業
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39 巻, 1 号
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  • ラックガーン チャトウラポーン, 弦間 洋, 岩堀 修一
    1995 年 39 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    タイの北部高原における日本ナシ栽培について調査した.主要な問題の一つは不十分な低温や高い栽培気温によって休眠が打破されず, 発芽や開花が不規則で少ないことである.花芽着生の問題の解決のいとぐちを得るため, ビニールハウスの高温条件下で栽培された日本ナシ‘幸水’の開花習性を調べ, 着花増加の方策を見いだすため実験を行った.花芽分化は発育枝のえき芽で早くも5月に認められ, これは露地の樹より一か月以上早かった.この場合, 長い発育枝において短い枝より多くの花芽が観察された.アブシジン酸とパクロブトラゾール処理はハウス下と露地栽培の樹の枝の栄養生長を抑制し, 着花を増加した.パクロブトラゾールは露地よりもハウス下の樹で着花増加の効果が高く, これに対してアブシジン酸は露地の樹のおいて着花効果が高かった.タイにおいて, 日本ナシの着花を増加させるために, 生長調節物質を処理する可能性について考察した.
  • 白石 正明, 松本 久夫, オヘダ ネルソン, フランコ パブロ
    1995 年 39 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ボリビア・サンタクルス州の焼畑農業では, 雑草の繁茂が, 陸稲生産上の障害になっている.しかし, 雑草生態や防除技術の研究はほとんどない.本研究では実際に焼畑における雑草の生態について調査した.
    初年度の夏季作の焼畑では, 広葉雑草とイネ科雑草が繁茂した.冬には広葉雑草とイネ科雑草は枯れ, 再生木の枝葉が優先化した.
    一般に, 焼畑の初年度は雑草防除が容易とされているが, 初年度でも注意深く, 雑草を防除しないと, 雑草が繁茂し, 稲の生産を著しく低下させる可能性が示唆された.
    熱帯型雑草に対する除草剤の効果についてはStanpyr乳剤の殺草効果が高いことを明らかにした.
  • 第1報 成木園茶樹の夏期における剪定および断根同時処理がその後の生育に及ぼす影響について
    高橋 登美雄, 廣瀬 友二, 西山 喜一
    1995 年 39 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    茶樹の樹勢更新技術には, 浅刈り, 深刈り, 中切りなどの剪定方法がある.また, 深耕による土壌改良も樹勢更新に有効とされるが, 一般に断根を伴うため著しい樹勢劣化を招く場合が多い.そこで, より効果的な樹勢更新技術を確立することを目的として, 20年を経過し樹勢の低下した茶樹を供試し, 剪定と断根処理が樹勢回復に及ぼす影響を検討した.
    1.地上部の生育および収量に及ぼす剪定の効果は良好であった.断根処理は初年度の樹勢を抑制したが, 3年目以降は回復した.
    2.剪定と断根を併用することにより, とくに葉層が厚くなり, 葉の大きさが増大した.
    3.このような剪定単用処理では枯枝が多く発生し, 徒長枝が多発するため摘採面が不揃いとなったが, 断根処理を組み合わせた区では軽減された.
    4.剪定と断根処理の併用によって, 剪定単用処理に比べ収量の回復が早く, 新芽の品質が向上した.
  • 深沢 和広, 大石 惇
    1995 年 39 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    乾燥地において, 周年にわたりさし木可能な装置を開発する目的で, 不織布で密閉し, 中にミスト装置を組み込んだ装置内でさし木を行い, 装置内の日中の温・湿度の変化と発根との関係を, 従来の密閉ざし及び対照区と比較調査した.1. 乾燥地におけるさし木繁殖には密閉ざしが有効であること, 2. 密閉条件下で高い湿度条件が保持されれば, さし穂は35~40℃の高温に長時間耐えること, 3. 日中, 定期的に起こる大きな温度及び湿度の較差に遭遇しても, 夜間の高湿度条件が保たれればさし穂の生存及び発根に影響は見られないこと, 4. 1分間のミスト噴霧で温度が5℃以上低下し, 約40分間持続すること, が明らかになった.このことから, 試作した密閉ミスト装置は, 乾燥地における盛夏期のさし木繁殖装置としての適応性が確かめられた.しかし装置内のより安定した温・湿度の保持には不織布の材質や厚さ, ミスト粒の細かさ, 噴霧間隔等の検討が必要である.
  • 道山 弘康, 山本 良三
    1995 年 39 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ヒマにおける種子1粒重の決定経過を知るために, 開花期を記録した果実の種子を用いて大きさおよび重さからみた種子の生長経過を明らかにした.種子は開花後にまず長さ, 幅および厚さが増大し, それに伴って生体重も大きくなった.この時期の乾物重増加は少なく, しかもそのほとんどが種皮の増加によっており, 胚乳部分はほとんどが水分であった.種子の肥大がほとんど終了した後に種子の乾物重が急速に増加した.この時期の乾物重増加のほとんどが胚乳の増加によっていた.登熟期の気温が高くなると, 種子の大きさおよび重さの増加速度は速くなったが, 増加期間が短縮されたため, 最終的には小さくて軽い種子ができた.本実験の条件下で, 種子の大きさは開花期以降10~20日間に増加して決定し, 種子および胚乳の乾物重は種子の大きさの決定期以降15~25日間に著しく増加して決定することがわかった.果房内の種子1粒重の決定経過は, 上記事実と1果房内におけるそれぞれの花の開花期のずれを併せ考慮すれば良いと思われた.
  • ワヒュウノ ドノ, 小林 享夫, 鬼木 正臣
    1995 年 39 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    インドネシアのジャワ島東部において, 繊維作物カポックの苗木および若木に, 褐斑病 (新称) の激しい発生を認めた.病原学的および菌学的検討の結果, 病原菌はPseudocercospora italica (CURZI) DEIGHTONと同定された.本菌はPDA培地上で13℃から30℃の間で生育し, 適温は20~24℃の間にある.培地上における分生子の人工的産生を試みたが, 成功しなかった.人工接種試験によれば, 本病菌の潜伏期間は4週間である.
  • 第1報 塊茎による生物検定法
    張 光鎭, 林 満
    1995 年 39 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ヤムイモ (Dioscorea alata L.) の無菌茎断片に塊茎を作出し, この塊茎の生長量から植物ホルモンの活性の検出ができるものと考え, ヤムイモ塊茎肥大に関与する未知の植物ホルモンの生物検定に利用できる塊茎の作出法について検討を行った.
    植物ホルモンおよびしょ糖を添加したMS培地でヤムイモの無菌茎断片を培養すると茎断片にミニ塊茎が形成された.このミニ塊茎形成に対するホルモンの種類と濃度, しょ糖濃度および光条件等の影響を調べた.ミニ塊茎の形成は, ホルモン添加によって促進され, 形成率は, NNA1mg/lを添加した培地で最も高率であった.しょ糖濃度を上げると形成率が上昇し, 6%で最高に達した.ミニ塊茎の形成率に対して最も著しい影響を及ぼした要因は, 光条件であり, 暗黒条件下での形成率は, 明条件下のそれを大きく上回った.そして, 暗黒下では, 腋芽は萌芽せず, 茎断片に塊茎のみが形成され, 照明下では, 塊茎と茎葉がほぼ同時に形成された.種々のホルモンを培地に添加して, 塊茎形成の促進効果を比較したが, いずれのホルモンにもNAAを上回る効果はみとめられなかった.
    以上の結果から, ミニ塊茎の形成に最適な培養条件は, NAA1mg/l, しょ糖60g/lを添加した1/2MS培地に無菌茎断片を置床し, 25℃の暗黒条件下に30日間置くものであった.そして, このミニ塊茎は, ヤムイモ塊茎の肥大生長に関与する物質の活性の検出に利用できるものと推察された.
  • I. ギンネム種子中のガラクトマンナンのコレステロール低下作用
    パクディー パワディー, 金城 一彦, 田幸 正邦, 本郷 富士弥, 冨田 裕一郎, 屋我 嗣良
    1995 年 39 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ギンネム (Leucaena leucocephala) は生産性が高いことから熱帯地域における有用な植物資源である.それは, タンパク質やカルシウム含有量が多いことから飼料や肥料等として利用されている.飼料や肥料として葉や茎が使用され, 種子についてはほとんど利用されていないのが現状である.ここではギンネムの有効利用を目的として種子中の多糖類に着目し, ギンネム種子から抽出したガラクトマンナンを高コレステロール食に添加してラットに投与し, 血清と肝臓のコレステロール濃度の低下作用及び消化器官に及ぼす影響について検討した.その結果, 血清総コレステロール濃度, 肝臓コレステロール濃度はガラクトマンナン (2%, 5%添加) , グアガムの投与区で低下し, 5%ガラクトマンナン投与の効果は5%グアガム投与とほぼ同様であった.各投与間で血清トリグリセライド, 血清リン脂質濃度は有意差は認められなかったが, 超低比重リポタンパク質 (VLDL) +低比重リポタンパク質 (LDL) コレステロール濃度は著しく低下した.ガラクトマンナン, グアガムの投与区で体重当りの肝臓重量は減少し, 小腸+大腸+盲腸の重量は増加した.小腸の長さは著しく長くなり, 特に5%のガラクトマンナンの投与でその効果が著しい.
  • I. 遺伝資源の収集・利用と育種体制の確立
    河野 和男
    1995 年 39 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 1995/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    熱帯の大作物キャッサバ (Manihot esculenta CRANTZ) は, 農学研究先進地の温帯諸国には全くなじみのない作物であるのと, 熱帯でも小農がやせ地で作り貧乏人が食べる作物との伝統的なイメージが手伝って, 過去に組織的な研究の対象になる事は少なかった.食料としての重要性と, 加工性の高さから, 近年アフリカ及びアジアでの生産の増加が著しく, 原産地南米のコロンビアのCIATに世界を対象とする育種プログラム, アフリカ, ナイジェリアのIITAにアフリカを対象とする育種プログラムが1970年代初頭に設立された.その後, ようやく各国の育種研究体制も設立整備の方向に向かいつつある.アジアのキャッサバについては, CIATのアジア支所がタイ国研究機関と共同で基礎育種材料の育成を行い, 各国育種プログラムはこの育種材料を利用して育種を進めるという研究ネットワー久役割分担が効率よく進みつつある.ここから生まれた品種のいくつかは, タイ国, インドネシア等でそれぞれ数万ヘクタールに栽培面積を延ばし, 社会経済的効果を上げるところまで到達しでいる.この間, 実際の育種遂行にCIAT側も積極的に加わる事により各国育種プログラムの育種能力は着実に向上した.著者はこれらのほぼ総ての過程に加わる事が出来た.
    本報文シリースでは, この仕事の奥行きと広がりを, 熱帯で農業技術協力プロジェクトに従事する研究者および技術者や, これから熱帯農業研究にたずさわる次代の農業技術者に, 経験を通して伝える事が目的である.
    初回はコロンビアCIAT, タイCIATの育種プログラムを, 遺伝資源の収集保全及び有用性検定とその利用を通じて紹介した.
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