ヤムイモ (
Dioscorea alata L.) の無菌茎断片に塊茎を作出し, この塊茎の生長量から植物ホルモンの活性の検出ができるものと考え, ヤムイモ塊茎肥大に関与する未知の植物ホルモンの生物検定に利用できる塊茎の作出法について検討を行った.
植物ホルモンおよびしょ糖を添加したMS培地でヤムイモの無菌茎断片を培養すると茎断片にミニ塊茎が形成された.このミニ塊茎形成に対するホルモンの種類と濃度, しょ糖濃度および光条件等の影響を調べた.ミニ塊茎の形成は, ホルモン添加によって促進され, 形成率は, NNA1mg/
lを添加した培地で最も高率であった.しょ糖濃度を上げると形成率が上昇し, 6%で最高に達した.ミニ塊茎の形成率に対して最も著しい影響を及ぼした要因は, 光条件であり, 暗黒条件下での形成率は, 明条件下のそれを大きく上回った.そして, 暗黒下では, 腋芽は萌芽せず, 茎断片に塊茎のみが形成され, 照明下では, 塊茎と茎葉がほぼ同時に形成された.種々のホルモンを培地に添加して, 塊茎形成の促進効果を比較したが, いずれのホルモンにもNAAを上回る効果はみとめられなかった.
以上の結果から, ミニ塊茎の形成に最適な培養条件は, NAA1mg/
l, しょ糖60g/
lを添加した1/2MS培地に無菌茎断片を置床し, 25℃の暗黒条件下に30日間置くものであった.そして, このミニ塊茎は, ヤムイモ塊茎の肥大生長に関与する物質の活性の検出に利用できるものと推察された.
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