熱帯農業
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41 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 志水 勝好, 上田 堯夫, 加藤 盛夫
    1997 年 41 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    塩水処理栽培がアッケシソウ植物体地上部と, 種子の化学成分組成にいかなる影響を及ぼすかを調べ, アッケシソウの飼料作物的利用の可能性につき検討した.実験1では草丈が10~15cmに生育したアッケシソウを用い, 培養液にNaClを加え, 0.3, 3及び8%として約2ヶ月間塩水処理栽培を行った.その後植物体地上部の化学成分組成を調べ, 以下の結果を得た. 1.塩水処理区では粗灰分が乾物重の50%を越え, 粗蛋白質, 粗繊維共に対照区と比較して低下した. 2.イネ科飼料作物に比べ粗繊維は少なく, 粗蛋白質含有率は高い傾向が見られた.3.他の植物では生育が困難な8%NaCl培養液での処理栽培が可能であった.実験2では, 実験1と同様に栽培したアッケシソウが開花し, 結実するのを待ち, 収穫し, 種子の化学成分組成を調べ, 以下の結果を得た. 1.灰分含有率は地上部と比較し低く, また粗脂肪の含有率が高かった. 2.飽和脂肪酸の割合がダイズに比べ高かった. 3.対照区に比べ3%NaCl区の粗脂肪含有率は有意差が見られず, 8%NaCl処理区は対照区の約60%以上の粗脂肪含有率を示した.以上の結果から, 塩の影響を受けて油料作物, マメ科作物の栽培が困難な地域で, それらに代わる作物としてアッケシソウの栽培が有効であると考えられる.
  • スクサード パドウンサック, 片岡 郁雄, 藤目 幸擴, スパッタラパン スラナン
    1997 年 41 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    In vitroでのパパイアシュートの保存条件を明らかにするため, 温度の低下, 生長抑制物質の添加および浸透ポテンシャルの上昇による生長抑制を試みた.16℃以下の低温はシュートの生長を著しく抑制した.16℃で維持したシュートでは, 12カ月後においても生存率が高く, 再生長の能力を有していた.30g・l-1から60および90g・l-1への培地のショ糖濃度の上昇は, 外植体の低温に対する耐性を増加させなかった.供試した生長抑制物質の中では, ABAがシュートの保存に最も適しているものとみられた.5μMのABAを添加して, 12カ月間貯蔵したシュートの生長は効果的に抑制され, シュートの再生長も十分に維持された.浸透ポテンシャルの調整によるシュート生長の抑制には, 20g・l-1までの寒天濃度の増加がマニトールの添加より効果的であった.高い濃度のマニトール添加培地で貯蔵したシュートでは著しい水浸状化が認められた.
  • 林 幸博, カースー ロバートJ
    1997 年 41 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    西アフリカの湿潤サバンナ帯における固有樹木の葉をマルチ材として利用しようとする際, それらの葉の浸出液による作物に及ぼす植物毒性の影響が懸念される.本研究では, 30樹種の葉の水浸出液がダイズ, ササゲ, トウモロコシ, ソルガム, そしてミレットの各2品種の作物の発芽と生育に及ぼす影響を, ペトリディッシュ及びポット試験によって検討し, マルチ材に適した樹種のスクリーニングを行った.その結果, ペトリディッシュ試験において作物の発芽率を25%以上抑制した樹木葉は, トウモロコシに対しては7種, ミレットでは17種, ソルガムで15種, ダイズが4種, ササゲは9種あり, ミレットとソルガムに発芽抑制として働く樹種の多いことを認めた.一方で, 発芽促進効果をもつ樹種もあった.ポット試験の結果は, 必ずしもペトリディッシュ試験の結果と一致しない場合も見られたが, 供試作物の乾物重を25%以上減少させた樹種は, ダイズで21樹種の内3種, ササゲで4種, トウモロコシでは7種あった.また, 乾物重を25%以上増加させた樹種はダイズで10種, ササゲが11種, トウモロコシでは5種あった.とりわけ, Erythrophleum suaveolenseCornbretum molleの葉の浸出液中には発芽及び生長抑制因子が存在するものと推察された.以上の結果から, 樹木葉をマルチ材として利用する際には, 栽培作物との適合性を考慮した樹種の選抜が必要となろう.
  • 早道 良宏
    1997 年 41 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    温室内において1/2000aプラスチックポットで5か月育成した品種NCo310のサトウキビ植物体20個体を用い, その葉部に1, 5および10ppmのアブシジン酸 (ABA) の水溶液を十分に噴霧し, サトウキビの生育および糖蓄積に及ぼす影響について検討した.処理後2週間にABAの葉面散布によって上位巻葉部の伸長促進が認められ, その効果は10ppmが最も大であった.葉部伸長後に伸長を始める茎節間の伸長を示す仮茎長の生育は, ABA処理後8週間にABA処理濃度の高いほど大であった.処理後8週間に調査した茎中ブリックスは, 無処理のサトウキビに比べ, いずれもABA処理により15.5~20.9%増大した.ABA処理により根系の発達および根の活性を高めることが推察された.
  • 豊田 由貴夫
    1997 年 41 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    パプアニューギニア, セピック地域の農業に関して, 過去いくつかの開発案が提示されてきたが, 最近, サゴヤシを生業の中心とする低湿地に対する総合的な農業開発の計画案が提示された.これは, サゴヤシが生育している土地を棚田化 (水田化) し, その立体的土地利用をはかる, というものである.このような農業開発を実施する際には多くの課題が指摘できるが, 本論は, そのような課題の中で, 文化的・社会的要因に関わる課題を考察した.1993年8月の約1カ月間, 現地住民に対する聞き込みを中心に調査を行った結果, 以下のような課題があることが明らかになった. (1) 「開発」, 「発展」は常に外からやってくると認識する傾向があるために, 長期間にわたって現地住民だけで計画に関わる作業を実行するのは困難であること. (2) 農作物は, 単なる作物や食料としてだけではなく, 社会の中で別の性格を持っている場合が多いため, 開発計画に際して計画が与える影響を考慮する必要があること. (3) 開発側の人間が地域共同体と接触することにより, その地域共同体の社会関係, 特にリーダーシップの関係に影響を与える可能性がある.このため, 活動の際に交渉相手を選択・決定する際には慎重に対処する必要がある. (4) 農耕に関わる作業では, 男女の作業が厳密に区分され, 互いの作業を異性の人物が代行する場合が不可能な場合が多い. (5) 土地の登記が書類で明確に示されてなく, また土地の所有の概念・利用方法が近代的な概念・方法と大きく異なっているために, 土地利用形態の変更が困難なこと. (6) 現金が貯蓄されない傾向があるために現地住民の資本の蓄積が困難なこと.
  • イスラム ナズルル, 稲永 醇二, 樗木 直也, 堀口 毅
    1997 年 41 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1997/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    日本型水稲 (ヒノヒカリ) と長稈性インド型水稲 (Hadsaduri) を水耕栽培し, 幼穂形成期と出穂期に硝安として与えられた15Nの吸収と転流を, 窒素濃度の異なる3区で比較した.
    窒素の低濃度区では, ヒノヒカリがHadsaduriよりも多くの15Nを吸収したが, 中・高濃度区では, Hadsaduriがヒノヒカリよりも多くの15Nを吸収した.成熟期の乾物重に対する穂の割合をみると, Hadsaduriはヒノヒカリよりかなり低く, 15Nの穂への分布もHadsaduriはヒノヒカリよりかなり低くなった.また高濃度区のHadsaduriでは, 出穂期から成熟期にかけてかなりの15Nの損失がみられたが, ヒノヒカリでは有意な損失はみられなかった.
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