熱帯農業
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45 巻, 1 号
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  • 小那覇 安優, 比嘉 正和, 仲宗根 福則, 池宮 秀和
    2001 年 45 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    パイナップルの花芽分化の誘導に及ぼす温度および摘葉の影響を検討した. ethephon処理後7時間~10時間の3時間に比較的低温条件下 (20℃) におけば, その後高温条件 (32℃) にさらしても高い花芽分化の誘導率を示した. ethephon処理後10時間以内の摘葉と10時間の高温条件にさらすと花芽分化の誘導が阻害されることがわかった. また, 上位葉の摘葉によって花芽分化の誘導は確実に阻害され, 中位葉の摘葉による花芽分化の誘導率は下位葉を摘葉した場合に比べ低くなった. また, NAA処理によっても花芽分化の誘導が認められた. ethephonとNAA処理による花芽分化の誘導の効果を安定的に得るためには, 上位の健全葉の存在と3時間の低温処理が必要である.以上のことから, 摘葉が花芽分化の誘導の直接的な阻害要因となり, 温度条件が間接的に働くものと考えられた. すなわち, 自然条件下での花芽分化の誘導処理剤の効果が時間的に変動するのは, 風雨による植物体の機械的な損傷と温度条件の変化が影響していることを示唆できた.
  • 二口 浩一, Monty P. JONES, 石井 龍一
    2001 年 45 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    アフリカイネ (Oryza glaberrima Steud.) 4系統を用い, 冠水抵抗性についてアジアイネ (O.sativa L.) と比較検討した.使用したアフリカイネ系統の内TOG5810, TOG6283は深水適応型, CG14, CG20は畑地適応型とされている.材料を完全に冠水させ, 生理的耐性の指標として葉緑素含量, 酸素電極法による光合成速度の変化を調べたところ, 全てのアフリカイネ系統において, 両者はジャポニカ型のアジアイネ (農林30) より高く維持された.しかしインディカ型のアジアイネ (IR36) はアフリカイネに近い傾向を示した.また, 冠水下での伸長に関しては, アフリカイネが4系統ともアジアイネに比べ優れていた.冠水抵抗性について, アフリカイネは生理的耐性と形態的回避性の両者を保持しており, 深水イネ品種育成のための遺伝資源として有望と考えられた.深水適応型アフリカイネと畑地適応型アフリカイネとの問では, 生理的耐性および形態的回避性の程度について, 明確な差はみられなかった.
  • 志和地 弘信, 遠城 道雄, 林 満
    2001 年 45 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ネパールの標高600m~1800mの地域で収集したダイジョの系統を鹿児島において栽培し, それらの系統の早晩性を判定した.ネパールのダイジョ系統は全て早熟で, 鹿児島在来の極早生系統よりもさらに早熟の超極早生系統群が見いだされた.それらの系統は, 気温の制約を受ける標高の高い地域に分布していたことから, ダイジョの生育にとって気温の制約のない熱帯低地には, 生育期間が長く, 収量の高い晩生系統が多く在来し, 気候的に制約のある熱帯・亜熱帯の高地には早生系統が多く在来するものと推察された.また, 超極早生系統は温帯の広い地域に適応可能であると推定された.ダイジョの超極早生系統は塊茎の肥大生長パターンがナガイモ群やイチョウイモ群 (D.opposita) のそれに近似し, 肥大生長の転換が短日に起因しているダイジョの早生や晩生系統とはその特性が異なった.
  • 伊勢 一男, 孫 有泉, 周 天徳, 劉 吉新, 工藤 悟, 丹野 久, 春原 嘉弘
    2001 年 45 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    中国における食糧生産は, 増大する人口に対応するため, 単位面積当たりの生産性向上に基本をおかなければならない.多収で良質なジャポニカ水稲品種の育成は, 重要な研究課題である.雲南省には, 日中共同研究による育成水稲品種が20万ha以上栽培されている.多収安定性品種の育種選抜方策の構築のために, イネの適応性における遺伝子型と環境 (GE) との交互作用を統計学的に解析した.雲南省ジャポニカ水稲品種栽培地域の12箇所の試験地における12品種, 2年間の収量試験データについて, 分散分析, 結合線型回帰分析, 安定性分散, 相加主効果相乗交互作用 (AMMI) 分析およびクラスター分析によってGE交互作用を解析した.日中共同研究によって育成された「合系34号」および「合系35号」は, 標準品種「雲粳9号」および他の育成品種より, 有意に優れた収量性を示した.「合系34号」は低い収量水準の環境でも安定した収量を示すこと, 「合系35号」は1日当たり生産性が最も高い早生品種であることに, それぞれ特徴があった.分散分析による成分の推定値の大きさに基づき, 品種×場所, 品種×場所×年次の交互作用は, 品種の相対的な収量性に対して大きな効果を持っていると推察された.AMMIモデルによる解析は, 結合線型回帰分析および安定性分散に比較して, GE交互作用の情報を多く抽出できると考えられた.AMMIモデルによって推定された品種の主成分スコアは, 生育日数, 穂密度および種子稔性と有意な相関を示し, これらの形質がイネ品種の環境適応性に関与していることを示唆した.
  • 関 節朗, 干場 健, Jorge BORDON
    2001 年 45 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    パラグアイ南東部穀倉地帯における不耕起栽培ダイズ (Glycine max (L.) Merr.) の収量は近年減少傾向にある.この原因が不耕起栽培を継続した圃場での根の発育不良にあるか, どうかを明らかにするため, 年数, 耕起法, 前作物, 土壌の異なる11圃場についてダイズの根の形態, 分布を調査した.その結果, 不耕起畑では地表下5~10cmのところで, 主根が彎曲したり, 主根の伸長が止まり, 代わりに側根が水平に伸長したり, 主根の伸長・肥大が貧弱で側根がタコ足状に発達したりしているダイズが多数観察され, このようなダイズでは根系が地表近くに分布する傾向が認められた.一方, 耕起畑および開墾初年目の畑では主根伸長異常のダイズは少なかった.土壌調査結果によると主根の土壌下層への伸長不良は, 播種床下の土壌硬度が高いほど, また土壌表層と下層のリン酸濃度の差が大きいほど多くなる傾向にあった.このことから長年不耕起栽培を継続した畑では, 土壌に圧密層が形成され, また施肥リン酸が表層に集積するなどして, ダイズ根の土壌下層への伸長を妨げて根系分布の表層化を招き, 軽度の気象変動 (干ばつ) にも生育が左右され, 近年の収量低下の原因になっているのではないかと考えられた.
  • 米本 仁巳, 樋口 浩和, 石畑 清武, 池田 稔, 富田 栄一
    2001 年 45 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    わが国に試験導入されたシロサポテにおいて, 受粉樹として用いるのに適した品種と果実生産に適した品種を選抜する目的で, 花器および果実の形態の違いを観察した.
    ビニルハウス内で栽培されている3~4年生シロサポテ41品種の花器形態を, 実体顕微鏡, 光学顕微鏡で観察した.各品種とも構造上は両性花で5枚の花弁と5個の雄蕊 (ずい) を有しており, 円形の花床上に無柄の子房が位置していた.葯の形態には品種間で差異が認められ, 黄色く充実した葯を有する品種とクリーム色で充実していない葯を有する品種が観察され, 前者には花粉が多数存在するが, 後者には存在しないことが明らかになった.
    露地栽培されている7~8年生シロサポテ40品種の花器形態を観察した結果, 子房・柱頭が大きく花粉が認められない品種 (タイプI ; ‘Florida’, ‘McDill’など24品種) , 子房・柱頭が小さく, 葯が充実して花粉が認められる品種 (タイプII ; ‘Suebelle’, ‘Vernon’など15品種) , 子房・柱頭が大きく葯も充実して花粉を形成する品種 (タイプIII ; ‘Maltby’) に分類することができた.タイプIIIはこれまでに報告されていない新しいタイプである.これらの品種の花器形態や花性機能は, いずれの時期・栽培環境下においても変化が認められなかった.
    上記で分類したタイプのうち, 200g以上の果実を生産したタイプIの品種では果実中の種子重がすぐれ, 稔性種子数も多くなった.この結果から, 果実生産にはタイプIの品種がよく, 受粉樹としてはタイプIIまたはIIIの品種を混植するのが望ましいと思われた.
  • 志水 勝好, 石川 尚人, 村中 聡, 唐 建軍
    2001 年 45 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    本実験ではシバヤギを用いて消化試験を行い, 体調に異常を来さずにアッケシソウ混合飼料を食べることの確認を目的とした.
    1997年5月8日にアッケシソウの種子を川砂を充填したプラスチックバット28個に播種し, 培養液の灌水は2週1回約3.41とした.6月23日から培養液にNaC1を加え0.3%NaClとし, 灌水は週1回で収穫まで計8回灌水し栽培した.収穫は8月20日におこない, 植物体を水道水で洗浄した後5日間80℃の通風乾燥機により乾燥した.乾燥した植物体を約10cm程度に細断し, 飼料として供試した.供試動物としてシバヤギを3頭用い, 10月20日から10日間を対照区として, 基礎飼料のみ (アルファルファヘイキューブ) を与え, その後10日間を処理区とし, アッケシソウが20%混入した基礎飼料を与えた.各期間の最後の3日間は全糞採取法による消化試験を実施した.今回用いたアッケシソウのNaCl濃度は約20%で, 混合飼料に含まれる約4%のNaC1成分はアッケシソウに由来していた.
    消化試験の結果, 粗繊維の消化率が処理区において増加した.しかし粗脂肪と粗蛋白質の消化率が低かったので, 混合飼料のTDNはアルファルファヘイキューブとほぼ同じであった.シバヤギは処理期間中にアッケシソウ混合飼料を残さず食べ, 外見上, 体調の変化も見られなかったことから, アッケシソウの混合飼料としての利用は可能であると考られた.
  • 姜 東鎮, 二口 浩一, Somsot DUMNOENNGAM, Thavorn MECHAI, Benjaporn CHAKRANON, ...
    2001 年 45 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    南部タイ, ナラチワ県の主要な4稲作地域 (Yi-ngo, Tak-bai, Bacho沖積土壌, Bacho山地土壌) 内の各5農家におけるイネの収量を3ヵ年にわたって調査し, この4地域間で生じたイネの収量差が, 何に起因するのかを明らかにしようとした.まず, 地域ごとの平均収量は, Yi-ngo (3.5t・ha-1) , Bacho; 山地 (2.7t・ha-1) , Bacho; 沖積地 (2.6t・ha-1) , そしてTak-bai (2.2t・ha-1) の順であり, この順位は3年間でほぼ同じ傾向を示した.こうした地域間の収量差は, 各地域の栽培方法の差, 例えば栽植密度や肥料施用量では説明できなかった.つぎに, 4地域の各農家水田から採集した土壌中の窒素と有機物質含量を分析した.土壌中の平均窒素や有機物質の含量は, 乾物収量や子実収量が最も低かったTak-baiでかえって高く, 4地域の中で最も多収をあげたYi-ngo地域で低かった.このことから, 土壌肥沃度はこの地域でのイネ収量を決める要因ではないと考えられた.そこで, これら4地域の土壌粒子の組成を調べた結果, Yi-ngoの土壌は, Tak-baiに比べ砂の含量が高く, 排水性が良く, このことは, Yi-ngoでの多収原因の一つとなっていると考えられた.最後に, 品種の関与を調べた.最も多収を示したYi-ngoで栽培されているイネ品種, ColijorとLitmusを, 最も少収を示したTak-baiで栽培したところ, それら2品種はTak-baiの在来品種より多収を示した.このことから, Yi-ngoでの多収性はその品種にも大きく起因していると考えられ, こうした多収品種を低収地帯に導入することによってそこの収量を改善できる可能性があることが示された.
  • 梅澤 泰史, 志水 勝好, 加藤 盛夫, 上田 堯夫
    2001 年 45 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ダイズ (Glycine max (L.) Merr.) の耐塩性機構を光合成機能の観点から明らかにするために, 耐塩性の異なるエンレイとLeeの2品種について試験した.これら2品種を塩水処理条件下 (0.25および50mM NaCl) で4週間育成した結果, エンレイの光合成速度および生育量はLeeよりも塩ストレスの影響を強く受け, 特に50mM NaClでは顕著に減少した.気孔の影響を除いた最大光合成速度を気相酸素電極によって測定したところ, エンレイでは塩ストレスによって顕著に減少したのに対し, Leeではほとんど変化しなかった.従って, エンレイでは非気孔的要因による光合成阻害の影響が大きいと推察できる.エンレイにおける非気孔的要因として, 葉における高いNa+含有率の影響が挙げられる.Leeではエンレイよりも地上部におけるNa+含有率は低かったが, 逆に地下部ではエンレイよりも高いNa+含有率を示した.一方, 葉のアブシジン酸 (ABA) 含量を測定したところ, Leeでは塩濃度の増加に伴って顕著に増加したのに対して, エンレイではLeeの1/10以下のABA含量を示した.以上のことから, ダイズの耐塩性の品種間差では, 体内のNa+含有率の制御とABA合成能が関与する光合成活性の維持が一つの要因であると推察した.
  • 松島 憲一
    2001 年 45 巻 1 号 p. 64-74
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    1998年8月26日~9月9日に日本財団が派遣した調査団に参団し, 西アフリカの農業・国際協力の現状について調査を行った.この調査の際, コートジボアールの農業・食料事情を知り, 今後の農業技術協力推進および地域農業研究の参考とするため国内3市場において農産物に関する調査を行った.3地域の市場において確認された農作物は49種にのぼり, 果菜類15種, 果実類10種, 茎葉菜類7種, 根菜類5種, イモ類5種, 穀類・豆類5種, 油料・調味料作物4種が確認できた.これらは分類学上26科に属する植物からなり, そのうち7種がナス科, 6種がマメ科, ウリ科, 4種がイネ科, 3種がユリ科に属した.各種内の変異も大きく, トウガラシなど果菜類では様々な品種が見られた.また, 同国の食料供給は危機的な状況に至ってはいないものの, 農村部では親に対する栄養教育が行き届いていないために, デンプン食物偏重が原因と思われる栄養失調児がみられた.今回調査した各市場でみられた多様な農産物の存在はこれら栄養的問題を解決する鍵となると考えられる.
  • 2001 年 45 巻 1 号 p. 76
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
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