熱帯農業
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48 巻, 2 号
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  • 松永 亮一, 伊藤 治, Chris JOHANSEN, Theertham P. RAO
    2004 年 48 巻 2 号 p. 63-69
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    キマメは基本的には多年生植物であり茎中に炭水化物を蓄積するが, 生殖生長期間中における茎中の炭水化物の役割についてはほとんどわかっていない.そこで, 近年育成された極早生/早生品種を中心に, 生態型ならびに伸育型の異なる9つのキマメ品種を用いて, 生殖生長と茎中の炭水化物との関係を明らかにしようとした.
    供試したキマメ品種のうち, 極早生ならびに早生品種は晩生品種より開花が早まったことにより, 2度目の開花・成熟が可能となり, それに伴って子実生産が増加した.いずれのキマメ品種においても茎中のデンプン含量の増加は開花期前には認められず, 第1次開花期以降に認められた.そこで, 第1次開花期から第1次成熟期までの蓄積パターンに基づいて供試した9品種を3つのグループに分類した.グループIとIIIでは莢実の生長が衰えた後デンプン含量が増加し, グループIIでは莢実とデンプン含量の増加が同時におこった.さらに, グループIIIでは莢実の生長が衰えた後のデンプンの蓄積が開始するまでの期間がグループIより長かった.グループI, IIでは第2次の莢実生長期に再度デンプン含量が増加し, 第2次成熟期には低下した.子実肥大期のシンク/ソース比 (生長中の莢実乾物重/葉面積) と茎中デンプン含有率との間には負の相関関係が認められたことから, 生殖生長量が小さいほど多くのデンプンを茎に貯蔵していることが明らかとなった.このことから, 生殖期間中におこるキマメ品種の茎中でのデンプンの蓄積は受動的であり, 相対的に弱い生殖生長によって生じる光合成産物の供給過剰が原因と考えられた.しかしながら, 生殖生長期間中にみられた茎中デンプン含量の増減は, キマメ品種が茎に一時的に貯めた光合成産物を再転流・再利用していることを示唆している.本稿では, 貯蔵炭水化物の子実への移行についてその可能性について論じる.
  • 椛木 信幸, 田村 治男, 森田 弘彦, 坂 齊
    2004 年 48 巻 2 号 p. 70-78
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    心土破砕と組み合わせた不耕起栽培は, 東北タイの天水地帯における畑作物および稲の生産性向上に有効であった.畑作においては, 不耕起は雨期始めにおける圃場準備作業時間と労力を節減しただけでなく, 傾斜畑で耕起後にみられる土壌浸食を防止した.さらに不耕起では土壌を撹乱しないために, 土壌水分の保持効果が高く, トウモロコシ, ソルガム等の畑作物の生育を促進した.水田作においては, 移植労力の不足と降雨の不安定性を克服するために水稲乾田直播の導入が効果的であったが, 不耕起播種は耕起播種と同等の収量性を示した.不耕起栽培に先立って深さ40~50cmの心土破砕を行うことにより, 水が土壌深層まで浸透するため圧密化しやすい砂質土壌が膨軟となり, 作物の生育に促進効果が認められた.
  • チュラカ パリヤヌット, 丸尾 達, 高垣 美智子, 篠原 温
    2004 年 48 巻 2 号 p. 79-87
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    各種有機質資材を培地の容水量から 1) 高容水量培地 (>45%v/v) ; やし殻 (CC) , もみ殻くん炭 (RHC) , バガスチャコール (BGC) とピートモスおよび2) 低容水量培地 (<45%v/v) ; もみ殻 (RH) と落花生英くん炭 (PHC) の二つのグループに分け, 容水量の高い培地と低い培地を組み合わせ, CC: RH, CC: PHC, RHC: RH, RHC: PHC, BGC: RH, BGC: PHC, PM: RHおよびPM: PHC, をそれぞれ1: 1の比 (v/v) で均一に混合し, トウガラシおよびキュウリ育苗用培地としての可能性を明らかにするため, 市販の育苗用培養土 (COM) (セル培土: スミリン農産工業株式会社) と比較した.CC: RHおよびCC: PHCで育苗したトウガラシ苗では茎径, 草丈, 葉面積, 地上部および全体の乾物重がその他の有機質資材を混合した培地で育苗した苗と比較して大きくなった.さらに, CCを含む培地でトウガラシ苗では播種後42日目の生育調査ではいずれの測定項目もPMを含む培地およびCOMの値よりも等しいか大きくなった.PHCを含む培地で育苗したキュウリ苗においては, 茎径, 草丈, 葉面積, 地上部および全体の乾物重の値がRHを含む培地で育苗した苗の値よりも大きくなった.キュウリ苗では播種後30日目の生育調査ではCCを含む培地での各値とPMを含む培地での値がほぼ等しくなった.最終的にいずれの苗においても今回の供試培地では外見上の違いは見られなかった.熱帯地域でのコストや利用性を考慮するとCCを含む培地がピートモスの代替培地としてトウガラシおよびキュウリの育苗に効果的であると結論した.
  • 米本 仁巳, 井上 裕嗣, 真境名 真弓, 奥田 均
    2004 年 48 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    亜熱帯性果樹であるシロサポテ (Casimiroa edulis Llave & Lex.) をわが国で露地栽培した場合にみられる結実不良と幼果の寒害との関係を明らかにする目的で, 人工気象室と圃場の両方でシロサポテ‘フロリダ’の幼果に寒害を生じる気温を調査した.人工気象室実験では, -3℃に5時間遭遇した場合幼果に重度の寒害がみられた.しかし, 4日間連続して-2℃に遭遇しても寒害はみられなかった.圃場での栽培試験では, 最低気温が-2.5℃以下になった年の収量は皆無であった.シロサポテの露地栽培は冬季の最低気温が-2.0℃以下にならない場所が望ましい.
  • 比屋根 真一, 大場 和彦, 丸山 篤志, 黒瀬 義孝, 河野 伸二, 伊志嶺 正人
    2004 年 48 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    沖縄県宮古島 (北緯24°, 東経125°) における夏植サトウキビ畑の微気象観測の結果から, 熱収支をもとにボーエン比法で蒸発散量を測定し, FAOの提案した改良PENMAN法, 日射法およびPENMAN-MONTEITH法を用いて基準蒸発散量を算出し, 作物係数を求めた.測定期間中の蒸発散量は, 0~7.20mm/dayの間で変動し, 年平均値は2.86mm/dayであった.最も蒸発散量が高かったのは7月7日の7.20mm/dayであった.これは, 土壌が湿潤状態で測定期間中最も日射量が高かったことが理由である.各熱収支項の熱分配は, 純放射量の大部分が潜熱フラックスに分配され, 顕熱フラックス, 地中熱流量への分配は小さかった.しかし, 土壌水分が低下すると顕熱フラックスへの分配が高まった.作物係数の年平均値は, 基準蒸発散量の算出方法によって異なり, PENMAN法は0.69, 日射法は0.75そしてPENMAN-MONTEITH法は0.83であった.月平均作物係数は, PENMAN法とPENMAN-MONTEITH法では6月にピークが認められ, その値は各々0.90と1.07であった.日射法では1~6月まで0.75~0.93で推移し, 明瞭なピークは認められなかった.7月以降の作物係数はいずれの計算式においても低下した.その原因は, 土壌水分の低下, 台風の襲来による群落構造の破損と, 施肥が年内に実施されるため翌年には養分が欠乏し, 植物体の生理活性が低下したことが原因と推察された.
  • 入江 憲治, KHIN AYE, YI YI MYINT, L. NANG KHA, YE TINT TUN, 長峰 司, 藤巻 宏, 菊池 ...
    2004 年 48 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ミャンマー中央農業研究所のシードバンクに収集・保存されている3, 504点のイネ地方品種の中から, 1, 382点を任意抽出して, 籾長, 籾幅, 籾千粒重, 玄米色, 籾フェノール反応, 胚乳アルカリ崩壊性, 胚乳アミロース含量などの穀粒形質に関する品種間変異の地域間差異を調べた.その結果, 籾型, 籾フェノール反応, 胚乳アルカリ崩壊性, 胚乳アミロース含量に関して大きな品種間変異がみられた.これらの変異の様相は地域ごとに異なり, 明確な地域間差異が認められた.籾型, 籾フェノール反応および胚乳アルカリ崩壊性に関する品種間変異をみると, ミャンマーの地方品種は, 中・南部平坦地域の品種群と北部の山岳丘陵地域の品種群に大きく分けられることがわかった.中・南部平坦地域のAyeyarwady管区およびMagway管区では, c型 (長粒) で, フェノール着色, アルカリ崩壊性低, 高アミロース含量でインド型の形質組合せの品種が多かった.一方, 山岳丘陵地域では, インドやバングラデシュと国境を接する西部のChin州品種の籾型は, b (大粒) またはc型で, フェノール無着色の品種が比較的多かった.しかし, タイ, ラオス, 中国と国境を接する東部のShan州の品種は, 籾はb型でフェノール着色を示すものが大部分を占め, 明確な地域間差異がみられた.こうした結果から, ミャンマーにおいては, 北部山岳丘陵地域と南部平坦地域の間に, また山岳.丘陵地域では東部と西部との間に明瞭な品種分化が生じていることが推察された.さらに, 北部山岳丘陵地域の品種には胚乳アミロース含量の遺伝的変異が大きく, 低アミロース品種のような貴重な遺伝資源が存在することが明らかになった.
  • 米本 仁巳, 井上 裕嗣, 奥田 均
    2004 年 48 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 山本 宗立, 井上 裕嗣, 米本 仁巳, 樋口 浩和, 縄田 栄治
    2004 年 48 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2004/06/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
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