熱帯農業
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48 巻, 4 号
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  • Md. Amzad HOSSAIN, 南 峰夫, 根本 和洋
    2004 年 48 巻 4 号 p. 205-210
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    バングラデシュにおいて組織培養を用いたトウガラシ育種を効率的に実施する観点から, バングラデシュで最も普及している在来トウガラシ3品種に由来する6系統を供試して, 植物体再生能力の品種間差と最適培養条件を検討した.無菌播種して2~3週間育成した実生から胚軸, 子葉, 子葉節, 第1本葉および茎頂を外植体として切り出し, MS基本培地に生長調節物質を添加した4種類の培地で培養した.すべての外植体でカルスと不定芽が形成されたが, 多くはロゼット状態にとどまり, シュートまで発達しなかった.シュート形成率およびシュート数は系統, 外植体部位および培地により差が認められた.品種Dhania Morishの再生能力が最も高く, 茎頂を外植体としてMS+BA5mgl-1の培地を用いるのが最適と判断された.Dhania Morish由来のS3230ではシュート形成率約92%, 外植体当たり4.0本のシュートが得られた.シュートの発根と生長は発根培地MS+NAA 0.1mgl-1+IBA0.05mgl-1で最も良く, 順化も容易であった.圃場に定植した再生植物体は, 成熟植物体まで生長した.
  • 縄田 栄治, 永田 好克, 河野 泰之, 岩間 憲次, 山本 貴士, 渡邊 恆太, 富田 晋介, スィーブッタ アカデート, ノイチャナ チ ...
    2004 年 48 巻 4 号 p. 211-219
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    東北タイにおける, 主要畑作物キャッサバの生産性を, 作物モデル, 資源データベース及びGISツールを用いて地図化した.気温と日射量のみを制限要因とする潜在収量の20年平均の分布図により, 東北タイ全域でキャッサバの潜在収量は高く, 地域内変動が小さいことが明らかになった.また, 年変動も全域で小さかった.一方, 気温と日射量に加えて, 水条件 (土壌水分または湛水深) を制限要因とする達成可能収量は, 全域で潜在収量より小さかったが, 低地部 (氾濫原と丘陵低位部) では湛水が, 中高地部 (丘陵中高位部) では水ストレスが, 潜在収量を低下させる主因となっていた.達成可能収量は, 地域内変異が大きく, 中高地部が低地部より高かった.また, 達成可能収量の年変動は, 低地部で大きく, 中高地部で小さかった.このことから, 東北タイ中高地部では, 栽培管理が適正であれば, 比較的高く安定したキャッサバ生産が期待できることが明らかとなった.1997年の実収量と達成可能収量の比較により, 殆どのキャッサバ生産地で, 達成可能収量が実収量を相当上回ることが示され, 東北タイのキャッサバ生産には集約化による生産力向上の余地が十分にあることが示唆された.
  • 本村 恵二, 諸見里 善一, 仲村 一郎, 石嶺 行男, 村山 盛一, 比嘉 照夫
    2004 年 48 巻 4 号 p. 220-227
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    イネの細胞質雄性不稔系統17系統の細胞質を分類した.このうち7系統は過去の実験で分類済みであり, 残り10系統は今回初めて分類を行った.いずれの系統も野生イネOryza rufipogonおよびO. brevilgulataを一回母本に, 栽培イネ品種台中65号を反復父本として連続戻し交雑して得られた台中65号型の核置換系統である.これまで細胞質雄性不稔系統と検定系統である稔性回復系統とのF1における種子稔性の差により分類を行ってきた.本報ではF1の種子稔性に加えて, 葯の形状および裂開性, 花粉粒の形状およびヨード・ヨードカリ液による染色の程度, 開花率を調査し, 17の細胞質雄性不稔系統の分類を試みた.葯の形状および裂開性はA: 葯の発育がよく, 裂開も良好, B: 葯の発育が不十分で裂開が悪い, C: 葯が退化し, 全く裂開しないの3つのレベルに分類した.花粉粒の形状および染色程度は, X: 球形で濃染; Y: 球形で淡染, Z: 畸形で不染の3つに分類した.開花率は一日あたりの開頴数を調べ, その比率を求めた.
    17系統は葯の形状および裂開性により5つのクラス, 花粉の形状および染色程度により4つのクラス, 開花率により3つのクラスに分けることができた.また, F1の稔性により9つのクラスに分けることができ, それぞれの分類をまとめると結局10のクラスにわけることができた.
  • 董 彦君, 林 冬枝, 上運 天博, 小川 紹文, 蔡 慶生, 続 栄治, 寺尾 寛行, 松尾 弘光
    2004 年 48 巻 4 号 p. 228-234
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    イネの重要な形質の一つである分げつ角度はイネの形を決めるだけでなく, 空気や光の透過度と密接な関係をもつ光合成能や病気の発生にも影響を及している.本研究では, 日本型イネ品種「あそみのり」とインド型イネ品種「IR24」との交雑によって得られた71組換え型自殖 (RI) 系統を用いてイネの分げつ角度の特性に関する量的遺伝子座位 (QTL) 解析を行った.その結果, 組換え型自殖71系統集団のイネの分げつ角度はいずれの調査時期においても連続的な分布を示し, かつ両親の分布を超える超越分離を示した.このことから, 分げつ角度は量的遺伝子によって支配されていることが確認された.また, イネの分げつ角度に関する7つのQTLs (qTA-2, qTA-4, qTA-7, qTA-8, qTA-9, qTA-11, qTA-12) が第2, 4, 7, 8, 9, 11および12染色体上において検出された.このうち, 第9染色体上のqTA-9が最も遺伝効果が高く, 表現型分散への寄与率は27.7%から48.5%であった.残りの6つは表現型分散への寄与率は各々4.9%から13.4%であった.さらに, 第2, 7および12染色体上の3つのQTLsは「あそみのり」の対立遺伝子が分げつ角度を増大させる作用をもつのに対し, 第4, 8, 9および11染色体上の4つのQTLsは減少させる作用をもつことが確認された.なお, 検出されたQTLsはこれらのマーカーを利用した理想的な形態をもつ稲の育種にとって有益なものであると考察した.
  • Edi SANTOSA, 杉山 信男, Eko SULISTYONO, Diddy SOPANDIE
    2004 年 48 巻 4 号 p. 235-239
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ゾウコンニャクは通常, 南アジアや東南アジアの畑やホームガーデンで灌漑せずに栽培される.そこで灌水頻度が生長や収量に及ぼす影響を明らかにするため, 20kgの土壌を詰めたプラスチック袋で2002年5月から12月までゾウコンニャクを栽培した.1, 3, 5, 7, 15日ごとに1~1.51を灌水する区を設け, シュートの先端が肉眼で見えるようになってから灌水処理を開始した.灌水頻度は葉の数や大きさ, 球茎の大きさ, 子球の数, 根の生長に影響を及ぼし, 灌水の間隔が長くなるほど生長が劣った.1~5日間隔の灌水では植物体に異常は認められなかったが, 7日あるいは15日間隔にすると球茎は休眠に入った.これらの結果は, ゾウコンニャクは水分ストレスに強いが, 高収量を得るためには水分ストレスを回避する必要があることを示唆している.
  • Edi SANTOSA, 杉山 信男, 彦坂 晶子, 中田 美紀, H.M.H. BINTORO
    2004 年 48 巻 4 号 p. 240-245
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    ジャワムカゴコンニャクとゾウコンニャクの栽培において, 球茎が深い位置に形成された場合には収穫に多くの労力が必要になる.そこで, 植付け深度が子イモの位置, 形, 生体重に及ぼす影響について検討した.両種とも2002年9月に種イモを異なる深さ (10cm, 20cm, 30cm) に植付け, 2003年7月に収穫した.土壌表面から球茎上部までを植付け深度とした.植付け深度は両種の球茎生体重に有意な影響を及ぼさなかった.子イモは種イモを30cmの深さに植えた場合でも深さ, 約10cmの所に形成された.球茎の形状は種イモを10cmの深さに植えた場合は球状またはやや扁平な球状であったが, 30cmの深さに植えた場合は両種とも一部は縦方向に伸長し, 残りは中央部がくびれて洋ナシ状になった.20cmの深さに植付けた場合, ジャワムカゴコンニャクは縦方向に伸びるか, 洋ナシ状になるが, ゾウコンニャクは洋ナシ状になることはなかった.これらの結果は, 球茎の形に及ぼす植付け深度の影響はゾウコンニャクよりもジャワムカゴコンニャクで顕著に現れることを示唆している.
  • Hugo A. ZARZA SILVA, 丸尾 達, 高垣 美智子, 北条 雅章, 篠原 温
    2004 年 48 巻 4 号 p. 246-252
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    毛管水耕システム (CHS) は, ほとんど電力を使用しないことと有機質培地を利用することから, 低コストで安定性の高い養液栽培法であり, 熱帯地域への導入が有望なシステムと考えられる.CHSのモデル装置を温室内に設置して試験に供した.栽培ベッドには下から順に, キャピラリーマット, 防根シート, 培地, 蒸発を防ぐための発砲スチロールを敷いた.CHSベッドの両側には, 給液と排液回収のため市販の雨どいを設置した.ヘッダーガター内の液面はキャッチングガター内の液面より高いレベルに設置し, この液面レベルの差を垂直距離と呼んだ.垂直距離を変えることで培養液の流速を任意の値に変更することが可能であった.実験1では, CHSにおける培地の培養液流速に与える影響について調査した.まず, 3種類の熱帯由来の培地: ココヤシ繊維 (CC) , もみ殻くん炭 (RHC) , およびもみ殻 (RH) を用い, 垂直距離を3.5, 5, 10cmに設定した.垂直距離5cm以上培養液流速は安定したが, 培養液流速は培地の違いの影響も受け, 40~54ml・min-1・m-1の範囲で変動した.実験2では, 培地の適応性を比較するたらめ, 3種類の熱帯由来の培地: ココヤシ繊維 (CC) , もみ殻くん炭 (RHC) , および生もみ殻 (RH) を用い, サラダ菜を栽培した.CCとRHCの培地は夏季作のCHSに適することが明らかになった.春作および秋作では, いずれの処理においてもほぼ問題なくレタスは生産することができた.21日間の栽培に要する1m2当たり電力消費は1.26KWであった.
  • Michael GRAGASIN, 丸山 敦史, 菊池 眞夫
    2004 年 48 巻 4 号 p. 253-264
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    フィリピン北部イザベラ州の稲作とトウモロコシ作農家の調査データを用い, 作物収穫後農家が実施する乾燥作業の実態と経済性を明らかにし, 乾燥機による機械乾燥の経済性と比較した.作物収穫後の乾燥は稲作の場合例外的にしかなされず, トウモロコシ作の場合は乾燥を行うのがふつうである.乾燥作業には所得効果が作用しているようであり, 豊かな農家ほど乾燥作業を自ら実施する傾向が観察される.乾燥は総て人力による天日乾燥であり, 乾燥機の使用は皆無である.天日乾燥の経済性が高いのに対し, 現存する乾燥機の経済性は比較にならないほど低く, 使いものにならない.賃金率が高まるに従い, 天日乾燥の機械乾燥に対する有利性は低下していくが, 当分は天日乾燥の有利性はゆるがない.乾燥機の経済性を低めている最大の要因は熱を発生させるためのバーナーの燃料効率が低すぎることにあり, もし機械乾燥を普及させる必要があるとすれば, その点を大幅に改善することが必要である.
  • 井上 裕嗣, 米本 仁巳, 島川 泰英, 松田 昇, 恩田 聡
    2004 年 48 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    沖縄県におけるアテモヤ‘ジェフナー’の立ち枯れの発生要因を調査するため, 栽培園の台木と土壌条件を調査した.さらに, 冬季出荷を目的に台木が樹の生育および夏季切り返し剪定による着花量に及ぼす影響を調査した.
    その結果, 立ち枯れはポンドアップル台木で発生が多く, バンレイシ台でも土壌排水性の不良な園で見られた.台木としてチェリモヤ, アテモヤ, バンレイシを用いて生育させたところ, 台木幹周はチェリモヤ, アテモヤ, バンレイシ台木の順で, 穂木幹周はアテモヤ, チェリモヤ, バンレイシ台木の順で大きくなった.チェリモヤ台木では台勝ち現象が見られた.樹冠面積と個葉の面積における台木間の違いは台木幹周で見られた台木間の違いと同様な傾向で, バンレイシ台木で有意に小さかった.着花数は, 7月および8月剪定ではバンレイシ台木で有意に多く, 総着花数も同様の結果であった.以上の結果から, チェリモヤとアテモヤ台木は樹勢が良好で, 経済栽培に十分な着花数が得られ, これらは沖縄でのアテモヤ栽培用台木として適しているものと思われた.バンレイシ台木はわい化に有効であるが, 排水不良な沖縄の国頭マージ土壌では立ち枯れが発生した.
  • 高田 直也, Irham, 岩本 純明, 大賀 圭治
    2004 年 48 巻 4 号 p. 270-273
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    インドネシアの有機農業は極めて限られた範囲に留まっているものの, ジャワ島中部を中心に国内における有機農産物市場が形成されつつある.本稿では有機農業の具体的な取り組み, 有機農業の担い手及び流通業者の動向把握を目的とし, 2003年9月にジャワ島中部に位置するジョグジャカルタ市およびその近郊に位置する有機農業関係者に対して行った聞き取り調査結果を報告する.ジョグジャカルタで有機農産物市場が形成されはじめたのは, 1997年に有機農産物販売店SがイギリスのNGOの支援を受けて設立されたことによる.2003年現在, Sは14の有機農業グループから有機農産物を仕入れ, ジョグジャカルタ市内のみならず, ジャカルタなどジャワ島内の主要都市に流通させている.有機農業は, 1970年頃から取り組みが行われていたが, グループとして組織的な取り組みが始まるのは1980年代後半であった.有機栽培は慣行栽培に比べて単収が低いものの, 近年有機農産物価格は慣行栽培品に比べて高いため, 完全な有機農業に取り組みたいと考える農家が増えている.しかしながら, 有機肥料の原料調達が課題であるために, 完全な有機栽培に移行できる農家は少数に留まっている.一方, インドネシアでは近年コメを毎年輸入しており, 慣行農業に比べて単収の低い有機農業の動向についてはさらなる調査, 研究が求められる.また, インドネシアには有機農産物の品質を保証する認証システムが整備されていないのが現状であり, 有機農産物に対する消費者の信頼を維持できるかどうかについて注視する必要がある.
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