泥炭土壌は一般的に高い地下水位, 低いpH, 貧栄養特に微量要素の供給量が少ないことによって特徴づけられ, いわゆる問題土壌である.永年生植物であり, デンプン生産をおこなうサゴヤシ (
Metroxyleon sagu Rottb.) は泥炭土壌で生育が可能であるが, その生育は鉱質土壌に比較すると劣る.そこで石灰施用や微量要素施用が泥炭土壌でのサゴヤシ生育に与える影響を検討するために, インドネシア国スマトラ島リアウ州で圃場試験を実施した.試験区は実験1では各微量要素 (Cu, Fe, Mn, Zn) の無施用区 (-Cu区, -Fe区, -Mn区, -Zn区の4区) と完全区の計5区を設けた.石灰, 多量要素は全ての区に施用した.実験2ではドロマイト施用の有無と多量要素施用の有無の組み合わせの4区を設けた.実験2では全ての区に微量要素は慣行量施用した.施肥は局所施肥で行い, 施用量は試験を実施したプランテーションの慣行量とした.生育に対する影響は樹高 (樹幹長十葉長) , 葉数および葉の各要素含有率から評価した.両試験とも移植5年後で幹立ち前のサゴヤシを使用した.得られた結果は以下の通りである. 1) 両試験ともに樹高, 葉数は施肥およびドロマイト施用にかかわらず処理区で差が認められなかった. 2) 試験1で葉のCu, Fe, Mn, Zn含有率は, それぞれ1.1~5.4, 57~149, 43~104, 9~19mg kg
-1で処理区に差が認められなかった. 3) 試験2では葉のK含有率に処理区で差が認められたが他の養分の含有率に差が認められなかった.4) これらのことから泥炭土壌で生育するサゴヤシに対しての養分の局所施用はサゴヤシ生育に対して影響が小さいものと考えられた.
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