熱帯農業
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6 巻, 4 号
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  • 山崎 守正
    1963 年 6 巻 4 号 p. 183-185
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    マライの茶の栽培は海峡植民地時代の1802年にPenang島への導入に始まるが, 実際の栽培は1930年に低地のSerdang, 海抜3, 000~5, 000呎の高地Cameronにて始めて行なわれたが, 高地では品質が優るが, 収量が劣つた.第2次大戦以後徐々に盛んとなり, 現在では栽培面積が約11, 000エーカー, その半分は高地栽培である.特に最近北東部のTrenggnu地区の火山灰土壌で優秀な成績をあげておる.
    繁殖法は殆ど種子による.播種は充分に施肥・灌漑した苗床に行ない.その上を椰子の葉で覆う.発芽後約6ヵ月の一苗を3.5×3.5呎の距離に移植する.なお最近は挿木法などの栄養繁植も多少行なわれ始めた.肥料は完全肥料が奨励され, その標準はエーカー当り燐酸30, 加里30, 窒素25ポンド, 更に2回の窒素の追肥により窒素は合計100~120ポンドとなる.なお高地では燐酸の肥効が大きい.摘採は普通2葉・1芽を平地7~10日, 山地10~12日間隔で行なう.最近では労賃の値上りにより機械摘みも採用されておる.剪定は低地では大体12~18ヵ月毎に軽ないし中程度, 高地では3~4カ年間隔に低地より強く行なう.日本の占領下の3カ年半は茶のエステートは殆ど放任され, 樹高も30呎以上になつたが, 1946年以後は再び剪定が行なわれておる.マレーの平地では蔭樹として荳科植物のAlbizzia moluccana, 高地ではGlircidia maculataが植えられる.高地では蔭樹の他に防風樹が必要な場合がある.緑肥作物およびCassia occidentalisなどのCover cropの間作も奨励されておる.
    調製法は各国と大差がない.収量は全国平均1エーカー当り500ポンドである.マライ全体の生産額と輸出額 (何れも単位は万ポンド) は1949年323と185, 1954年459と276, 1959年536と476である.なお緑茶は数量は明らかでないが中国人経営の小農園に少量生産される.
    マライの茶業は各エステートに茶の栽培に適する開墾地があるので, 将来益々発展することが予想される.
  • 稲留 帯刀
    1963 年 6 巻 4 号 p. 186-193
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 中田 正明
    1963 年 6 巻 4 号 p. 194-201
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    東南アジア諸国はそれぞれ経済開発計画を立て国を挙げ全力を傾け, これを遂行しているが技術および技術者の不足は一つの隘路とされている.諸外国においては新しい援助方法が案出され成果を挙げている.わが国は近来主として科学技術の導入と普及とによつて, 食糧 (米穀) の自給自足を達成しこの基盤の上に工業と技術革新をはかり近代的工業国へと躍進しつつある.わが農業発展と工業化の途ゆきは農業主体の東南諸国にとつても一つのモデルケースとして注目されると共にわが技術援助がますます期待されている.この小論は東南諸国の農業, 農業開発計画および技術援助の現状を概観し, この地域に適合する具体的援助方法探究への若干の接近を試みようとするものである.
    以下その大要を述べる.
    1.東南ア農業および開発計画の概要
    東南諸国の農業の諸特徴をあげ, 次に各国の農業開発計画の目標, 施策および実施経過をながめ種々の実施上支障となる諸要因をさぐり, 求められる農業技術項目を摘出した。
    2.農業技術援助方式 (名称は仮称) の概略
    現行の援助方式として, I.国連方式 (主にFAO) , II.地域計画方式 (Colombo Plan, ECAFE活動) , III.国別単独援助方式, A.アメリカ方式 (平和部遂, 大学契約, インド村落開発計画) , B.ソビエット方式, C.西独方式
    以上について諸特徴および実施状況の検討した.
    3.わが国の農業技術援助
    a.援助対象の技術の種別, (1) 食糧増産技術, 貿易工芸作物増産技術, (3) 転換多様化ないし新技術部門 (例工芸作物, 園芸, 畜産, 養蚕, 林業, 漁業等)
    b.現行援助方式, FAO, Colombo Plan, 日米共同第3国研修計画, 賠償, 国別計画等により専門家・技術者派遣, 研修生・留学生受入, 農業センター設置, 器材供与等を実施し各分野で成果をあげているが, 反面改善すべき点も指摘されている.
    c.今後の援助方法従来の方法の外に新たに研究すべき方法および更に強化改善すべきものとして次の4点を強調したい。
    (1) 農業技術センター, モデル農場の整備および増設, (2) 大学契約の活用, (3) 村落開発計画への協力, (4) 日本農業と農業技術の紹介
    これを要するに今後技術援助かかわる諸機関をはじめ研究者, 教育者ならびに産業人が共に相たずさえて研究努力し, 東南ア諸国の農業発展の要請にこたえる真に有効適切な方法を確立し積極的な援助協力をはかることが急務である.かくしてこれら地域の豊かな農業生産と福祉多き農民生活の向上に寄与すると共に, これら諸国の近代国家建設ヘ一臂の力をかすことはわが国の果すべき現在および将来にわたる長期的役割であろう. (Feb.5, 1963)
  • 村田 治重
    1963 年 6 巻 4 号 p. 202-206
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    (1) 当地においては, 冬期ビニール被覆によりパパヤめ栽培が可能であり, また露地栽培では年内に未熟果を結実するが, 開花の時期を早めることができれば年内に果実収穫の可能性も考えられる.
    (2) パパヤは生育を促進させる方が開花節位が低く, 開花が早くなる値向にあるので早期に定植し生育を促進させることが開花結実を早めることになる.
    (3) 雌株に比し両性株は, 高温期に雄性に近い両性花を生じ結実率が悪いので, 雌株の方が生産性が高い.
    (4) パパヤの寒害には, 葉の害と根ぐされとがあるが, 葉の害は気温の上昇とともに回復するが, 根ぐされは越冬不可能である.ビニールハウスでの冬期の根元への土盛は根ぐされを回避するのに効果的な方法である.
  • 山本 狷吉
    1963 年 6 巻 4 号 p. 207-211
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 孝
    1963 年 6 巻 4 号 p. 212-217
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    Espato grass (Stipa tenacissima) の葉は約56% (重量) の繊維を含むので主として製紙原料に使われる.これはチュニジアでAlfaと呼ばれ, 最も古い作物で重要輸出品の一つである.年降水量150mm程度で他の作物が生育不能の南部砂漠地付近でも生育する程耐旱性が強く栽培面積は同国の農地約1, 035万haの中で約95万haを占めておる.今後も政府は灌漑なしでは作物の生育不能な広い地域にEsparto栽培の奨励計画をたてておる.輸出量は乾葉で年10万t, 輸出先は19世紀中頃まではフランス, それ以後は主として英国である.約10万人の遊牧のBerber族が冬季にはEspartoの葉を摘んで生活を支えておる現状である.用途は製紙原料の他にマット・バスケット・サンダル・船のロープの材料にする.政府は1962年にU.S.A.の援助でパルプに加工して輸出するために625万ドルでKasserineに近代式Esparto Pulp Mi11を設立し, 1日80メトリック・トンの生産を予定しておる.
    またチュニジアの最も新しい作物は甜菜で, 1954年に一農民のSi Sadok ben CHIBouB氏がドイツ種のKlein Worst Lebelとフランス種のde prezの試作に成功したのが始まりで, 収量は最初糖含有率18%でha当り18tであつたが, 以後20t・30tと増加し, 最近では50tに達した.なお同国での経済的収量は40t位と考えられておる.政府は1956年の独立に伴ない, 従来フランス, キエーバから輸入していた砂糖を軽減する目的で甜菜栽培に関心を示し, 1960年には主としてアルゼリア国境に近いBejaを中心に約100haの栽培が行なわれ, それが1961年には約4, 000haと急増し, 更に1964年までに6, 000haを目標に鋭意奨励中である.またBejaに近代設備の製糖工場を設立し, 1年に約5万tの粗糖を計画し, 将来は北部で約21, 000haの栽培を行なつて国内自給をはかるため, 融資などの経済的援助ならびに技術的指導を行なつておる. (菅六郎)
  • (シンポジウムその8, 砂糖-上)
    1963 年 6 巻 4 号 p. 218-238
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 1963 年 6 巻 4 号 p. 239
    発行日: 1963/06/29
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    最近の分類によればDurio属には27の種 (Species) があり, その中で食用果実を着けるものは6種である.最も有名なのはドリアン (Durio zibethinus MURRAY) で, これは東南アジアの果物の中て最もエキゾチックなもので, 吐気を催すような強烈な不快臭とその臭から想像も出来ないような美味しさがあり (食用になるのは仮種皮arirの部分で, これは受精後珠柄または胚座の部分が肥大して真の種皮の上を包む被覆物) , 一度その味を知るといわゆるDurian loverとなり, 珍味を終生忘れることが出来なくなる程である.
    ドリアンはパンヤ科 (Bombacaceae) に属し, 樹高、は45mにも達し, 果実は球形または楕円形で直径15~25cm, 表面は緑から黄褐まで各色あり, また多数の刺状突起がある.Arilの色は種類によつて異なり, 白色, クリーム色から黄色まで種々ある.西部マライ群島の原産であるが現在では東南アジアの熱帯地域に広く栽培され, その北限はビルマで17゜N, アンナンで18゜N, ブイリッピンではスル群島, ミンダナオ島までである.新大陸ではドミニカその他に幾度が導入が試みられたが, 栽培に成功せず, 植物園に保存される程度である.野生型はボルネオ・スマトラ・マライ半島の森林中に発見される.
    栽培型の品種改良はほとんど行なわれておらない, 繁殖は主として種子によるが, 芽接法, 黄化法 (黄化処理による取木) なども多少試みられておる.果実は成熟時の臭が強烈なものほど味がよいとされており, また5日以上の貯蔵が出来ないので, 長距離輸送が不能の上に収穫適期が非常に短いので, 一度に多量が市場に出廻り価格が下落する傾向がある.しかしそれでも他の果物に較べて著しく高値である.
    Durio属には上記のドリアンの他に次の種が食用果実を着けることが明らかにされており, その他にも二三の野生種が食用果実を着けるようであるが, 未だ充分調査されておらない.
    1) D.kutejensis (HASSK) BECCARIライ (1ai) と呼ばれ, 樹高25m以上, 果実は卵形または楕円形で長さ20cm, 直径12cm位, 表面には多少曲つた刺状、突起を生じ, Arilは黄色がかつたオレンヂ色, 芳香で, ドリアンのような悪臭がないが, 味はドリアンに多少劣る.しかし果樹としてドリアンに較べ多くの点で優る.ただ分布地域がインドネシア領ボルネオ, 英領ボルネオの東部に野生または栽培されるのみで, それ以外の地域では難しく, ジャワなどへ導入が試みられたが, 結実するものがあつても果数が少なく原産地ほどの生産があげられない.
    2) D.oxyleyanus GRIFFITH kerantoganと呼ばれ, 40mに達する喬木で, 果実は直径15~20cmの球形, 表面は褐色がかつた緑色, また多少曲つた長い刺状突起があり, 臭が非常に強いが美味しい.マライ・スマトラ・ボルネオに野生するが, 住民はこれを栽培するのを好まない.その理由は非常に長い刺状突起のある割合に果実が比較的小さいこと, 森の中に多数野生しておるためである.重要性は上記2種に較べて少ない.
    3) D.graveolus BECCARI tabslakと呼ばれ, ボルネオ・マライ・スマトラの森林中に野生または第2次的分布のものがあり, 喬木でドリアンに似ておるがただ果実が成熟しても枝に着いたままで裂開する.従つて成熟期に木を伐り倒して収穫する.Ari1は暗赤色, 臭がないが美味しい, 猿などの野生動物が好んでこれを食べる, 現在, 本種は栽培化の初期の段階に入つたといえる.
    4) D.dulis BECCARI lakangと呼ばれ, 一般性状はドリアン・tabslakに似ておるが, ボルネオにのみ野生する.果実は直径約20cmの球形, 果実は成熟しても裂開しないまま落下する.臭はDurio属の中では最も強烈で, 野生地では成熟時には数哩の範囲に悪臭が漂い, その臭にはいかなるDurian loverも閉口する程である, Ari1は美しい黄色で, 落下した果実を二つに縦割してArilを食べる.
    5) D.grandifiorus (MAST.) KOSTERMAN & SOEGENG durian munjtlと呼ばれ, 樹高20m位, 果実は長さ20cm・直径15cmの楕円形, 黄色を帯び, 他の果実の利用出来ない地域でのみ食用される程度である.野生地は排水の良い森林に多い.
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