最近の分類によれば
Durio属には27の種 (Species) があり, その中で食用果実を着けるものは6種である.最も有名なのはドリアン (
Durio zibethinus MURRAY) で, これは東南アジアの果物の中て最もエキゾチックなもので, 吐気を催すような強烈な不快臭とその臭から想像も出来ないような美味しさがあり (食用になるのは仮種皮arirの部分で, これは受精後珠柄または胚座の部分が肥大して真の種皮の上を包む被覆物) , 一度その味を知るといわゆるDurian loverとなり, 珍味を終生忘れることが出来なくなる程である.
ドリアンはパンヤ科 (
Bombacaceae) に属し, 樹高、は45mにも達し, 果実は球形または楕円形で直径15~25cm, 表面は緑から黄褐まで各色あり, また多数の刺状突起がある.Arilの色は種類によつて異なり, 白色, クリーム色から黄色まで種々ある.西部マライ群島の原産であるが現在では東南アジアの熱帯地域に広く栽培され, その北限はビルマで17゜N, アンナンで18゜N, ブイリッピンではスル群島, ミンダナオ島までである.新大陸ではドミニカその他に幾度が導入が試みられたが, 栽培に成功せず, 植物園に保存される程度である.野生型はボルネオ・スマトラ・マライ半島の森林中に発見される.
栽培型の品種改良はほとんど行なわれておらない, 繁殖は主として種子によるが, 芽接法, 黄化法 (黄化処理による取木) なども多少試みられておる.果実は成熟時の臭が強烈なものほど味がよいとされており, また5日以上の貯蔵が出来ないので, 長距離輸送が不能の上に収穫適期が非常に短いので, 一度に多量が市場に出廻り価格が下落する傾向がある.しかしそれでも他の果物に較べて著しく高値である.
Durio属には上記のドリアンの他に次の種が食用果実を着けることが明らかにされており, その他にも二三の野生種が食用果実を着けるようであるが, 未だ充分調査されておらない.
1)
D.kutejensis (HASSK) BECCARIライ (1ai) と呼ばれ, 樹高25m以上, 果実は卵形または楕円形で長さ20cm, 直径12cm位, 表面には多少曲つた刺状、突起を生じ, Arilは黄色がかつたオレンヂ色, 芳香で, ドリアンのような悪臭がないが, 味はドリアンに多少劣る.しかし果樹としてドリアンに較べ多くの点で優る.ただ分布地域がインドネシア領ボルネオ, 英領ボルネオの東部に野生または栽培されるのみで, それ以外の地域では難しく, ジャワなどへ導入が試みられたが, 結実するものがあつても果数が少なく原産地ほどの生産があげられない.
2)
D.oxyleyanus GRIFFITH kerantoganと呼ばれ, 40mに達する喬木で, 果実は直径15~20cmの球形, 表面は褐色がかつた緑色, また多少曲つた長い刺状突起があり, 臭が非常に強いが美味しい.マライ・スマトラ・ボルネオに野生するが, 住民はこれを栽培するのを好まない.その理由は非常に長い刺状突起のある割合に果実が比較的小さいこと, 森の中に多数野生しておるためである.重要性は上記2種に較べて少ない.
3)
D.graveolus BECCARI tabslakと呼ばれ, ボルネオ・マライ・スマトラの森林中に野生または第2次的分布のものがあり, 喬木でドリアンに似ておるがただ果実が成熟しても枝に着いたままで裂開する.従つて成熟期に木を伐り倒して収穫する.Ari1は暗赤色, 臭がないが美味しい, 猿などの野生動物が好んでこれを食べる, 現在, 本種は栽培化の初期の段階に入つたといえる.
4)
D.dulis BECCARI lakangと呼ばれ, 一般性状はドリアン・tabslakに似ておるが, ボルネオにのみ野生する.果実は直径約20cmの球形, 果実は成熟しても裂開しないまま落下する.臭は
Durio属の中では最も強烈で, 野生地では成熟時には数哩の範囲に悪臭が漂い, その臭にはいかなるDurian loverも閉口する程である, Ari1は美しい黄色で, 落下した果実を二つに縦割してArilを食べる.
5)
D.grandifiorus (MAST.) KOSTERMAN & SOEGENG durian munjtlと呼ばれ, 樹高20m位, 果実は長さ20cm・直径15cmの楕円形, 黄色を帯び, 他の果実の利用出来ない地域でのみ食用される程度である.野生地は排水の良い森林に多い.
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