交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
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特集号A(研究論文)
  • 飯田 克弘, 丸橋 慧士
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_1-A_10
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    近年、工事区間始端部に正面から進入する事故が急増している。この原因として運転手、道路、車両の三要素間での問題が考えられるが、本研究では、運転手-道路系の問題に着目し、衝突事故低減に向けた工事区間での規制情報提供の提案を試みた。ドライビング・シミュレータを用いた室内走行実験を実施し、運転者の注視と車線変更位置、車線変更を判断した対象をデータとして取得した。分析結果から、車線数減少標識、道路工事中標識をこの順序で 2 枚ずつ設置し、最高速度標識を現行の設置方法に準拠し設置することが先に述べた事故のリスクを低減する可能性を把握した。この標識配置に、先行研究で特定した、遠方から視認しやすく、車線変更位置を早める効果がある標識車を組み合わせた規制情報提供が工事区間での衝突事故低減に期待できると提案した。

  • 飯田 克弘, 中田 渡月
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_11-A_19
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    交通死亡事故の多くが運転者の不注意に起因しており、広報や啓発などが多数実施されている。本研究では、向上した問題の認知を実践に結びつけるには、注意を運転と関連付けて、情報提供を行う必要があると考えた。そこで、標準検査法が確立している注意機能に着目し、機能と個別的な運転挙動との関係性を分析した。室内走行実験から車両・運転者挙動に関するデータを、走行後の注意検査から注意機能に関するデータを収集した。相関分析を行った結果、一定時間集中して作業を継続する機能が低いほど走行位置を維持できないという関連性を得た。また不要な刺激を抑制し本来の標的に意識を向ける機能が低いほど標識の視認が遅れるという関連性を得た。さらに複数の作業を同時に実施する機能が低いほど前方注視率が低くなるという関連性を得た。

  • 栗原 豊季, 山脇 正嗣, 寺奥 淳, 倉科 慧大, 森本 章倫
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_20-A_28
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    第 11 次交通安全基本計画では,交通事故の発生状況を分析し,その結果を活用する PDCA サイクルを実行することで,交通事故抑止に資する交通指導取締りの推進および街頭指導活動の強化を図っている.そうした中で既往研究では,1 日ごとの交通事故リスクを予測し,その減少量を最大化する街頭活動の実施場所と実施時間を算出するAI(人工知能)モデルを開発した.本研究では,既往研究で開発したモデルの妥当性や,実務面における利便性の検証を目的として,2023 年 10 月に警視庁新宿警察署管内において 1 ヶ月間の試行運用を行った.その後,街頭活動の事故削減効果の検証,モデルの妥当性・利便性の検証を行い,モデルの本格的な社会実装に向けて課題点を整理した.

  • 兵頭 知, 北中 幸輝, 奥嶋 政嗣, 小林 貴
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_29-A_38
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    生活道路の安全対策をより促進するため,生活道路の事故件数や交通量データ等を組み合わせた客観的データを交通事故対策実施場所の選定に活用することが期待される.そこで,本研究では,ETC2.0 データ,DRMデータ及び交通事故データを用いて,徳島県内市街中心部の代表交差点117地点を対象に交差点単位で共分散構造モデルに基づき,生活道路交差点の交通事故件数と各種交差点特性との関係について階層的に要因分析を行った.その結果,見通しの悪さが交通事故増大に直接的に影響していること,幹線道路依存度から非優先側交通量を介して交通事故に与える間接的な影響が統計的に有意であることを明らかとした.このことから,各交差点の見通しなどの交差点属性に加え,位置する道路交通状況や土地利用などの視点を踏まえて危険性が高い地点を抽出する重要性が示唆された.

  • 永田 臨, 坂本 淳, 宮崎 耕輔
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_39-A_47
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    物流業界はドライバー不足や労働時間の規制強化に直面しており,安定的な配達が困難になる可能性がある.一方,過疎地域は高齢化や人口減少により,公共交通事業の維持が課題である.本研究は,物流業界と過疎地域の課題に対処するため,路線バスを活用した貨客混載効果の検証を目的とする.全国の運送業者の営業所,人口,バスルートなどのデータを活用し,トラックから路線バスに代替可能と考えられる過疎地域を抽出した.営業所から過疎地域までのバスルートを経路探索手法により算出し,運転時間の省力化時間に基づき考察した.その結果,路線バスによる貨客混載が可能と考えられる過疎地域は 313 地域抽出された.営業所から過疎地域までの距離に基づき計算した結果,年間約 210,000 時間の運転時間が削減される可能性が示唆された.

  • 小川 圭一, 住若 高章
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_48-A_54
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    クルマ中心からヒト中心への道路の利活用を進める中で、日本の状況にあわせたロードダイエットの適用条件を明確にしておくことは重要であると考えられる。本研究では、往復 4 車線の車道を往復 2 車線に削減するロードダイエットを実施する場合の交通量や交差点密度など、日本の都市部におけるロードダイエットの適用条件を検討する。まず、アメリカで実施されているロードダイエットの事例や研究をもとに、ロードダイエットの効果や適用条件について調査をおこなう。つぎに、得られた条件を日本に適用し、都市部の道路を想定した交差点密度やバス停密度から適用条件の検討をおこなう。最後に、往復 4 車線かつ右折車線が整備されていない道路が多く存在する京都市内の道路を対象に、ロードダイエットの適用可能性の検討をおこなう。

  • 石坂 哲宏, 清水 敬仁, 大川 友也, 岸 紗也都
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_55-A_62
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では道路冠水の情報提供が冠水道路を迂回するかどうかの判断にどのように影響するかを明らかにすることを目的とする。冠水の状況を示す車載型ナビゲーションによる情報提供、冠水の深さを示す道路上の注意喚起標示、冠水区間を走行する対向車などの要因を映像で再現し、アンケート調査及びドライビングシミュレータによる実験で迂回路の選択傾向を把握した。アンケート調査の結果より、ナビでの情報提供や注意喚起標示により、迂回を促す効果が確認された。また、ドライビングシミュレータによる実験結果より、ナビの情報提供により迂回を促す効果に対して、冠水道路の走行経験が少ない層に迂回を促す効果がより高いことが示された。

  • 伊勢 昇, 柳原 崇男, 湊 絵美, 北川 博巳
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_63-A_70
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    我が国では、世界保健機関の健康の定義を鑑みて、公共交通と精神的健康並びに社会的健康との関係に着目した研究が進められつつある。しかしながら、現時点では、公共交通の健康効果の非一様性には触れられていない。また、近年、各地で普及しつつある少需要乗合交通サービス(乗合タクシー等)の健康効果について言及した研究もあまり見られない。それ故、地域公共交通の多面的価値に含まれる健康の視点を踏まえた上で、当該交通サービスの導入地域の選定や再編等に関する定量的な議論は困難な状況にあると言える。そこで、本研究では、定時定路線型乗合タクシーに着目し、当該交通サービスの利用の有無による精神的健康及び社会的健康の差に関する要因分析を行い、それぞれの規定要因とその影響度を定量的に明らかにすることを主たる目的とする。

  • 吉城 秀治, 玉置 慎, 吉本 光輝, 辰巳 浩, 田部井 優也
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_71-A_79
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    交通事故発生件数は年々減少傾向にあるが、生活道路の交通事故の減少幅は幹線道路と比較して小さくなっており、生活道路の事故発生件数の削減に向けて、交通事故リスクの高い交差点の予測は重要な課題となっている。そこで本研究では、近年発展を遂げている画像認識 AI(CNN)によるモデルを構築し、交通事故発生交差点を予測することが可能かその適用可能性を検討するとともに、交差点画像の最適な条件を明らかにすることを目的とした。モデルを実装し評価を行った結果、画像認識 AI は交通事故の予測に十分適用可能であり、その画像に関しては解像度「1,280×960px」、空色「編集無し」、交差点からの距離「10m」が最適であることが明らかになった。さらに、画像内に映り込んでいる彩度の高い建物の存在が画像認識 AI の認識に大きく影響していることも示された。

  • 植田 真生史, 中西 航
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_80-A_91
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    交差点の角地に立地する施設を右奥に見るように進入する自動車を考える.この際には必ず右折を要するため,一般的な沿道施設への進入よりも周囲の交通に大きな影響を与えうる.しかしながら,その実態はこれまで明らかになっていない.本研究では,当該の自動車が 2 つの入口を選択可能であることに着目し,その選択要因の分析を目的とする.まず,金沢市内の飲食店が立地する交差点を対象にデータの実地観測を行った.つぎに,基礎分析を行い,自車線の直進,右折および後続台数,対向車線の直進台数,信号位相の入口選択への影響を検討した.さらに,それらを変数とする入口選択モデルを推定した.その結果,右折待ち台数や直進待ち台数が経路選択に有意な影響を与えていたとともに,運転者の異質性を考慮する必要性が示唆された.

  • 戸松 稜登, 中井 万理子, 塩見 康博
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_92-A_99
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    現在、高速道路における渋滞対策として走光型視線誘導システム(以下、PML)が運用されているが、PML が車両の追従挙動に及ぼす微視的な研究は依然として少ない。そこで、本研究では、全車両走行軌跡データと PML 運用履歴データを使用し、PML 点灯時の相対速度変動特性および追従モデルパラメータの定量評価を行った。その結果、渋滞区間において PML が車両より 0~5km/h 高い速度で点灯する場合に、先行車両との速度差が小さくなり、車間距離に応じた適切な速度調整をすることが確認できた。また、ボトルネックより下流側では、PML と車両の速度差による追従挙動の違いは確認できなかった。このことから、PML は渋滞区間において車両の速度より少し高い速度で点灯することで、先行車両の加減速に応じた適切な速度調整に寄与することが示唆された。

  • 田部井 優也, 辰巳 浩, 小早川 悟
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_100-A_108
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、歩行者交通量の異なる複数の駐車場出入口における入出庫車両と歩行者・自転車の錯綜状況を調査し、誘導員がいない場合の走行状況や危険事象の発生状況について定量的に把握した。その結果、歩行者交通量の多い都心部に設置された出入口では歩行者交通量が多いために、出入口付近に歩行者がいるにもかかわらず、先に入出庫を行うような錯綜事象が多く発生していることが示された。また、都心部・郊外部ともに、右折入庫の際には左折入庫と比較し、通過時間差の短い比較的危険な錯綜事象が多く発生していることが明らかになった。加えて歩行者・自転車よりも先に入出庫を行うような錯綜事象では、歩行者・自転車の通過を待って入出庫を行う錯綜事象よりも通過時間差が短くなる傾向が示された。

  • 山田 崇史, 福田 涼斗
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_109-A_117
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、ながらスマホ経験者に、スマートフォンの利用行動と交通事故に関する意識を調査した。個人属性とスマートフォンの利用状況、歩行中や乗り物運転中のスマートフォン利用に関する意識の関係を分析するとともに、歩行中におけるスマートフォンを確認するタイミングの要因を分析した。その結果、20代、男性、長時間のスマートフォン利用者は、事故が起きない限り、歩行中にスマートフォンを利用してもよいと考える傾向が高いことが明らかになった。そして、歩行中におけるスマートフォンを確認するタイミングに大きく関連する要因は、20代~40代、スマートフォンを「ないと非常に困る」と考えている、交通ルールを守る意識が低い、歩行中や運転中のながらスマホを状況に応じて許容している等が明らかになった。

  • 大江 航介, 田中 伸治, 平原 裕大
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_118-A_126
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    我が国における歩行者の交通死亡事故の大半は道路横断中に発生しており,横断時の安全確保が大きな課題となっている.これらの対策としてバルブアウトの導入が挙げられる.バルブアウトとは,横断歩道部において歩道を車道側に拡幅し,歩行者の横断距離の短縮を図るもので,歩車の交錯機会の削減等が利点として挙げられる.そこで本研究では,単路部における無信号横断施設(標準型・二段階型・バルブアウト型)を対象に,ヘッドマウントディスプレイを用いた歩行実験を実施し,歩行者の横断行動と横断意識の両面から,各横断施設について比較分析を行った.その結果,無信号横断歩道へのバルブアウト導入により,横断時における歩行者の安全性及び円滑性が向上すると共に,ドライバーに対する歩行者の存在明示に効果的な対策であることが示された.

  • 塩見 康博, 工藤 唯楓
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_127-A_134
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    高速道路の渋滞対策の 1 つである走光型視線誘導灯は、ドライバーの視覚誘導性自己運動感覚(ベクション)に作用することで運転挙動の変容を引き起こすと解釈されることがある。しかしながら、運転行動はもとより、ベクション認知が人間の行動に及ぼす影響に関しては明らかではない。そこで、本研究では人間の基本的な行動である歩行に着目し、ベクションが発生し得る条件を複数設定した環境で歩行実験を行い、ベクションと歩行速度の関係について分析を行った。その結果、i) ベクション誘発オブジェクトに対する追従意識の強さが歩行速度の認知に影響すること、ii) オブジェクトの移動速度が、自身の歩行速度よりやや高い速度で並進する場合に歩行速度が上昇すること、が明らかになった。

  • 宮内 弘太, 高田 和幸
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_135-A_144
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年わが国では,自動車による運転の誤操作や危険運転等による交通事故の発生が深刻な社会問題となっている.運転者の運転操作が必要ない自動化運転の技術開発が行われている一方,解決すべき点が多く導入には未だ時間を要することが想定される.そのため,運転者による運転操作を支援し,事故を未然に防ぐ予防安全技術の推進は今後も必要不可欠である.本研究では,事故の発生につながりやすい運転が行われる際は,正常時とは異なる特異な走行挙動に現れると考え,運転者の異常運転を検知する手法の提案と有効性の検証を行った.手法の提案では,アプローチが異なる二つの手法を提案した.有効性の検証では,交差点での安全不注意による場面を設定し,検知を行った結果,本手法を適用することで事故発生の削減につながる可能性が示唆された.

  • 坪井 志朗, 三村 泰広, 嶋田 喜昭
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_145-A_151
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年、自転車の安全な利用に向けての法改正や周知が進んだ結果、自転車関連事故の死亡重傷事故件数が減少しているものの、我が国では他の先進国と比較して自転車乗車中の死亡事故割合が高く、依然として自転車関連事故に対する対策が必要である。本研究では、自転車関連事故の特徴を整理した上で、アソシエーション分析を用いて、様々な条件下における自転車関連事故の特性について把握した。その結果、自転車関連の死亡事故は信号がない場所での自転車当事者が65歳以上であること、対歩行者事故は単路かつ信号機がない場所での自転車当事者が24歳以下かつ衝突部位が前方であること、単独事故は単路かつ信号機がない場所での自転車当事者が65歳以上であること等の特性を示した。

  • 原山 哲郎, 加藤 哲平, 佐野 可寸志
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_152-A_162
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年、日本国内において自然災害が多発しており、道路交通ネットワークに大きな被害を生じさせている。自然災害による被害の大きさや防災・減災施策の評価にあたり、速度と密度の関係や、交通容量といった交通流特性を道路区間単位で推計することは重要である。車両感知器データにより単位時間あたりの交通量や平均速度は算出可能であるが、交通密度が低い地方部においては観測上の制約が存在し、集計値にはバイアスが含まれ、通常の最小二乗法などの回帰分析にて交通流特性を正しく評価することは難しい。本研究では、観測上の制約から生じる分散の不均一性を考慮し、加重最小二乗法、階層ベイズモデルによるマクロ交通流モデル、交通容量の推計手法を提案する。また、新潟市の国道にて 2023 年冬期に観測したデータを用い、モデルの適用性を検証する。

  • 伊藤 純, 樋口 恵一, 三村 泰広, 山岸 未沙子, 伊藤 僚, 村上 滉一
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_163-A_169
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    高齢運転者は無信号交差点における出会い頭事故の多さが特徴として知られ、事故が発生した交差点や危険な交差点をカラー化するなどの注意喚起対策を行っている。当該対策により、安全な運転挙動と連動する脳活動が確認されることが望まれるものの、その実態が明らかでない。そこで本研究では、高齢運転者の無信号交差点運転時における脳の活動状況を明らかにすることで、高齢運転者の事故が多くなる生体反応の要因を得ることを目的とした。具体的には後期高齢者が事故を起こしやすい変形交差点のVR空間を作成し、ドライビングシミュレータ運転時の脳活動を計測した。カラー舗装による明確な脳活動量の高まりは確認できなかったものの、高齢者群は非高齢者群と比較して交差点を通過し終わった後に脳活動が低下する傾向が確認された。

  • 白柳 洋俊, 江種 鼓太郎, 倉内 慎也
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_170-A_177
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    高速道路上にはドライバーに危険箇所等を注意喚起するために,看板等の情報提供施設が設置されている.しかし,ドライバーの視覚的注意は進行方向遠前方に強く捕捉される傾向があり,情報提供施設に対して十分な視覚的注意が捕捉されるに至らず,当該施設の発見遅れが生じていると考えられる.発見遅れの緩和には,視覚刺激により進行方向遠前方に捕捉されている視覚的注意を解除すること,視覚手がかりにより標的へ視覚的注意を誘導することが効果的である.そこで本研究では,視覚刺激及び視覚手がかりが標的の発見遅れを緩和するとの仮説を措定し,室内実験により検証した.実験の結果,視覚刺激による視覚的注意の解除及び視覚手がかりによる視覚的注意の誘導が確認され,仮説を支持する結果が得られた.

  • 山中 英生, 吉田 長裕, 松本 修一, 山田 一太
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_178-A_187
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    車道走行を基本とする自転車通行環境整備を進める中で,自動車左折時における自転車との安全性確保の検討が必要となっている.本研究では,左折自動車と錯綜が生じる自転車走行パターンに着目し,自転車と自動車の両者が移動操作を体験できる協調型シミュレータを用いて,交差点の安全施策を評価することを目的とした.既存研究で指摘された左折自動車と錯綜する自転車挙動として,死角並走,廻り込み横断に着目し,安全施策の異なる交差点を対象にした錯綜実験から,TTC および接近速度,被験者の不安感の指標を比較した.その結果,従来型交差点では,自転車通行帯整備,隅角部縮小に危険性の改善効果が見られることが明らかになった.さらに,諸外国で導入が進むプロテクテッド型交差点形式の評価からは,安全性・不安感改善が期待できることが明らかになった.

  • 中野 結香, 中川 晴賀, 嶋田 喜昭, 樋口 恵一, 三村 泰広, 薬袋 奈美子
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_188-A_196
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    路面装飾は、路面へ特定のデザインを施し人優先の意識や車両の走行挙動を醸成する歩車共存手法である。路面装飾の設置による速度抑制効果や注意力向上については検証されてきたが、特定のデザインのものに留まる。そこで本研究では、路面装飾のデザインの違いによる走行速度への影響の有無と既存の法定外表示との効果の違いを、DS を用いて検証した。先行研究で有効性の示されたドットデザインを基準に、ドットの配置、円の大きさ・形状、設置面積、街区単位での設置場所を変化させた6パタンのデザインと既存の法定外表示設置時の走行速度を比較した。結果、配置によっては、路面装飾が既存の法定外表示以上の速度抑制効果を持つことが示された。また、配置や設置場所によっては、先行研究以上に速度抑制効果の高いデザインがあることが明らかとなった。

  • 中川 晴賀, 薬袋 奈美子, 三寺 潤, 三村 泰広
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_197-A_204
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    路面へ特定のデザインを施す「路面装飾」は、先行研究でドライバーの人優先の意識と走行挙動の醸成に有効であることが示されている。しかし、当該研究は実験空間での検証に留まっており、成果の一般化に向けては公道での検証が不可欠である。そこで本研究では、福井県内の実際に使用される生活道路を対象として走行実験を実施し、路面装飾の有効性を検証した。人優先意識の醸成効果についてはアンケート調査、走行挙動への影響についてはアイトラッカーを用いて収集した視行動に関するデータ及び走行速度の事前・事後比較を行った。検証の結果、路面装飾がドライバーに人優先の意識を持たせ、道路進入部での空間認知の向上や、単路部での走行速度低下といった歩行者を意識した運転を促すものであることが確認された。

  • 渡邊 瑛大, 田中 伸治
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_205-A_212
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    通行機能を重視すべき幹線道路に信号交差点が数多く存在している我が国の一般道路は,実勢速度が制限速度と比べて低く,高速道路と一般道路で旅行速度が乖離している.また幹線道路の混雑は,中距離移動の円滑性や生活道路の安全性の低下など様々な問題を引き起こしており,道路ネットワークの質を向上させるためには機能階層型道路ネットワークを構築する必要がある.海外では反転交差点という新たな交差点形式が導入されており,立体交差よりも安価に交差点の円滑性や安全性の向上の効果が見られる.本研究では,反転交差点のRCUTという制御手法に着目し,シミュレーションを用いて従来型とRCUTの制御手法を比較分析し,交差点改良の新たな選択肢の一つとして我が国へのRCUTの導入による幹線道路の旅行時間の短縮と旅行速度の向上の効果を明らかにした.

  • 吉田 長裕, 御所名 航也
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_213-A_219
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    信号交差点における重大事故の最も一般的なパターンの一つは,自転車と左折車両の衝突である.本研究の目的は,自転車の通行の安全性を高める交差点角部の設計に関する基礎的な知見を得ることである.そのため,多様な自転車の通行状況にある4つの信号機のある交差点における複数の自転車と左折車両の特性を分析した.交差点においてビデオ撮影を行い,深層学習手法により物体検知とトラッキングを行い,走行軌跡データを分析した.その結果,交差点形状の違いにより,交差点に進入する左折車両と自転車の走行軌跡が異なることが明らかになった.さらに,これらの違いは左折車両の速度と旋回距離に大きく関係しており,安全指標である衝突余裕時間にも影響することが分かった.

  • 中村 孝一, 池田 武司, 丹野 裕之, 村上 舞穂, 井上 航
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_220-A_226
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    幹線道路における交通事故の削減にあたり,路側カメラで撮影した動画は,事故やヒヤリハットの発生過程を俯瞰的な画角で連続的に記録し,事故発生過程や要因の的確な把握と効果的な交通安全対策の選択に資すると考えられるが,膨大な動画からの事故やヒヤリハットの抽出に多大な労力を要する.そこで本研究では,AI 画像認識技術を活用した効率的な動画抽出手法の構築を目指す.実際の事故危険箇所で撮影した動画から物体の検出・追跡を行った上で,物体間の位置関係に基づくヒヤリハットの自動抽出を試み,目視で判定したヒヤリハット有無との比較により精度を検証した.さらに,事故分析の観点(類型・時間帯)から,類型による精度の差がないこと,昼夜間の特徴を把握するとともに,主な誤検出・見逃しとその原因を特定し,改善点を整理した.

  • 上野 宇悠, 池田 武司, 藤田 裕士, 村上 舞穂, 森山 真之介
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_227-A_234
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    ゾーン 30 プラスの取り組みの拡大には、道路管理者が活用できる物理的デバイスの知見やノウハウを蓄積することが重要である。幹線道路と生活道路の交差点のハンプ(スムーズ横断歩道)は、通行車両の速度抑制に加え、生活道路の起終点やゾーン入口を運転者に示し、注意喚起を図る効果がある。しかし、現地状況により傾斜部の延長を確保できない場合があり、標準構造のハンプ採用を困難にさせている。そこで、標準構造から傾斜部の延長、縦断勾配や平坦部の高さを変えたスムーズ横断歩道で走行実験を行い、車両挙動による客観的評価や被験者へのアンケート調査による主観的評価により、標準外のスムーズ横断歩道の構造検討を行った。その結果、標準構造より勾配を急にすることで、標準構造と同等の効果を期待できるスムーズ横断歩道の可能性が示唆された。

  • 中田 吉紀, 石坂 哲宏
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_235-A_243
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    タイの都市間国道では、U ターン車両と対向直進車との衝突事故が問題視されている。本研究では UAV で撮影した動画から走行軌跡を抽出する画像処理技術を確立し、衝突リスクを定量的に表現し評価することを目的とする。タイでは U ターン車両を認識した後に対向車両が減速する挙動が多く、対向車両の減速の有無で衝突リスクが大きく変わってくる。U ターン車両が対向車両の減速を期待したが減速しないことによる衝突リスク、対向車両が U ターン開始を見誤ることによる衝突リスクを表現する指標を提案した。U ターン車両と対向車両の交錯パターンから指標が示す状況を明確にし、指標を組み合わせることで衝突リスクが発生している事象の抽出やその頻度を車種別や車線別に示すことができた。

  • 堀田 雄介, 室町 泰徳
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_244-A_249
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    近年、多様なモビリティの普及が図られる中、電動キックボードは、持続可能で利便性の高い交通サービスとして国内外で注目されている。本研究では、電動キックボードを含めた一人乗りのマイクロモビリティについて、社会面、経済面、環境面からの総合的な評価を実施した。具体的には、第一種原動機付自転車及びこれより小規模な一人乗りのモビリティをマイクロモビリティと定義し、徒歩と軽乗用車を含めた 6 種類の交通手段に対して、経済面、社会面、環境面からの影響を 1km あたりの貨幣価値(円/km)に換算して算出した。その結果、電動キックボードよりも徒歩や自転車の方が社会経済環境便益の大きな交通手段であることが示された。また、感度分析の結果、電動キックボードは他のモビリティと異なり、安全面に関する要素の影響が大きいことが示唆された。

  • 古橋 郁一, 林 由翔, 大宮 博之, 石田 貴志, 羽藤 英二
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_250-A_256
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    本研究では、巨視的交通解析手法に基づく交通流予測の制約を踏まえて、車群内の微視的追従挙動モデルの枠組みとその評価を試みる。東名/新東名高速でOBDを用いた走行実験を実施し、得られた膨大なデータを画像処理した上で走行車両前後の車両の相対座標をデータベース化した。解析では車群位置を相対グラフとして扱った上で、時系列の位相推移の予測手法としてLong-Short Term Memory (LSTM)とGraph Neural Network (GNN)のモデル比較を行なう。感知器/検知器/カメラ間において一定の巨視的物理的法則を仮定し交通予測をする従前の方法に対して、車群内の創発的機構に基づく速度の低下はLSTMを用いても再現することは難しく、車群の位相関係をモデル化したGNNの再現性が顕著に向上することを明らかにした。

  • 嶋本 寛
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_257-A_263
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    本研究では,デジタル道路地図(DRM; Digital Road Map)の詳細な道路ネットワークから任意のサイズに集約し,かつ集約リンクにおける合成リンク容量の算出方法を提案した.提案した手法では,まず DRM の各リンクへの容量の付与,分岐しないリンク等の単純集約を行った.その上で,ロジットモデルの経路選択確率を援用し外生的に与えた代表ノードペア間に割り当てられるリンク容量を設定し,最大フロー問題を解くことにより代表ノードペア間の合成容量を算出した.提案した手法を鹿児島都市圏の小規模エリアに適用し,代表ノードペア間へのリンク容量の割り当て方法により合成容量が異なることを確認し,その原因を推察した.さらに,提案した手法を鹿児島都市圏全体に適用し,合成容量はロジットモデルの分散パラメータの値の影響を受けづらいことを確認した.

  • 髙田 啓介, 吉井 稔雄, 坪田 隆宏
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_264-A_270
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    本研究では,最初にプローブ旅行時間を用いて信号交差点各アプローチにおける交通流状態を判定する手法を考案する.続いて,判定された交通流状態に基づいて,リアルタイムにスプリット等の信号制御パラメータを逐次更新する信号制御手法を構築する.同手法においては,交通流状態を過飽和状態/近飽和状態/非飽和状態の 3 状態からなる状態変数として取り扱い,本稿にて定義する青時間使用率を用いて,近飽和状態と非飽和状態の判別を行う.また,実交差点を対象とし,実交通量を用いた交通シミュレーション実験を実施し,同信号制御手法の有効性検証を行う.検証により,本稿が提案する信号制御手法の実施によって,車両遅れ時間が短縮されるとの結果が得られた.

  • 黒田 昇吾, 佐々木 邦明, 豊木 博泰
    2025 年 11 巻 2 号 p. A_271-A_280
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    スマートフォンは現代での生活で必要不可欠なものになっており,多くの人が携帯している.そこでは Wi-Fi や Bluetooth などの無線通信が使われ,これまでに Wi-Fi パケットのセンシングで得られるデータを用いた人流解析などの研究が行われてきた.しかし近年,Wi-Fi アドレスのプライバシー保護が重要視され,端末の固有識別子である MAC アドレスの識別が難しくなっている.一方 Bluetooth 機能も様々な機器に搭載され,その MAC アドレスは約 15 分程度は変化しない規格になっている.そこで本研究では Wi-Fi と Bluetooth のハイブリッドセンサから取得できるデータの現状を整理し,Bluetooth パケットセンサから得られるデータの特性を示し,歩行者交通量の再現可能性を検証する.また,Bluetooth データの歩行者の経路分析における可能性を検証する.

特集号B(実務論文)
  • 平澤 匡介, 中村 浩, 山田 慶太
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_1-B_7
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    ワイヤロープ式防護柵は支柱が細く、車両が衝突した時の衝撃を緩和し、設置のための必要幅員も少ないことから、高速道路暫定二車線区間土工部に標準設置するレーンディバイダーとして採用された。その結果、令和 5 年 3 月末迄に全国で 1,400km 以上の区間に整備され、普及が進む過程で、ワイヤロープ式防護柵端部の斜めに張られたワイヤロープに車両が乗り上げて、ジャンプする事故が発生した。対策として、乗用車がワイヤロープ式防護柵の端部に衝突したときに、対向車線に飛び出さない能力を有しながら、衝突車両の乗員保護のために衝撃を吸収する緩衝装置の設置を検討した。本稿は、ワイヤロープ式防護柵の端部衝突事故対策としてガードレール型緩衝装置の開発について報告する。

  • 森田 哲夫, 笛木 翔太, 吉田 樹, 塚田 伸也
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_8-B_16
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    近年、わが国では、少子高齢化、人口減少に伴い、公共交通機関の利用者数が減少し、地方都市では鉄道やバス路線の廃止、減便等がみられる。本研究は、前橋市の市民団体が提案した BRT 路線計画案について、従来から交通実態の把握に用いられている都市圏パーソントリップ調査データに加え、近年使用が可能となった交通データを用い、複数の交通データを用い評価することを目的とする。群馬県 PT 調査データ、交通系 IC カードデータ、人流データを使用し、BRT 路線計画案を評価した。その結果、路線計画案は前橋市の他地域との相対的な比較において BRT を導入するために適切な路線であることがわかった。また、分析を通じ各交通データの特性を把握した。評価結果を市民が参加する公開シンポジウムで発表し、市民団体と大学提案の公共交通計画として公表した取り組みを報告した。

  • 高瀬 達夫, 角田 尚寛, 柴田 直弥, 野中 康弘, 石田 貴志, 中林 悠
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_17-B_23
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    本研究では、山間部にあたる国道 254 号の片側交互通行規制時における飽和交通流率を実測し、大型車混入率別の飽和交通流率と大型車の影響を分析した。平均縦断勾配が約 7%である対象地点では、平均飽和交通流率が 1,077 台/青 1 時間であること、大型車混入率が高くなると飽和交通流率が低くなる傾向にあり、大型車混入率 16~20%では平均 1,208 台/青 1 時間、大型車混入率 29~34%では平均 1,006 台/青 1 時間であることを確認した。大型車混入率が高くなると、大型車の加速性能の影響もあって飽和交通流率が低くなると考えられる。また、車頭時間の分析より、前車の車種に関わらず自車が大型車の場合には車頭時間の最頻値や平均値も高くなることを明らかにし、大型車が飽和交通流率に影響を与える影響が大きいことを考察した。

  • 萩田 賢司, 新井 棟大, 森 健二, 木平 真, 矢野 伸裕, 横関 俊也
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_24-B_32
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    デジタル道路地図、交通事故、交通規制データの統合分析システムを活用し、交差点事故の当事者の流入道路を特定して、自動車の進行方向や道路の方位角を考慮しながら、太陽の眩しさが交通事故に与えた影響を分析した。交差点では、太陽と 1 当流入道路の方位角差が小さいほど、相対的に交通事故が多発していた。また、1 当が右左折車の場合には、太陽位置が 1 当流入道路の真横方向まで影響を受けていることが想定され、1 当流入道路を基準にすると、非常に広範囲で太陽の眩しさが交通事故に影響を与えていた。軽車両や歩行者が 2 当である右左折時の事故は、太陽の眩しさが交通事故に与えている影響範囲がより大きかった。冬や秋には、他の季節と比較して、太陽の眩しさの影響を受けた交通事故が多発していた。

  • 森 健二, 木平 真, 萩田 賢司, 矢野 伸裕, 横関 俊也, 新井 棟大
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_33-B_38
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
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    歩行者が道路を横断できるかどうかの判断には、接近する車両までの「距離」と「速度」が影響する。この 2 変量で表される 2 次元領域について、横断できると思える領域が広いことが横断者の利便性にとって望ましいと考えられる。本研究では、横断歩道があることで、「横断できると思える領域」は広がるとの仮説を検証した。加えて、この領域が広がるのであれば、それが不安全な横断に結び付いているかを横断行動の特徴から考察した。ステレオカメラシステムを搭載した車両を走行させながらの観測によって得た約 200 件の横断事象を分析した結果、横断歩道では「横断できると思える領域」が広がっていることが明らかになった。また、この領域が広がることによって不安全な横断が生じている傾向は確認されなかった。

  • 大口 鉄雄, 鈴木 弘司
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_39-B_44
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,自転車通学で日々生活道路を利用している中学生が抽出したヒヤリハット箇所に対して,交通状況,道路構造,道路環境を分析し,また,自転車利用者および地域住民を対象に実施したアンケート調査をもとに,危険箇所に対する安全対策の有効性を定量的に評価し,危険度に応じた有効かつ住民に受け入れやすい対策を検証した.アンケート調査結果からは,生活道路において交通量の多い抜け道が危険要因として特に意識されていることが明らかとなった.さらにヒヤリハット箇所の有無と道路条件から構築した危険事象発生箇所モデルでは,交差点において主方向自動車平均速度を 2 割低下させることでヒヤリハット発生確率の低下が確認された一方,それ以上速度を低下させてもヒヤリハット発生確率の減少効果が期待できないことも明らかとなった.

  • 矢野 伸裕, 横関 俊也, 萩田 賢司
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_45-B_51
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    2023 年 7 月に施行された改正道路交通法により、電動キックボードの普及が大きく進むことが予想されるが、一方で交通事故の増加も懸念されている。2022 年 1 月より,警察庁の交通事故統計データベースでは電動キックボード等の立ち乗り型電動車事故の記録が行われており,本研究ではこれらのデータを活用し、2022 年 1 月~2024 年 3 月における立ち乗り型電動車が関与した事故についてさまざまな統計分析を行った。2023 年 7 月以降、立ち乗り型電動車の事故が急増しており、特に歩行者との事故と単独事故の増加が顕著であった。原動機付自転車や普通自転車と比べると、立ち乗り型電動車では深夜帯の事故、人対車両事故や車両単独事故、車両単独事故における飲酒者、車両相互事故における広幅員道路を走行していた際の事故の割合がそれぞれ大きかった。

  • 兒玉 崇, ペンクレアシュ ヨアン , 橋本 申, 中西 雅一, 田名部 淳
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_52-B_60
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    高速道路の合流は,高速道路の運転のなかでも,苦手意識を持つドライバも多く,特に,高速道路本線と合流車線では速度差も大きいことから,合流タイミングの判断を見誤るドライバも少なくない.そのため,本稿では,合流に伴うリスクを定量化し,合流支援に活用していくことを目標に,都市高速道路の合流部を対象に実測した車両軌跡データを用いて合流に伴う接触リスクを算出し,同リスクを活用して,合流に伴う接触リスクの発生を,ハードノーズ時点で予測する確率モデルを合流タイプ別に構築し,それらを用いて接触リスクがより低くなる合流ギャップをハードノーズ時点で簡易に判定するモデルを構築した.さらに合流ギャップの判定後,流入するギャップの前後方車両の不意な加減速等があったとしても接触リスクが発生しにくい車間関係を導出する手法を構築した.

  • 柳沢 吉保, 轟 直希, 杉村 登真, 浅野 純一郎, 高山 純一
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_61-B_72
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年激甚化する自然災害が都市機能に与える影響は極めて大きいことから、立地適正化計画において防災指針を定めることとなった。道路ネットワークが被災した場合は、被災者のみならず、重症者の生命にも大きく関わることになる。コンパクト+ネットワーク形成を進めるうえで、自然災害被災時に、設置される居住誘導区域内の消防署・分署や救命救急対応病院の立地位置を考慮した、駆付け搬送活動と重症者別の救命率の関係を評価分析する必要がある。本研究では長野市を対象に①被災道路交通網と、居住誘導区域および、災害危険区域、消防署・分署、救命救急対応病院の位置を明らかにする。②自然災害ごとに被災した道路交通網の復旧までの救急駆付け搬送救命率を明らかにする。③居住誘導区域内の人口集積度合と駆付け搬送による救命効果を評価分析する。

  • 櫻井 光昭, 上畑 旬也, 青木 隆志, 野中 康弘, 小根山 裕之
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_73-B_82
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    安全な高速道路空間の提供には日常の維持修繕工事等に加え、橋梁の床版を取替えるなどのリニューアル工事が必要である。これらの工事による渋滞も多く、精度の高い渋滞予測の提供には渋滞発生メカニズムの究明等が重要である。渋滞発生メカニズムの究明には渋滞発生直前から渋滞発生後の交通現象と交通容量の実態把握が必要であるが VTR 調査分析は多大な費用・期間を要する。一方、都市間高速道路の同一区間において車線規制形態別で発生した工事渋滞に関する交通流および交通容量の知見は見られない。そこで本稿では中央道で実施した工事車線規制を対象に、WEB カメラデータと ETC2.0 プローブデータから作成したタイムスペース図を基に速度低下伝播現象分析や渋滞伸縮現象分析等を行い渋滞発生メカニズムや交通容量の違いについて考察した。

  • 赤木 大介, 森 英高, 片岡 宏仁, 松岡 由佳, 林 通宏, 島津江 康統, 内海 泰輔, 寺岸 康介, 高木 一誠, 五十嵐 祐介, ...
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_83-B_90
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    人中心の道路の実現に向け、駅前やまちのメインストリートなどの道路整備の在り方が大きく変わろうとしているなか、多様な交通モードと歩行者が共存できる道路空間の創出が求められている。本稿では、歩行者とモビリティとが共存する広い道路空間にてモビリティ等を安全に通行させるための効果的な路側支援方法として路面に埋設可能な道路鋲に着目した。そして、歩行者向けの自発光鋲であるスマート道路鋲を新たに開発し、呉市で実施された社会実験にてその効果を検証した。その結果、明るい環境でも歩行者は道路鋲の発光に気づくこと、他地域での実績がある LED 表示板より評価が高く歩行者に注意を促す効果が期待されることなどが明らかとなった。なお、スマート道路鋲は注意喚起以外にもイベント時のライトアップなど様々な場面での活用も期待できる。

  • 秋元 伸裕, 有賀 康平, 塚田 伸也, 原田 昇, 森田 哲夫
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_91-B_99
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    自動車依存が進んでいる地方都市では、公共交通の利用が減り路線の廃止や撤退が起きている。免許を持たない高齢者にとって公共交通も利用できない状況は、外出における利便性を損なうことにつながる。デマンド交通等の交通サービスの導入が進むが、導入に際し生活に適する交通手段とならねばならない。そこで本研究では、群馬県前橋市城南地区を対象に、生活交通手段と日常生活との関係に着目した実務研究を行った。分析の結果、年齢属性、自動車運転免許の有無の要素が外出に影響していた。年齢が若く介助を要さない高齢者は、日常生活に欠かせない買物や通院の外出回数も高いことにに加え、趣味や仕事などの外出回数も高い傾向が見られた。これと比較して、介助を要し自動車免許を有さない高齢者は、買物なども含めて外出が減少している傾向が見られた。

  • 川本 義海, 土井内 悠
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_100-B_106
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    無信号交差点における一時停止率向上と速度抑制を促す目的で実施した停止線の位置変更と段差舗装の設置効果の一般性とその特質を探るために、地点特性が異なる地点における効果を比較検討した。その結果、カラー段差舗装の設置に比べて停止線の位置変更の方が一時停止率の向上に対する効果は大きいこと、住居系地区に比べると業務系地区の方が効果はやや大きいことが明らかとなった。また停止線直近での若干の速度上昇傾向が見られたものの、一時停止率の向上が見られるとともに、一時停止しない車両の停止位置も安全側に推移していることが明らかとなった。以上より、速度抑制効果は得られなかったものの、地点特性によっては効果の大小は見られるがおよそ一時停止率の向上を促し、ドライバーの節度ある安全運転挙動への改善につながっていることを示唆した。

  • 長内 圭太, 外山 敬祐, 田中 優太, 松田 雄太, 友廣 大成, 石田 貴志
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_107-B_114
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、付加車線事業の効果と交通容量の経年的な変化状況を把握することを目的として、渋滞発生状況、交通容量、車線利用率を分析した。渋滞発生状況分析より、付加車線が延伸したことで、PM の渋滞がほとんどなくなったことを確認した。一方、AM の渋滞は依然として発生しており交通容量を分析した結果、付加車線延伸後は渋滞発生時交通流率、渋滞中交通流率とも一時的に増加したものの、経年的にはこれ以降減少傾向である。特に、渋滞中交通流率は付加車線延伸前の平成 23 年に対して延伸後の令和 4 年の方が低いことを明らかにした。ただし、付加車線は経年的に利用されるようになっており、この利用状況の変化がなければ、交通容量はさらに低くなっている可能性を考察した。

  • 木平 真, 森 健二, 萩田 賢司, 矢野 伸裕, 横関 俊也, 新井 棟大
    2025 年 11 巻 2 号 p. B_115-B_122
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル 認証あり

    市街地の公道を走行する自動車の前で、道路を横断しようとする歩行者がどのような行動をしているかを、公道を走行する実験車両にステレオカメラを搭載して、歩行者までの距離を計測するというスタイルの調査を行ったところ、2人連続して横断の素振りを見せ、1人目はそのまま横断するも2人目が断念したケースが観測された。これが横断を実施するか断念するか分かれる閾値の推定に適すると考えられたことから、先行研究 3)では横断歩行者が錯綜領域を実際に通り抜けた時刻に対して車両の到達予想時刻がどの程度前後するかという指標を使いその分析を行った。本研究では、この閾値をより正確な数値に更新するため、あるいは数値の信頼性を向上するために、類似した状況における横断挙動の分析結果を加味した評価を試みた。

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