交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
2 巻, 2 号
特集号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 瀬尾 亨, 日下部 貴彦, 朝倉 康夫
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_1-A_10
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    流率密度関係(fundamental diagram,FD)は交通流の基本性質を表す重要な概念である.FD の推定にはこれまで定点観測が用いられてきたが,FD を移動体観測のみで推定できれば,定点センサがない区間でも FD を常時把握できる可能性がある.本稿は近年普及の著しい GPS 搭載プローブカーを念頭に置き,移動体観測によって収集されたデータに基づき FD を推定する方法を提案する.まず,FD の関数形を三角形と仮定し,同時に渋滞密度の値を仮定する.そして,サンプリングされた複数の車両軌跡を入力とし,自由流速度と臨界密度を推定する方法の一般的な枠組みを示す.提案した枠組みを検証するため,簡易な発見的解法を構築する.シミュレーションで得た交通データに本手法を適用した結果,推定された FD が実現象に近いことを確認した.
  • 坂本 淳, 山岡 俊一, 藤田 素弘
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_11-A_18
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    人口減少に対応した都市の縮退を考えるにあたって,経営が厳しい地方鉄道を抱える自治体がコンパクト+ネットワークの役割としてそれを主要な地域公共交通として選択するのであれば,地域住民の理解や協力が不可欠である.多くの住民にとって地方鉄道はもはや非日常的なものになってしまっていることから,まずはより多くの住民に関心をもってもらい,積極的に参加してもらうしくみづくりが必要である.本研究では,地方鉄道に関する情報提供の有無が沿線住民の意識に及ぼす影響の把握を試みた.その結果,鉄道の社会的価値の情報提供はそれに関する住民意識を変化させることがわかった.また,マスメディア等からの情報提供も住民意識の形成に影響を及ぼす可能性があることが明らかとなった.
  • 矢部 貴大, 関本 義秀, 樫山 武浩, 金杉 洋, 須藤 明人
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_19-A_27
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    自然災害による被害の軽減は重要な課題であり,防災技術の革新が急がれている.特に,災害発生後の人々の過密集を防止・軽減することは,人々の安全を守る上で非常に重要である.本研究では,予測が困難とされている災害時の数時間先の人々の流動を高精度で予測するために,災害行動モデルを用いたシミュレーションとリアルタイムな観測データをパーティクルフィルタ手法により同化する手法を提案する.提案手法を検証するため,東京都心3 区において東日本大震災の際の観測データを用い,人流推定実験を行った.その結果,高精度でリアルタイムな状況を反映した人流推定を行うことができ,さらに災害発生時の人々の挙動についても,アンケート調査によって得られた真値と近い結果が得られ,本手法による人流推定と人々の行動分析の有効性が確認された.
  • 森 博子
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_28-A_36
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    CO2排出量の削減と省エネルギーのために燃費向上が課題となっており,自動車会社により様々な低燃費車が開発されている.一方で,ドライバーの車種の選択,運転の仕方や走行経路によっても燃費の改善が見込まれる.しかしながら,例えば運転の仕方の変更や新車に乗り換えた等,それらの変更による燃費の改善効果を総合的に判断できない. 本研究では,ドライバーが,車種,走行環境,運転の仕方を変更した場合の燃費を予測可能な技術を開発した.まず,燃費への影響が想定される要因として,車種,道路特性,交通状況,運転タイプの 4 つを仮定して燃費との相関を分析した.次に,その結果に基づき燃費予測モデルを推定した.モデル検証の結果,予測燃費と実燃費の相関係数がガソリンエンジン車では 0.9 以上になり精度良く予測可能なことが分かった.
  • 堀口 良太, 桑原 雅夫
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_37-A_44
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,ある区間を走行するプローブ車両の時空間軌跡情報から,当該区間での時空間交通状態を推定する手法の理論的な枠組みを考察するものである.これは,交通量センサが設置されていない区間や,災害時にセンサがダメージを受けて情報が得られない場合でも,各種の通信手段でプローブ車両の軌跡情報が得られれば,それを元にどのような交通状態になっているかを推定し,適切な交通運用施策の実施に役立てることを目的としている.論文では,Daganzo (2005) が提唱する交通量変分理論 (VT: variational theory)を最適化問題に緩和し,プローブ軌跡を境界条件としてではなく,評価関数に組み込むことで,現実的なプローブデータへの適用性改善を試み,数値実験を通して,VT を応用した交通状態推定に関する基礎的な考察を行う.
  • 冨士 祥輝, 円山 琢也
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_45-A_51
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    トリップ・チェイン型利用者均衡配分モデルが提案されているが,基本的に短期予測を想定している限界があった.一方,将来人口分布に適合するように,現在の PT マスターデータに拡大係数を付与し,将来のマスターデータを予測するという手法が提案されている.本研究では,この 2 つの方法を組み合わせることで,長期の予測モデルにおいても,トリップ・チェインの特性を考慮し,交通混雑と需要変動の整合性を考慮した簡易なモデルが構築できることを示す.また,2 時点の熊本都市圏パーソントリップ調査のデータを利用して,このモデルの妥当性を検証する.その結果,本モデルは,高齢者の自動車トリップ数の増加などの構造変化を考慮できていないなどの限界はあるが,簡易に長期予測できる方法であることを確認した.
  • 浜岡 秀勝, 吉永 朋弘, 楊 柳
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_52-A_58
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    暫定 2 車線高速道路において工事が必要の場合、多くは片側交互通行規制となる。その場合には、IC 等の道路情報板にて、最大の待ち時間など示されている。しかし、これでは十分な情報とは言えない。なぜなら、これではドライバーが当該区間にて停止するか否か解らないからである。この状況を踏まえ、あらかじめ上下線の通行可能な時間を示す時刻表が有効と考えている。本研究では、提案する時刻表の有効性を判断するため、高速道路利用者へのアンケート調査を実施した。そのデータ分析から、8 割近くの利用者が時刻表を必要と判断したことが明らかになった。また、片側交互通行規制の経験が少ない、高速道路の利用頻度が少ない、等の属性においてはその傾向が高いことを確認できた。これら結果から特に時刻表が有効となる利用者を明らかにできた。
  • 伊勢 昇
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_59-A_64
    発行日: 2016/01/15
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    近年、運転免許を自主返納した高齢者に対して様々な特典を供与する取り組みが各地で行われている。 その一方で、運転免許返納を促進するための要因(居住地立地条件や個人属性等)も明らかになりつつある。しかしながら、運転免許自主返納特典ニーズと運転免許保有者特性との関連については明らかにされておらず、地域特性を考慮した運転免許自主返納支援事業の検討を行う上で十分な知見が得られていない。 そこで、本研究では、交通事故の減少に加えて、環境負荷の低減、公共交通の活性化につながる可能性を勘案して、幅広い年齢層の運転免許保有者に着目し、運転免許自主返納特典ニーズと運転免許保有者特性との関連分析を行うことで、地域に適した運転免許自主返納支援事業の選択や新たな支援事業の展開に資することを主たる目的とする
  • 金子 雄一郎, 芦田 佳輝
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_65-A_74
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    本研究は、鉄道の運転見合わせ時における他社線等への振替輸送のうち、路線バスに着目してその実態を把握したものである。具体的には、バス事業者が保有している振替輸送の実績データを用いて利用動向を把握した上で、運転見合わせの発生時間帯や支障時間の程度、路線エリアなどとの関係を分析した。さらに、鉄道利用者を対象に Web アンケート調査を実施し、運転見合わせ時における交通行動や路線バスへの振替輸送の利用経験の有無などを把握した。その結果、鉄道の運転見合わせ時において、支障時間が長い場合にはエリアに関わらず振替輸送の利用が多く、一方で支障時間が短い場合には、バスによる移動距離が短いエリアを中心に利用される傾向が見られるなど、路線バスへの振替輸送が一定の役割を果たしている実態が明らかになった。
  • 多田 昌裕, 飯田 克弘, 中西 誠, 安 時亨, 山田 憲浩, 蓮花 一己
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_75-A_84
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,過去 5 年間の事故調書データ解析結果に基づいて,高速道路を対象としたハザード知覚テストを作成・実施し,高齢者が高速道路上のどのような場面でハザード知覚ができない傾向にあるか検証した.40 名の実験参加者(高齢者 20 名,非高齢者 20 名)に対する実験の結果,高齢者はハザードの危険性を正しく認識できた割合を示す平均ハザード得点率が非高齢者と比べて有意に低く,ハザードを正しく知覚できていないことが分かった.また,高齢者のハザード知覚の特性として(1)本線分岐合流部や TB における他車両の行動予測,ならびに(2)複数車両に対して同時に注意を払いつつ交通状況の予測をせねばならない状況,を苦手としていることが明らかとなった.
  • 渡部 数樹, 中村 英樹
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_85-A_91
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    交錯する対向直進車と同一現示内で右折が許される丸青時のギャップアクセプタンス挙動は,信号交差点の安全性を検討する上での重要項目の 1 つである.本研究では,多車線交差点におけるギャップアクセプタンス挙動に着目し,ギャップ判断の意思決定プロセスを整理した上で,ギャップを形成する直進車の走行位置を考慮したギャップアクセプタンス判断を二項ロジットモデルにより表現した.モデル分析結果より,ギャップアクセプタンス判断には,ギャップ時間や対向直進車の速度などの要因に加え,ギャップ形成車両の車線走行位置の影響を受けていることが定量的に示された.さらに構築したモデルに基づく計算結果から,対向直進車線数が 1 車線である場合と比較して,ギャップ形成車両の配列によりクリティカルギャップの値が増減する可能性が示唆された.
  • 青山 恵里, 稲垣 具志, 小早川 悟, 森田 綽之
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_92-A_99
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    本研究は増加が見込まれる自転車交通について、交通容量や交通制御の観点から走行環境整備のあり方を検討するための基礎的知見を得ることを目的に、信号交差点における自転車の発進挙動の分析を行 った。十分な交通需要があり走行方法が均一化された状況にある自転車交通流を対象とした調査により得られたデータに基づき、車頭時間、発進遅れ、飽和交通流率について考察した。 その結果、自転車の発進遅れの影響は車頭時間特性から判断することは難しく飽和交通流率の変動から検討する必要があること、自転車は自動車よりも発進遅れの影響が後続車両に残りやすいこと、飽和交通流率は 2,900~3,200 台/青 1 時間程度で自動車に比べ捌け台数が多い傾向にあること、自転車の発進挙動は道路幾何構造や左折自動車の影響を受ける可能性があることがわかった。
  • 辰巳 浩, 堤 香代子, 吉城 秀治, 鶴丸 梓
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_100-A_107
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    車を運転できない人々の移動を支援するため、近年では地方自治体による地域公共交通確保の取り組みが進められている。しかしながら、その利用者数は当初の想定を下回るケースが多いのが実情である。 そこで本研究は、地域公共交通の利用者特性を把握し、どのような人々が地域公共交通を利用するのかを明らかにすることを目的とする。ここで、分析対象は福岡県筑前町の地域巡回バスとする。まず、地域住民を対象にアンケート調査を実施し、回答者の個人属性および世帯属性について整理するとともに、移動環境を把握した。その上で、それらの要因と地域公共交通の利用有無および利用頻度の関係性について分析した。さらに、数量化Ⅱ類を用いた需要予測モデルを構築し、地域公共交通の利用有無および利用頻度に各要因が及ぼす影響を明らかにした。
  • 松尾 幸二郎, 三村 泰広, 山崎 基浩, 菅野 申明, 杉原 暢, 廣畠 康裕, 安藤 良輔, 向井 希宏
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_108-A_114
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    近年,欧州を中心に Intelligent Speed Adaptation (ISA) が注目されるとともに,日常的な速度遵守実態に応じて報酬やペナルティを適用することで速度抑制のためのインセンティブを働かすという概念が議論されはじめている.本研究では約 5 ヶ月間のフィールド実験を行い,助言型 ISA および速度遵守インセンティブプログラム (IPNS) が,生活道路におけるドライバーの走行速度に与える影響について分析・考察を行った.その結果,助言型 ISA がゾーン 30 区間において一定の速度遵守効果を有すること,今回適用した IPNS は速度規制の無い狭幅員道路も含めた生活道路全般で高い速度抑制効果を有すること,助言型 ISA や IPNS の解除後もゾーン 30 区間では一定の速度遵守割合を保つ傾向にあること等が示された.
  • 香川 喬之, 桑野 将司, 福山 敬, 谷本 圭志, 川村 尚生, 菅原 一孔
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_115-A_124
    発行日: 2016/02/02
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    鳥取県では,鳥取大学で開発された経路検索サービスであるバスネットが導入されている.バスネットには,ログデータとして,利用者のある場所からある場所へ行きたいという希望,あるいは移動予定を表す起終点情報が含まれている.本研究では,経路検索システムに蓄積された利用者の起終点情報を移動希望と定義し,主成分分析を用いることで組み合わせ数が多い起終点情報をいくつかの特徴ある移動希望に集約し,時系列分析を用いて各移動希望の曜日変動,および月変動を求めることで鳥取市の交通特性を把握することを目的とする.分析の結果,積雪や路面凍結がある冬季の通勤・通学者の移動希望や,空港や駅と有名観光地を往来する旅行者の移動希望などの鳥取市の特徴ある交通特性が検出された.
  • 西原 大樹, 辰巳 浩, 吉城 秀治, 堤 香代子
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_125-A_133
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    本研究では、自転車専用通行帯及び車道路肩部のそれぞれ幅員の違う路線において、視点を解析することができるアイマークレコーダを用いた自転車走行実験を行い、自転車を追い越していく自動車から受ける影響に関して分析を行った。その結果、調査対象路線の中で走行空間幅員が 1m と最も狭かった路線においては、自動車の追い越し台数が増加するにつれて自らの走行場所である車道路肩を注視する時間や回数が増加していた。また、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」で望ましいとされている幅員 1.5 m以上の、幅員が 1.85 mの路線においては自転車を追い越す自動車台数が増加するほどサッカードが発生していること、それよりもさらに幅員の広い路線では注視挙動に自動車交通の影響がみられなくなることが明らかになった。
  • 四辻 裕文, 丸山 満帆
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_134-A_143
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    地方部で短距離トリップの移動手段に制約を受ける世帯員への支援策として、他世帯の所有車への相乗りがある。このような短距離ライドシェアでは、移動費用の折半といった経済的誘因付与が困難なため、運転者候補の参加の主な動機は、他人を無料で同乗させるという利他心となる。同乗者候補に比べて運転者候補の人数が多くトリップ頻度も高いという状況下で、両候補の一対一両側マッチングに基づく短距離ライドシェアのシステムを運営する場合、課題として、利他的参加者によるシステムの持続可能性がある。本研究の目的は、システム分析のモデル構築、情報誘導制度によるシステム持続可能性の分析である。シミュレーションの結果、ライドシェア成立可否の状態に対する運転者候補の期待を情報で誘導することで成立ペア数の減少を抑えられる事を示せた。
  • 葛西 誠, 早坂 信太朗, 内海 泰輔, 小田 崇徳, 寺部 慎太郎
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_144-A_150
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    性能照査型道路計画設計において、ある区間の道路構造等に対して発揮される性能を予測する関数、すなわち旅行速度を予測する「性能曲線」が必要不可欠である。しかしながら、一般道における性能曲線の推定は種々の困難のために検討が遅れていた他、一般道で起こっている複雑な交通現象を区間単位の曲線で表現するには現状では限界があることがわかってきた。そこで本論文は、区間を単位とした性能曲線ではなく面的な性能曲線の推定可能性を探る。市区町村を単位として面的に集計された QK を基本に、市区町村内の平均旅行速度が、道路交通センサスの各項目について区間長による重み付き平均をとった値によって良好に説明されることを示す。さらに、市区町村内信号交差点密度による市区町村内平均旅行速度の予測式を面的な性能曲線例として提示する。
  • 森 英高, 谷口 守
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_151-A_159
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    地方部を中心として少子高齢化等の人口に関する問題が深刻化している.またモータリゼーションの発達は,元々地域に根付いていた公共交通利用を減少させ,公共交通の衰退へと追い込んでいる.その一方,高齢化が進展し自動車が運転できなくなる者が一気に増加し,自動車以外の移動手段を確保する必要性が指摘されている.そこで,一部地域で導入が見られる「予約型移動サービス」の運行によって居住者の日常生活における不安が軽減する可能性があるか,その傾向を分析した.その結果,1) 予約型移動サービスを運行することにより,居住者の不安の一部を軽減する可能性があること,2) 個人属性によって予約型移動サービス利用促進につながると考えられる対策が異なり,導入からの時期に応じて対策を検討する必要があること,などが明らかとなった.
  • 大月 崇照, 葛西 誠, 寺部 慎太郎
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_160-A_165
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    高速道路単路部において、ボトルネックとなりうるサグかそうでないサグかを予測することは極めて難しい問題として知られている。本論文では、縦断線形の影響以外の実験条件を統一することが可能なドライビングシミュレータを用いて、追従積重ね試験を実施し、異なる縦断線形(平坦路と 2 種類のサグ)による交通流の比較を行なう。線形による影響を最も簡単に比較する方法として、最小交通流率断面の位置と、そのときの最小交通流率を指標として議論する。結果からは、平坦路とサグの流率最小位置の差異は確認されるが、2 つのサグの間での流率最小位置に明確な差が見られず、非常に緩やかなサグでもボトルネックとなり得ることが示唆される。これらを受け、サグ間の相互作用が存在する可能性など、今後議論すべきいくつかの視点を提供する。
  • 稲垣 具志, 藤澤 正一郎, 高橋 和哉, 池田 典弘, 竹内 聖人, 荻野 弘
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_166-A_173
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    市街地での移動制約が著しく高い視覚障害者の交差点横断を支援するために,視覚障害者誘導用ブロック,音響式信号機,エスコートゾーン等の施設の普及が全国各地で進んでいる.一方,横断時の方向定位の手がかりとなるこれらの支援施設や歩車道境界部の縁石等の信頼度が横断場面によって異なる状況は,当事者にとってむしろストレスを助長する要因にほかならず改善が急務の課題である. 本稿では,視覚障害者の道路横断時のより正確な方向定位を促す手法の構築を目指し,横断歩道口の視覚障害者誘導用ブロック付近へ敷設する方向定位ブロックの提案を目的として,全盲者を対象とした歩行実験を実施した.実験参加者の主観評価のヒアリングならびに歩行・方向定位状況の観察に基づき,支援性を最大限に高めるための仕様要件と敷設方法を抽出するに至った.
  • 飯田 克弘, 梶原 雄哉, 高橋 秀喜, 糸島 史浩
    2015 年 2 巻 2 号 p. A_174-A_182
    発行日: 2015/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    近年、我が国では高速道路上に設置されている情報板の判読性向上を期待し、シンボルが表示される可変式道路情報板が導入されつつあるが、現行のシンボルの中には道路利用者に正しく理解されていないものが多数存在するとの指摘がある。情報板の表示が理解し難い場合、判読時間が限られている運転環境下では、情報板手前での減速など不安全な運転行動を誘発する可能性が懸念される。そこで、本研究では、新規にシンボルを考案し、ドライビング・シミュレータを用いた室内走行実験を通じて、まずシンボルを表示した情報板の可読性と理解度を相対評価し、新規シンボルを表示した場合の可読性向上を確認した。その上で、情報板の判読が不安全な運転行動を誘発していないか把握した。
  • 張 馨, 中村 英樹
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_183-A_192
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    信号交差点における歩行者信号の適切な設定は、利用者の安全性と円滑性の確保に極めて重要である。 これらを評価するには、信号表示の時間経過に伴った横断歩行者の存在位置を知ることが有益である。 そこで本研究では、歩行者青の経過時間、待機時間長、横断歩道長と歩行者交通量等が歩行者の存在位置分布に及ぼす影響を分析し、これらを推定するモデルを構築した。その結果、歩行者青の序盤に、横断歩道手前で待機する歩行者がまとまって横断歩道に進入し、時間の経過とともに起点から遠くなり、位置分布が広がっていくことが示された。横断歩道が長いほど、待機時間長が短いほど、位置分布のバラツキが大きくなる傾向がある。さらに、推定したモデルを用いて、歩行者先行現示(LPI)設定への適用方法および適用可能な条件について検討した。
  • 樋口 恵一, 三村 泰広, 安藤 良輔
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_193-A_198
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    わが国の交通事故の発生件数・死傷者数は年々減少傾向にあるが、生活道路における事故の割合は減少していない。そのため、生活道路の交通安全対策をまちづくりと一体的に推進することが求められている。さらに、住環境で起こりうる交通事故と犯罪の対策に共通点が解説されているものの、これらの対策は個別に管理・運用され、交通事故と犯罪に共通している要因や関係性が明らかではない。そこで本研究では、交通事故と犯罪の過去の発生件数に影響している地域特性の抽出を行った。その結果、交通事故と犯罪の発生件数に共通して影響している要因として、公共施設数や住居系用途地域面積などの地域特性を抽出することができた。これらの成果は、安全・安心なまちづくりに向けて、効率的に対策を検討・推進できる基礎的な知見になると考えられる。
  • 福室 恵子, 石坂 哲宏, 福田 敦
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_199-A_204
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    燃料消費量及び CO2 排出量の推計方法に関して,近年の燃費向上や多様な車種の違いを考慮してエネルギー消費量を的確に推計できる方法が求められている。近年,米国で自動車の走行状態を表す指標として用いられている Vehicle Specific Power(以下,VSP)を用いた推計方法が海外で用いられるようになってきている。しかし,VSP をわが国で走行する車種に適用するためには,車種固有の走行抵抗に関するパラメータ推計を行う必要がある。そこで,本研究では,コーストダウン試験を行い,走行抵抗等を考慮したパラメータを推計することを目的とする。また,そのパラメータを用いて VSP を推計して,燃料消費量との関連を明らかにすることを目的とする。推定したVSP を米国で定義されている 23 区分のオペレーティングモードに分類して,モード毎の燃料消費量と VSP に有意な差があることを明らかにした。
  • 飯田 克弘, 鈴木 彩希, 蓮花 一己, 高橋 秀喜, 糸島 史浩, 田坂 真智
    2016 年 2 巻 2 号 p. A_205-A_212
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    我が国の高速道路では、情報の判読性向上を期待し、シンボルを表示する可変式道路情報板が導入されつつあるが、現行のシンボルの中にはドライバーに正しく理解されていないと指摘されるものが多い。 そこで、本研究では発生頻度や重要度を考慮して、事故、火災、落下物に着目し、これらの事象を示す新たなシンボルを考案した。そして、JIS や ISO に定められている評価試験方法を参考に、「可読性」、「理解度」、「適切性」に関する評価項目を設けて、運転状況下で上記シンボルが情報伝達に有効に機能するか現行シンボルとの比較を通じて分析した。その結果、たとえば事故の場合、細かい描写を避け、衝突事故のように発生頻度の高い具体的事象で表現することで高い評価が得られるなど、提示する情報を伝達するのに適したシンボルデザインに関する知見を得た。
特集号B(実務論文)
  • 岩岡 浩一郎, 弘津 雄三, 新倉 聡
    2016 年 2 巻 2 号 p. B_1-B_9
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    交通信号制御は継続的な高度化により交通の円滑化に長年貢献してきたが,制御パラメータ決定において幹線道路同士が交差する重要交差点の交通状況を入力としており,対象道路網全体における最適性を保証するものではないという懸案があった。筆者らは 2005 年に対象道路網における全体最適を指向する一括最適化制御をフィールド適用し効果を確認した。この制御方式は内包する交通流モデルにおいて交差点分岐率を使用しているが,このデータは交通管制システムでの計測からは得られず人手による調査を要するため適用路線の拡大が進展していなかった。そこで,我々は光ビーコンから収集されるアップリンクに着目し,それらを制御方式内の交通流モデル設定に活用するという取組みを試みてきた。本稿では,この取組みの有用性を制御の実運用事例により示す。
  • 中條 覚, 兒玉 崇, 今井 龍一
    2016 年 2 巻 2 号 p. B_10-B_14
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    本稿では、今後、一時的な車線規制に相当する情報提供が事前に行える可能性がある情報として工事予定情報に着目し、全国の主な高速道路における道路管理者の情報提供の実態を調査して VICS(道路交通情報システム)との比較分析を実施するとともに、実際に提供された工事予定情報の特性を分析し、工事予定情報に含まれる一時的な車線規制情報の活用可能性を考察した。 分析の結果、概ね全国の高速道路において工事予定情報が提供されていること、工事予定情報は先読みの情報として VICS を補完できる可能性があること、阪神高速道路で年間約 62,000 件の情報が提供されていることなどを明らかとし、工事予定情報に含まれる一時的な車線規制情報を把握する意義および可能性を整理した。
  • 永見 豊, 滝沢 正仁, 茅原 佑樹, 谷 明
    2016 年 2 巻 2 号 p. B_15-B_22
    発行日: 2016/02/05
    公開日: 2016/02/05
    ジャーナル フリー
    高速道路のオーバーブリッジに設置される横断幕は、運転者の正面に位置することから視認性に優れており、規制告知や通行メッセージなどの有効な情報伝達媒体となっている。しかし、横断幕の文字サイズやレイアウト、配色などは、管理事務所担当者の経験的判断に任されており、デザインに関する基準やガイドラインは作られていない。そこで、運転者に対する誘目性や可読性、さらに良好な道路景観となる審美性に優れる横断幕に必要なデザイン要素を探り、「夜間通行止」規制告知の横断幕デザイン推奨案を提案した。本論文では、運転環境を再現した CG 動画を用いたアイマーク実験、印象評価実験、さらに実物大の横断幕を用いた現場実験を通して得られた知見と推奨案選定の検討経緯を報告するものである。
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