交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
6 巻, 4 号
特集号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 永見 豊, 武藤 克実, 原田 秀一, 小阪 義実
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_1-A_5
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    高速道路における渋滞の発生要因の約4割がサグ部および上り坂の速度低下であり、サグ部における渋滞解消は重要な課題である。渋滞対策はハード面での交通容量を増やす工事、ソフト面でのカーナビからの情報提供や自動運転の開発など新たな技術革新が行われているが、普及するにはコストや時間がかかる。本研究ではドライバの視界の大部分を占める路面に着目し、ドライブシミュレータ実験により高速道路サグ部における速度回復に寄与する路面標示対策を探った。その結果、減速感を高めるためにアローマークを密から疎に設置ピッチを変えた案、および文字により「上り坂」「速度回復」と直接指示を出した案の効果が高いことが分かった。

  • 海野 遥香, 橋本 成仁
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_6-A_13
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    我が国の交通事故総死亡者数は交通安全対策の普及・自動車の安全装備の発展などにより減少傾向にあるが、未だに自動車乗車中の交通事故死者数は多く、事故削減により注力する必要がある。本研究では交差点直前に傾斜・カーブを有する、追突危険性の高い交差点付近の交通安全対策の実証実験行い、ラバーポールの導入による自動車速度・走行位置の事前事後変化について検証した。結果として、事前事後で自動車の平均速度が直線部分で 2.5km/h、曲線導入部分で 3.5km/h 低下し、車種別にみると、小型車/普通乗用車の直線部分の速度が約 5.0km/h 低下したことが明らかになった。また、走行位置は軽自動車・小型車/普通乗用車、バス/普通貨物車の全車種で中央車線から約 30cm 離れ、走行位置別に事前事後の速度の平均値の差の結果より、同じ位置を走行していても平均速度が大幅に減少していることが示された。

  • 永井 徹, 田部井 優也, 渡邊 浩大, 長田 哲平, 大森 宣暁, 新 吉高
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_14-A_21
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    現在,宇都宮市において LRT 導入が進められているが,全線新設型であるがゆえ導入後不慣れなドライバーを中心に混乱が懸念される.このため,LRT の走行ルールや挙動の事前周知が必要となる.そこで,芳賀・宇都宮 LRT 導入計画を例に軌道系交通特有の自動車走行環境を,HMD で視聴可能な 3DVR コンテンツを開発した.本報告では,これまで主流となる CG 動画と 3DVR の各コンテンツの体験前後でアンケート調査を行い,各コンテンツの市民ドライバーに対する PR 効果と意識変化を定量的に評価 した.その結果各コンテンツを用いた市民 PR は,LRT の走行イメージをリアルに疑似体験できることでドライバーの不安軽減に効果があることが分かった.加えて,3DVR CG 動画に比べ没入感が高く運転中の注意喚起に効果が大きい見通しを得た.

  • 山中 英生, 中川 諒一郎, 三国 成子, 尾野 薰, 岡野 玲奈
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_22-A_27
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    我が国では歩道上の双方向通行の習慣から細街路を含めて双方向通行が常態のため,自転車・自動車が交差する大半の箇所で自転車が両方向から現れる状況が交通安全上の問題として指摘されている.その中,金沢市では細街路で自転車走行指導帯の整備と街頭指導を集中して実施し,自転車の左側通行の徹底を進めている.これにより,整備路線,地区全体で自転車事故が減少していることが明らかになっている.本研究では,この面的な自転車走行指導帯と街路指導の取り組みによって,走行指導帯の延長路線や接続路線,周辺路線など指導帯未整備の地区内道路においても,左側通行が空間的に波及・浸透していることを,統計的推計モデルを用いて明らかにした.

  • 中神 勇人, 宇野 伸宏, 中村 俊之, 亀岡 弘之, 山本 浩司, 山本 隆, 丹羽 航洋
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_28-A_37
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,高速道路三車線区間を対象として非渋滞領域における速度低下要因の明確化,非渋滞領域において速度低下が発生した後に渋滞に至るか否かを判別できる要因の明確化を試みた.画像観測による交通流動調査結果を用いて速度推移図を描き速度低下要因候補を見出し,非渋滞領域での速度低下に有意な影響があるか重回帰分析により検証し,渋滞発生の有無を判別できる要因を渋滞・非渋滞のデータ数が大きく異なることに注意しつつ判別分析により検証した. 知見として,車線利用が右側に偏ること,大型車の混入,車両間の速度の分散や車群の形成状況が速度低下に影響を及ぼす可能性,渋滞が発生する際には利用率の低かった左車線が利用されるようになり,右車線の利用率は相対的に低くなることで車線利用及び速度の平準化が起こる可能性が示唆された.

  • 森 祐輔, 大枝 良直, 外井 哲志
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_38-A_47
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    自動車クラクションの発生を見ることは環境問題の改善,また道路構造や運用への改善にもつながることが考えられる.本研究では法規や運用方法も含めて考えるため,これらの異なる台湾を選び,また,進路が多岐にわたる交差点で調査を行い,いくつかの観点から分析を行った.まず,全体の交通量とクラクション発生の関係を把握した.その後にクラクション発生要因の一つである「車両の割り込み」を取りあげ,その一つのパターンについて個々の車の交通条件を考慮して,分析を行った.その結果,前半の全体の交通量からの観点では,ある交通量領域においてクラクション発生回数が多くなること,後半の「車両の割り込み」では,クラクション発生率は割り込む車の速度と割り込まれる車の速度の相対速度と割り込み方向の影響を受けることが示された.

  • 小倉 大輝, 安田 昌平, 井料 隆雅, 向井 梨紗
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_48-A_57
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    高速道路におけるリアルタイムの交通状態予測から,ドライバーは混雑を避けるために出発時刻を選択することができる.近年では交通状態を観測する多様なデータの取得が可能になり,データドリブンな予測手法の開発が行われている.広域なネットワークにおける交通状態を観測するデータとして,Electronic Toll Collection System2.0 (ETC2.0) データが挙げられるが,ETC2.0 のようなプローブデータは車両の位置・時刻情報などを取得できる一方で,比較的スパースである.データ取得間隔の長いプローブデータから,良い精度で交通状態を予測することが望まれる.本研究では ETC2.0 プローブデータを用いて,時空間交通状態のパターンマッチングにより,将来の速度コンター図と旅行時間の短期予測を行う.

  • 樋口 恵一, 渡辺 裕太, 嶋田 喜昭
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_58-A_62
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    わが国では政府やトラック協会が世界一安全な輸送を目指し、トラック 1 万台当たりの死亡事故件数の目標値を 1.5 件と定めている。トラック運送事業所は働き方改革や生産性向上が求められているなかで目標の交通安全レベルに到達するには、より効率的かつ効果的な対策を講じていかなければならない。 そこで本研究では、日常業務として作成・収集している複数の既存データを活用して、交通事故の経験に影響している要因の抽出を試みた。その結果、事故経験と関連する要因として年齢・連続走行時間・運行時間帯・速度オーバー回数を抽出した。分析精度の向上を目指してデータ量を拡大させるなどの課題はあるものの、各事業者が保有している既存のデータを活用することにより、交通安全指導を強化すべきドライバーの明確化や今後の労働環境改善に繋がる有用な知見が得られることが期待できる。

  • 謝 振宇, 星野 一輝, 山本 俊雄, 小嶋 文, 久保田 尚
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_63-A_70
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    近年、日本の生活道路における事故件数は減少傾向が鈍く、その中でも歩行中と自転車乗用中での死者数が約半数を占めており、こうした高齢者や歩行者に代表される交通弱者が被害者となる事故の発生は深刻な問題といえる。これに対し、官民 ITS 構想 2019 は自動運転の普及を推進することで、事故の防止を期待している。そこで本研究では従来の車両が先進安全車両に代わった場合、自動運転技術による事故削減効果を判断するための衝突回避モデルを構築することを目的とし、実際に発生した事故を用いて分析を行った。その結果、生活道路において先進安全自動車両を活用することで、事故防止の可能性を確認することができた一方で、車両だけでは防ぐことが難しい事故も存在しており、今後はそれらの場合に対応するための施策を考えていく必要があることが分かった

  • 古賀 亮太郎, 柳沼 秀樹, 寺部 慎太郎, 康 楠, 田中 皓介
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_71-A_78
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    今後発生が想定される首都直下型地震では,発災時の地震動によってドライバーがハンドルやブレーキ操作を誤ることにより,衝突事故ならびにそれにともなう道路閉塞の発生が懸念される.特に,震源付近を高速かつ高密度で走行している都市高速道路では,地震時のドライバーの運転行動を加味した事故被害の想定や対策案の検討が求められる.しかしながら,地震時における運転行動は観測の難しさから未だに十分な知見が得られていない状況にあり,より一層の解明が求められる.本研究では,DS を用いた室内走行実験により地震時を想定した運転行動データを取得した.その結果,緊急地震速報の情報提供のタイミングによって,減速行動が異なること,運転頻度の少ないドライバーほど地震時の特異な減速行動を取りやすいことが示唆された.

  • 山中 亮, 神谷 大介, 比嘉 健人, 和田 賢哉, 具志堅 清一, 澤部 純浩
    2020 年 6 巻 4 号 p. A_79-A_84
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー

    近年、訪日外国人の増加とともに、急増する訪日外国人レンタカー利用による事故を防止するため、警察庁、国土交通省、民間事業者などにより、各種取り組みが推進されている。しかしながら、早急な安全対策が必要とされているものの、原因が特定できていないため、具体的な対策に結びついていない。 本研究では、沖縄本島を対象として ETC2.0 プローブデータを用いて、居住者、日本人レンタカー利用者及び訪日外国人レンタカー利用者(居住地別:台湾、韓国、香港)の急制動発生箇所比較を行った。 結果、既存の事故危険箇所の特定方法では、見落とされる可能性が高い訪日外国人ドライバーにとって危険な区間を特定した。この区間の道路交通環境を比較し、訪日外国人ドライバーによる急制動と道路交通環境の関係を明らかにした。

feedback
Top