交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
7 巻, 4 号
特集号
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特集号A(研究論文)
  • 松村 翼, 鳩山 紀一郎, 木村 大地, 佐野 可寸志, Faniya SULTANOVA , Valentina BARABANSHCHI ...
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_1-A_7
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、渋滞下のドライバーに対して適当な副次課題を与えることにより、ドライバーの精神疲労や知覚時間が軽減されるだけでなく、運転のパフォーマンスが向上する可能性にも着目し、ドライバーが運転操作以外の副次課題を行うことの影響を明らかにすることを目的とする。具体的には、渋滞下での運転操作を模した室内実験環境において 15 分間にわたり 4 種類の副次課題を課す実験を行い、その影響を反応遅れ時間や多角的な心理指標によって計測を試みた。結果として、副次課題によって注意レベルに明確な差異は生じない一方、受動的な副次課題は知覚時間を増大させ、能動的な副次課題は短縮させる効果がみられた。また、「会話をする」という能動的な副次課題は、男性のストレス及び疲労は軽減させるが、女性の場合は増大させる可能性が明らかとなった。

  • 辰巳 浩, 吉城 秀治, 堤 香代子, 木佐貫 潤也, 水尻 翼
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_8-A_14
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    自転車と自動車を車道で混在通行させる「車道混在」は、両交通の安全性や円滑性について特に留意する必要がある整備形態といえる。本研究では、自転車を追い越す自動車の挙動に着目し、片側 1 車線の車道混在型道路で、どの程度の車線・路肩幅員でどの程度の交通量であれば自動車の走行に影響を及ぼさないかを検討した。

    普通車のみが走行する仮想空間での走行実験から、路肩のない車線幅員が2.75mの道路では、実験を行った交通量の範囲においてはどの水準の交通量でも車道混在としての通行形態は影響が生じることが明らかになった。路肩幅員が0.5m確保されている場合では、750台/hまでの交通量であれば影響は生じず、さらに車線幅員が3.00mで路肩幅員も0.75m確保されている道路では実験を行った交通量の範囲においては影響は生じないことを明らかにしている。

  • 森田 哲夫, 小林 光希, 塚田 伸也, 松田 拓也
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_15-A_24
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    地方都市においては高校生の通学交通の自転車分担率が高く、通学時の生徒数当たりの交通事故が多い。本研究では、通学時の自転車事故の多い地方都市の高等学校において交通安全に関する主権者教育を実施し、教育実践を通じた高校生の交通安全意識について検討することを目的とする。

    本研究においては、2 学年の高校生を対象としたアンケート調査を実施し、自転車通学時に交通事故の危険性にさらされていること、高校生は自分の身を守りながら通学していることがわかった。交通安全教育による交通安全意識の変化を分析したところ、意識の向上効果は小さいことが明らかになった。また、自転車交通安全意識と日頃の生活に関する行動・意識の関連を把握した。

  • 古森 開, 高山 宇宙, 三浦 清洋, 成嶋 良太, 森本 章倫
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_25-A_32
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    現在、革新的なモビリティの選択肢として自動運転車の導入が検討されているが、自動運転導入においては安全な走行空間の確保に加えて、路上での駐停車をどう制限するかが課題となる。そこで本研究では、ミクロ交通シミュレータを使用し、平均旅行速度を評価項目として用い、自動運転普及社会における車両性能や乗降空間、その周辺環境要因が与える影響の把握を行った。加えて、これら要因の組み合わせより停車を限定すべき街路環境を明らかにした。その結果、停車頻度の増加や右左折率の増加は旅行速度を低下させる要因であり、接続道路への右左折率が高い場合は停車頻度や車両性能によって乗降空間の設置を許容すべきでないことが明らかになった。

  • 葛西 誠, 長谷川 裕修, 邢 健
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_33-A_39
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    渋滞発生地点のサグの縦断線形だけではなく、その 1 つ上流にあるサグの縦断線形も渋滞発生地点を説明する要因であることを指摘する。東北自動車道一部区間の 2016 年 1 年間の車両感知器データを用いて、渋滞発生時刻および発生位置を抽出し、渋滞発生の有無と、渋滞発生直前の交通量、発生地点のサグの縦断勾配変化率、1 つ上流サグの縦断勾配変化率等とを対応づける。これらを用いてロジスティック回帰分析を行うと 1 つ上流の縦断勾配変化率も有意な変数と判定される。一方、1 つ下流サグの縦断勾配変化率は有意ではない。続いて、当該サグの縦断勾配変化率と 1 つ上流サグの縦断勾配変化率を説明変数とするパラメトリック生存モデルによって渋滞発生確率曲線を求める。

  • 中井 良輔, 小澤 友記子, 中村 俊之, 和田 沙織, 森川 高行
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_40-A_46
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    自動運転の技術開発が世界各地で進められ,実証実験や法整備が分野横断的に展開されている.本研究では,市街地一般道路において低速自動運転車両が交通流及び後続車両に与える影響を把握することを目的とする.具体的には,愛知県豊田市における実証実験での観測調査で収集したデータを分析した結果,信号交差点では低速自動運転車両が混入することで車頭時間が増加し,通過交通量が減少することが確認された.また単路部において,自動運転車両の後続車両における車間距離が著しく小さくなる傾向が見られた.低速自動運転の追従車両は,車間距離が小さい接近した追従を長時間行っていること,さらに多くの後続車両は,黄線にも関わらず,追い越しを実施することが明らかになった.

  • 伊藤 颯太, 佐野 可寸志, 鳩山 紀一郎, 伊藤 潤, 平沼 昇
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_47-A_54
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    近年では交通事故削減のための施策として、交通事故リスクの情報提供による安全性の高い経路への誘導が提案されている。これまでの研究から事故遭遇リスクの提供は経路選択行動へ影響を及ぼす可能性が高いが、事故発生リスクの場合は経路選択行動に影響を及ぼすとは言えないという研究成果が得られている。そこで、本研究では交通事故リスクが比較的高い冬期の交通を想定し、降積雪情報と交通事故リスク情報の両方を提供した場合の経路選択行動について明らかにすることを目的として、新潟都市圏に居住または職場があるドライバーを対象にWebアンケート調査を実施した。その結果、降積雪を考慮した場合も事故遭遇リスク情報を提供した場合は経路選択行動に影響を及ぼすことが確認できたが、事故発生リスクの場合は影響を及ぼすことが確認できなかった。

  • 長谷川 裕修, 新屋敷 学, 葛西 誠, 田村 亨
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_55-A_64
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    地方部における公共交通の代替・補完手段としての自動運転車への期待は大きい.本研究は生活道路に自動運転車が導入された場合に地域の安全性にどのような影響を与えるかを検討することを目的とする.見通しが悪く車両側に一時停止規制がない交差点における歩行者・自転車利用者と車両との接触可能性をモデル化し,このモデルを用いて秋田県秋田市飯島長野中町において自動運転車が導入された場合の地域の交差点部周辺での安全性を評価した.自動運転車と従来車両(通常反応)の比較により,歩行者事故は98.5%の減少,自転車事故は25.7%の減少,歩行者事故において衝突回避可能な低速域がないケースは93.3%の減少,同じく自転車事故においては66.7%の減少となり,自動運転車導入による地域の安全性向上が期待できることが明らかとなった.

  • 陳野 由, 柳沼 秀樹, 寺部 慎太郎, 田中 康介
    2021 年 7 巻 4 号 p. A_65-A_74
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    大規模災害による道路ネットワークリンクの被害は,被災地の孤立や救援の遅延など人命に関わる重大な問題を引き起こすとして問題視されている.そのため,災害時においても拠点間の接続性を担保する強靭なネットワークを作るためには「選択と集中」を考慮した耐災害性を加味した道路整備が必須となる.しかしながら,強靭化に向けた効率的な整備順序はいかにして决定するべきかという問題が存在する.本研究では、国土交通省が道路整備評価に用いている「道路の防災機能評価」に深層強化学習を組み合わせた整備順序最適化モデルの構築を行う.簡易ネットワークに適用した結果,全整備順序パターン数に対して,全探索と比べて少ない探索で効果的な整備順序を探索可能であることが確認された.将来的には整備期間の導入と大規模ネットワークへの適用を行うことで,限られた予算の中で早期に耐耐災害性の発現を目指した整備順序の提案が期待される.

特集号B(実務論文)
  • 横関 俊也, 萩田 賢司, 矢野 伸裕, 森 健二
    2021 年 7 巻 4 号 p. B_1-B_9
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、「貨物集配中の車両に限る駐車可規制」の影響を把握するために、規制実施前後の駐停車状況の変化を、現地調査により分析した。その結果、規制実施と共に設置された貨物集配中の車両に対する専用の駐車枠内への貨物車の駐停車が増加し、規制実施前に同予定地点に多く駐停車していた貨物車以外の車両が駐車枠外で増加する傾向を確認できた。駐停車目的別の分析では、私用や送迎目的の駐停車の割合が駐車枠内において低くなり、駐車枠内での貨物車の駐停車機会確保につながっていると考えられた。駐停車時間は、駐停車目的により大きく異なり、規制実施後の業務や集配による駐停車は、96%が 30 分以内で、92%が 20 分以内となっていた。また、規制実施後は駐車枠設置箇所の平均駐停車時間が短くなっていた。

  • 窪田 晃英, 坂本 淳, 永田 臨
    2021 年 7 巻 4 号 p. B_10-B_16
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    大規模災害は広域的な道路の寸断をもたらすことから,発災後は負傷者の緊急搬送や支援物資の輸送等の災害応急対応を迅速に行うための早期の道路復旧が必要である.わが国では東日本大震災の道路啓開を教訓とし,特に津波による広域的被害が想定されている沿岸部の地域で道路啓開計画が策定されているが,復旧プロセスの効率性という点で課題が残る.

    本研究は,災害による寸断が想定されている区間が救援ルートとして選定される頻度と復旧日数を考慮し,早期に救援ルートの復旧率を高める方策の検討を行う.同一の復旧段階となる被災想定道路のうち,短期に復旧が可能で,より多くの救援ルートとして指定されている区間から優先的に復旧させることで,短期で復旧率の改善を目指す手法を提案する.

  • 永見 豊, 久保 慎佑, 原田 秀一, 青木 秀剛
    2021 年 7 巻 4 号 p. B_17-B_21
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    日本の高速道路では逆走が毎年 200 件も発生しており、様々な逆走対策が実施されている。しかし対策導入後も依然として発生しており、効果的な逆走対策を検証する必要がある。本研究では、逆走の原因となる高速道路インターチェンジ出口部での誤進入に着目し、一般道から左折してすぐに進路を判断することになる横浜横須賀道路浦賀インターチェンジ出口部をモデルケースとして、誤進入防止対策の比較評価を実施した。カラー舗装、注意看板、左専用レーンの組み合わせによる対策案に対して、ドライバ視線の CG 動画を用いて誤進入への気づきの評価実験を行った。その結果、注意看板による「注意喚起」よりもカラー舗装による「進路誘導」の方が誤進入に早いタイミングでの気づきに効果があることが分かった。

  • 金 進英, 石原 雅晃, 兒玉 崇, 大藤 武彦
    2021 年 7 巻 4 号 p. B_22-B_30
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、主にサグ部区間で発生する渋滞緩和のために運用する速度回復誘導灯について、渋滞緩和効果が効率的で最大化できる動的な運用方法を構築することを目的とする。サグ部区間における渋滞先頭位置の変動や渋滞範囲が異なる渋滞パターンを考慮して、対象区間を区分するブロック別交通状態を分析することで、渋滞パターン別点灯速度の運用方法設定の必要性について議論する。また、運用した点灯速度設定ケース別交通データをもとに、渋滞パターン別点灯速度と観測交通データの関係を分析することで、適切な点灯速度を抽出する方法を提案する。最後に、提案した点灯速度の抽出方法に基づいて、速度回復誘導灯運用システムに導入可能な、渋滞パターン別点灯速度の設定値及び点灯速度の運用方法を提案する。

  • 我妻 智世, 長田 哲平, 大森 宣暁, 古池 弘隆
    2021 年 7 巻 4 号 p. B_31-B_40
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    中心市街地の現状を把握する上で、調査員による歩行者通行量のカウント調査が行われてきた。しかし、従来のカウント調査では調査に要するコスト上の課題から、長期間や高頻度での調査は行われていない。そこで本研究では、歩行者及び自転車通行量を自動計測する PYRO-Box と自転車通行量を自動計測する Urban-ZELT を用いて、長期にわたって連続したデータを取得した。中心市街地の複数地点で計測したデータをもとに、中心市街地の通行量実態や通行量が変動する要因を明らかにした。要因として、気温の変動、店舗構成の変化、イベントの開催等が挙げられる。また新型コロナウイルスの影響を受け、日本政府は緊急事態宣言を発効した。外出自粛を求められる現在、自動計測器で得られたデータをもとに、通行量への影響度合いを定量的に示した。

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