交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
特集号: 交通工学論文集
12 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 矢端 伸一朗, 坪田 隆宏, 吉井 稔雄, Jian XING, 倉内 慎也
    2026 年12 巻4 号 p. A_1-A_9
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,東名高速道路上り線4.7KPにおける10年間の交通流データと川崎高架気象観測局の風況データを統合し,風を進行方向に整合した三成分(向風・追風・横風)で風況とマクロ交通流の関係に関する基礎分析を行った.母集団は降雨0 mm,昼間,非渋滞流(平均速度60 km/h以上)に限定し,風の影響を明確化することを目的とした.分析では,風速階級別のQV図により視覚的傾向を把握し,さらに年別×交通流率ランク別(200台/時刻み)の風速–平均速度相関を算出した.その結果,向風は速度水準の低下を伴い負の相関が多く,追風ではわずかな速度上昇が見られるものの,年によって相関の傾向が異なることが確認された.横風は影響が顕在化しにくいと想定されたが,全体として弱い正の相関が得られた.これらの知見は,風の力学的影響がマクロ交通流に及ぼす影響を実証的に示唆している.

  • 飯田 克弘, 阪本 浩章, 山本 敬太
    2026 年12 巻4 号 p. A_10-A_19
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    効果的な事故対策の立案には,事故実態のみならず事故に繋がる危険な状況の把握が重要である.これまでもビデオ解析による車両挙動把握が行われ,近年では,CCTVや遠赤外線カメラ等を活用した事故の自動検出が試みられているが,事故に繋がる可能性のある車両挙動を任意の時間・空間範囲で簡便に把握する手法は確立されていない.本研究では,テレマティクスデータに対し,オートエンコーダとLSTMの2つの機械学習による異常検知を行うことで,高リスク車両挙動の抽出を試みた.松山自動車道・川内ICを対象に試行した結果,料金所ブース手前での急な進路変更,本線から出口への分流部での急な進路変更を含む走行軌跡のふらつきや路肩停車等が抽出できた.また,オートエンコーダの方が,高リスク車両挙動の抽出に適している可能性を見出した.

  • 長田 陸, 赤羽 弘和
    2026 年12 巻4 号 p. A_20-A_28
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、車両の並進運動の状態方程式と射影変換式に組み込んだ観測方程式に拡張カルマンスムーザを適用し、複数カメラによるビデオ画像上のトラッキングデータに基づいて、車両の走行軌跡を最小二乗推定する手法の精度改善を目的とした。第一に、同一区間を複数の角度から撮影したビデオ画像上のトラッキングデータを使用することによる精度向上効果を評価した。第二に、一部の角度からのビデオ画像において画面上の車両の重なり(オクルージョン)によりトラッキングデータが取得できなかった場合に、走行軌跡推定の実行可能性と精度低下の度合いを評価した。周回コース上を走行させた観測車両の RTK-GNSS 測位値を基準として推定精度を評価したところ、複数角度からの撮影による精度向上効果、およびオクルージョン対策効果を確認した。

  • 山本 由太, 中山 裕介, 松本 修一, 小嶋 文
    2026 年12 巻4 号 p. A_29-A_35
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    自転車の重大事故率は、単路部などと較べトンネルの内部では非常に高いことが指摘されており、トンネル内での自転車の安全な走行空間の確保に関しては早急に考えていくべき問題である。本研究では、トンネル内での自転車走行においてハンドルライトの効果を検証するため、ハンドルライトの有無の2条件において、プローブ自転車を用いた比較実験を西伊豆町の黄金崎トンネルで行った。具体的にはトンネル内の自動車の自転車追越し時の離隔距離、衝突余裕時間(TTC)などのデータを収集し、分析を行った。その結果、ハンドルライト有りでの走行の方が、追越し時の離隔距離が長くなり、TTCも大きくなった。このことは、ハンドルライトの装着により、自転車と自動車の追突リスクが軽減されることを示唆している。

  • 大窪 智博, 冨岡 秀虎, 森本 章倫
    2026 年12 巻4 号 p. A_36-A_44
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    従来、移動は目的地での活動のためにやむなく行われる手段、すなわち派生的需要に依ると捉えられてきた。一方、近年は次世代交通や観光列車の導入等が盛んで、移動自体が目的となる需要、移動の本源的需要を評価する必要が高まっている。そこで本研究では、本源的需要・派生的需要双方による移動が含まれる路面電車に着目し、移動の本源的需要の評価を行う。アンケート調査を通じて、路面電車の利用には一定程度本源的需要が含まれることや、年齢によって本源的需要が発生する要因が異なることが明らかとなった。さらに実際の行動データの分析を通じて、本源的需要による行動は路面電車の路線の特性により異なることが示された。路線の特性や利用者の特性に合わせた沿線の空間整備や賑わい創出事業等、本源的需要に合わせたサービスの創出が有効である。

  • 吉城 秀治, 中村 唯人, 辰巳 浩, 田部井 優也
    2026 年12 巻4 号 p. A_45-A_53
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    近年、子どもの熱中症による救急搬送件数は増加傾向にある。特に通学時における熱中症リスクを低減するには、児童の通学状況・通学環境を把握する必要があるが、その実態は十分には明らかにされていない。そこで本研究では、全国の小学生をもつ保護者8,700名を対象としたアンケート調査を基に、通学路における熱中症リスクと環境要因の関連性を分析した。通学時間や交通手段などの下校環境や、歩道整備や交通・防犯に関する通学路の周辺環境との関連を検討した結果、これらが熱中症経験と有意に関係していることが明らかとなった。特に、「犯罪に対する安全性」の評価が低い地域では、熱中症経験者の割合が高い傾向が見られた。これらの結果は、通学路における暑熱対策において、通学状況・通学環境も考慮した取り組みの重要性を示している。

  • 披田 曉, 吉井 稔雄, 倉内 慎也
    2026 年12 巻4 号 p. A_54-A_60
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、ラウンドアバウト(以下「RAB」)、および無信号二段階横断(以下「二段階横断」)と無信号横断歩道(以下「横断歩道」)、いずれも運用時にエネルギーを要しない交通制御施設を取り上げ、ドライビングシミュレータを用いた走行実験を通じて、これらの施設の設置が走行速度に与える影響を明らかにする。実験では、集落部を通過する幹線道路を想定し、集落入口に RAB と二段階横断を、集落内に横断歩道と二段階横断を設置した場合の走行速度低減効果を評価する。実験の結果、集落入口への RAB、二段階横断設置、さらには集落内への二段階横断設置が走行速度抑制効果を有することが示された。さらに、集落入口と集落内に交通制御施設を組み合わせて設置する場合、その設置間隔によっては速度抑制効果が限定的になることが示された。

  • 満田 慎之裕, 塩見 康博
    2026 年12 巻4 号 p. A_61-A_69
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    高速道路における交通渋滞および交通事故は、社会に負の影響をもたらす重要な課題である。本研究では、動的交通流管理(ATM)のメニューである可変制限速度制御(VSL)に着目し、深層強化学習を用いることで渋滞リスクの低減および旅行時間短縮を実現する制御手法を構築した。異なる交通条件下において学習モデルを構築し、その有効性を評価した。分析の結果、従来の固定された制限速度設定と比較して、本研究で提案する学習モデルによる制御では平均旅行時間が短縮されることが確認された。また、モデルの学習精度は学習時の交通量設定に依存することが明らかとなった。さらに、報酬の設計において、個別リンクではなく路線全体の旅行時間を採用することで、より効果的なVSLアルゴリズムの構築が可能であることが示された。

  • 久々宮 悠介, 小根山 裕之, 柳原 正実
    2026 年12 巻4 号 p. A_70-A_81
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    信号制御設計の照査においては、交通需要が捌けることのチェックとして、設計時間交通量qが交通容量Caを超えないこと、すなわちq/Ca<1.0となることを確認することとなっている。この場合、需要、容量ともに変動しない前提においてはq/Ca<1.0の条件で常に容量は需要を上回るため捌け残りは生じない。一方で、実際には需要、容量ともに短期的に変動することから、変動の影響を考慮してq/Caの上限値である照査基準値を適切に設定する必要がある。しかしながら、その設定手法については検討が十分になされていない。そこで本研究では、需要、容量のサイクルごとの変動を考慮した簡易シミュレーションによる数値分析を行い、各変動を考慮した場合の照査基準値は1.0よりも相当低い値を設定すべきであることを提示した。

  • 國重 啓, 佐々木 邦明, 内田 成司
    2026 年12 巻4 号 p. A_82-A_88
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,予測困難な短時間の大雪により大規模な車両滞留が各地で頻発し,車内に取り残された人々だけでなく道路ネットワークを利用する広範囲の人に多大な被害や経済的損失をもたらしている.本研究ではミクロ交通流シミュレーションと観測された交通量を用いて,降・積雪状況時に観測される交通状態を適切に表現する最適車両パラメータの動的な変化を推定した.パラメータ変化と気象条件および除雪活動などとの関係を分析し,降雪,気温,除雪や凍結防止剤散布などの状況を踏まえて,大幅な通行速度の変化を検出する可能性を示した.今後リアルタイムデータを用いて交通流を自動的に再現し続け,車両滞留につながるような通行速度低下などの短期予測を実現し,運転の取りやめなどを促す情報提供につなげる成果を示した.

特集号B(実務論文)
  • 長嶋 右京, 河本 直志, 土肥 学, 田中 良寛
    2026 年12 巻4 号 p. B_1-B_9
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    設計基準交通量の算出に用いられる可能交通容量は、実現最大交通量を基に設定された基本交通容量に大型車の混入や幅員・沿道状況といった道路・交通条件による補正率を乗じて算定される。先行研究では、可能交通容量の算出方法及び各種補正率について見直す必要性があることが報告されている。本研究では、全国の高速道路と直轄国道における近年の常時観測交通量データを用いて実現最大交通量及び可能交通容量を整理し比較検証を行い、現在の可能交通容量の算出方法の課題点を分析した。結果、各種補正率と実際の交通容量について車線数毎に一定の変動特性までは検証したデータからは見られなかった。また、可能交通容量の算定値は道路種別や車線数によっては近年の実現最大交通量より大きいことから、算定方法の見直し等が求められることを確認した。

  • 市村 康平, 佐野 昌嗣, 稲吉 龍一, 青木 隆志
    2026 年12 巻4 号 p. B_10-B_17
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    中央自動車道下り線勝沼 IC 付近は長い下り坂と左右のカーブが連続する区間であり、事故が多発していた。対策は講じているものの 2023 年 10 月に多重事故と死亡事故が連続的に発生した。事故データや ETC2.0 プローブデータを用いて事故の特徴を分析した結果、当該区間全域の速度抑制が効果的であると考えドット標示と V 字導流レーンマーク、滑り抑制として薄層舗装を施工することとした。効果検証の結果、区間全体では平均 97.0km/h から 93.4km/h の速度低下効果があった。急減速回数は対策前より複数地点で多く発生しており、路面標示を追加したことでブレーキを踏む場面が増えたことが考えられる。当該区間全体の速度が低下し、ドライバーの運転挙動の安定性向上を図ることができた。

  • 佐藤 尚, 外山 敬祐, 上野 渉, 松田 雄太, 中林 悠, 石田 貴志
    2026 年12 巻4 号 p. B_18-B_25
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、東京外環道(内)のボトルネック戸田西 IC 付近における PML を対象に、先行研究の持続効果分析に最新年データを追加した効果のモニタリングを継続するとともに、令和 6 年に実施した消灯実験に伴う比較分析を行うことで、PML による渋滞対策の再評価を行った。持続効果分析の結果、交通容量は対策直後に対策前と比べて増加したものの、対策直後から 4 年後までに年々低下傾向であることを改めて確認した。さらに、消灯実験に伴う比較分析により、PML を再評価した結果、数多く展開されている PML のうちの 1 区間の知見ではあるものの、対策 4 年後(令和 6 年時点)において、PML 消灯時と点灯時で交通容量に差がないことから、当該ボトルネックにおける PML による対策効果が消失した可能性があることを示した。

  • 須川 清諒, 中山 裕昭, 石川 光, 織田 穣
    2026 年12 巻4 号 p. B_26-B_30
    発行日: 2026/04/01
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    高速道路本線や出入口での逆走や誤進入は,交通事故に直結する重大事案である.その発生を正確に検知し,速やかにお客様に警告することができれば,事故や二次被害を抑制することが可能となる.著者らは都市部の高速道路出入口に,三次元レーザレーダを用いて逆走・誤進入を検知するシステムを設置し実証実験を行った.この実験では,逆走・誤進入の検知や誤進入者を識別するロジックを構築し,その結果,逆走や誤進入を実用上十分な精度で検知できることを確認した.また,誤進入者に警告する機能の構築,逆走や誤進入の発生を交通管制室や料金所に通知する機能の構築を行い,これらシステム導入が高速道路の安全性向上に寄与していることを確認した.

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