ペンギンはどこまで深く潜るのか。鳥はどれだけ長く飛び続けるのか。野生動物の調査は目視観察が基本だが、決して簡単ではない。動物の行動は人間が観測できる能力や範囲をはるかに超える。遠く深く動物を追い続けられる研究手法として期待されているのが、バイオロギングだ。各種センサーを搭載したデータロガー(記録計)を動物に装着して、体温や速度、姿勢の変化を記録する。いわば「動物目線」で測定したデータから、人間の目では見ることのできなかった行動や生息環境を描き出す。
群れをなして大海原を泳ぐ魚類の生態を解明するには、多くの個体の高精度なデータが求められる。北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの宮下和士教授らは、低価格で高性能なロガーの大量放流と受信ネットワークを駆使して、データ回収率を高めた次世代型バイオロギング・システムを開発している。
バイオロギングで得られたデータから、動物の行動や生態のみではなく海洋の状態(海況)を知ることはできないか。そんな驚きの発想で、海洋生物の行動に関するデータから生息環境の情報を推定し、その情報を気象のシミュレーションに活用しようという意欲的な試みが、東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授を中心に進められている。
バイオロギングの課題の1つが、動物に装着したロガーで取得したデータをいかに回収するかだ。これに対し、東京大学空間情報科学研究センターの小林博樹准教授は、動物の習性を上手に利用することによって、効率的かつ低エネルギーで多数の個体のデータを集めようと試みている。
日常的に身に付けて血圧や心拍数などを測定するウエアラブルセンサーは、健康管理に有効なツールとして期待されている。名古屋大学大学院工学研究科の新津葵一准教授は、涙に含まれる極微量のグルコースで発電し作動する0.6ミリメートルの血糖センサーを開発した。
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