我々は最近, 2家系5症例の家族性脳動脈瘤を経験した.第1の家系は, 67歳女性, 64歳女性の姉妹例であり, 第2の家系は, 63歳男性, 50歳女性, 35歳男性の兄, 妹, 妹の息子の3症例である.いずれもくも膜下出血にて発症し, 前記4症例は動脈瘤のneck-clippingを施行し, 現在社会復帰しているが, 35歳男性の1症例は重篤な脳血管攣縮のために死亡している.脳動脈瘤の家族内発生については, 現在までに70家系161例が報告されており, 発生部位は一般の脳動脈瘤と異なり, 中大脳動脈瘤が多く, 前交通動脈瘤が少ない.これについては統計学的にも有意差が認められる.また, 発症年齢に関しても一般脳動脈瘤に比べ低いといわれている.このような家族性脳動脈瘤に遭遇した場合, 同家系の無症状の同胞, 親, 子に対する動脈瘤の検索は, 現在までのところ慎重にならざるを得ないが, 特に遺伝的素因が強く示唆される家系においては, 積極的に推めるべきであろう.
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