脳血管障害に合併する高Na血症の臨床的意義と発生機序を明らかにする目的で, 急性期内頸動脈閉塞症38例を対象に血清Na値の変化を中心に2W以内死亡例 (A群) と生存例 (B群) を比較検討した.結果は, 経過中血清Naが150mEq/m
l以上となった例はA群16/18 (89%) に対し, B群1/20 (5%) で有意にA群に多かった (P<0.01).一日平均Na投与量, 輸液量, BUN, Ht, クレアチニンはA, B群間に差を認めなかった.A群18例中高Na血症を認めた16例においては, 尿K/Na比は高Na出現2日前より増加し, Na output/intake比は高Na出現2日前より1以下になり, Naの再吸収亢進が認められた.しかし, aldosteroneなどの既知のホルモンの定量では有意な変化を認めなかった.CT変化の検討では第III脳室前域のLDAがA群は全例に, B群は20例中4例に認められた.
以上より, 急性期内頸動脈閉塞症に合併する中枢性高Na血症は生命予後不良を意味し, その発現機序には第III脳室前域の障害並びにaldosterone様物質の関与によるNa再吸収亢進が示唆された.
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