脳卒中
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10 巻, 4 号
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  • 宮城 潤, 杉田 保雄, 岡本 右滋, 重森 稔, 梶原 収功
    1988 年 10 巻 4 号 p. 293-297
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Intracerebral steal phenomenonと思われる症候を呈した内頚動脈閉塞症につき, 文献的考察を加えて報告する.
    症例 : 45歳の男性で, 左難聴耳鳴を主訴として入院した.CTスキャンでは特に有意の所見なく, 血管撮影では右内頚動脈の完全閉塞と, 同末梢域が椎骨脳底動脈領域より後交通動脈を介して潅流されているのが認められた.本例ではこの椎骨脳底動脈系から内頚動脈系へ血流がstealされたことによる症候を示したと考え, 右側のEC-IC bypassをおこなった.術後, 症状の消失を認め, しかも術後の椎骨脳底動脈撮影では, 術前のstealは消失し, bypassからの右中大脳動脈領域への良好なfillingが認められた.退院後, 眼鏡のフレームによりdonor arteryを圧迫し, 再び同様症状が出現し, その解除により消失した.耳鳴, 難聴という非常にpopularな症状ながら, 背景に内頚動脈閉塞が, 在しており, Driftらの提唱したintracerebral steal mechanismの関与が考えられた.
  • 川村 伸悟, 鈴木 明文, 佐山 一郎, 安井 信之
    1988 年 10 巻 4 号 p. 298-305
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    CT導入後に経験した破裂末梢性前大脳動脈瘤29例をまとめ, その臨床的特徴を検討した.男性13例, 女性16例で年齢は36~77歳, 平均55歳であった.これは同期間に入院した全破裂脳動脈瘤の4.1%に相当した.20例に対し手術を施行.6例 (21%) はazygos ACAを合併していた.10例 (34%) は多発性動脈瘤で15個の未破裂動脈瘤を認め, その内の9個は前大脳動脈領域で, 血行力学的要因が動脈瘤の成長, 破裂へ関与する事を示唆した.脳内血腫の合併は15例, 52%と高頻度.保存治療9例中8例は大量の脳内および脳室内血腫の合併例で死亡.手術例20例では13例が完全自立, 2例は自立, 1例は要介助, 2例が全介助, 2例が死亡した.手術例20例中18例は血腫を合併しないか小血腫例であった.末梢性前大脳動脈瘤は発作後短時間に大血腫や高度の脳室内血腫を合併, 高度の意識障害を来たし予後不良な激症型と, 意識障害, 合併血腫ともに軽度で予後良好な軽症型とに大別可能であった.
  • 虚血脳に対するYC 170の効果
    椎野 顯彦, 木戸岡 実, 半田 譲二
    1988 年 10 巻 4 号 p. 306-308
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳虚血時に増加する遊離脂肪酸は, その後の細胞障害に重要な影響を及ぼすが, この遊離脂肪酸の生成にカルシウム (Ca2+) が関係していると考えられている.一方, ラジオアイソトープを使った実験で, 脳組織においてもdihydropyridine (DHP) binding siteが有ることが明らかにされている.そこで我々は, ラット断頭モデルにおいて, Ca2+ agonistであるYC170を腹腔内投与し, これが虚血時の遊離脂肪酸生成を増加させることを確かめた.このことから, DHPに関係したCa2+ チャンネルが脳虚血時のリン脂質代謝に何らかの影響を与えていると推測した.またこのことは, DHP系Ca2+ antagonistが脳保護的役割を果たす可能性の有ることを裏面から支持する1つの証拠と思われる.
  • 吉永 真也, 中富 康夫, 飯野 耕三, 福島 武雄, 朝長 正道
    1988 年 10 巻 4 号 p. 309-312
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    被殻出血30例 (手術群14例, 非手術群16例) について血腫量と慢性期脳血流量との関係を検討した.血腫量は発症時のCTから算出した.脳血流量は発症1~6ヵ月後に133Xe吸入法を用いて測定した.血腫量と患側半球血流量との関係をみると非手術群では負の相関が認められたが手術群では有意の相関関係はなかった.血腫量が15~50mlのものの患側半球血流量は, 手術群11例では36.4ml/100g/min, 非手術群11例では37.8ml/100g/minと両群に差を認めなかった.ADL, 知的機能についても手術群と非手術群に違いはなかった.なお, 手術群の中で血腫量が50ml以上のもの (3例) の患側脳血流量は30.8ml/100g/minであり, 保存的療法における血腫量と脳血流量の負の相関関係から予想される血流量に比べ良好であった.以上より, 血腫量が50ml以下の被殻出血では血腫除去術による慢性期脳血流量に対する改善効果はないと考えられた.しかし血腫が大きなもの (50ml以上) では血腫除去術が慢性期脳血流改善をもたらす可能性は否定できない.
  • 脳血管障害を主体として
    川崎 仁志, 若山 吉弘, 岡安 裕之, 高橋 裕秀, 渋谷 誠二
    1988 年 10 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    神経細胞ならびに神経内分泌細胞に存在するneuron-specific enolase (NSE) は解糖系酵素の一員であり, 神経損傷時に血清・髄液へ逸脱してくることが知られている.今回, 脳血管障害を主体とした神経疾患につき, 血清・髄液でのNSE測定を行なった.脳血管障害では, 急性期ほどNSEは高値を示し, 特に髄液ではその上昇度も大きかった.又, CT上異常を認めない超急性期でも髄液では有意な上昇を認めた.特にTIAでも発症早期では上昇する可能性が示唆された.頭部CTで比較した病巣の大きさとNSEはよく相関したが, CT上病巣を認めない小梗塞でも髄液で有意の上昇を認めた.臨床的重症度も同様な傾向を認めた.その他の神経疾患, 例えば髄膜炎, 脳炎, 脳腫瘍, 変性疾患でも有意の上昇を示し, 各疾患とも病期と病巣の大きさに深い関係を示した.特にCreutzfeldt-Jakob diseaseでは発症早期に著明な高値を認めた.
  • 小笠原 英敬, 〓川 哲二, 山本 光生, 上家 和子, 門田 秀二
    1988 年 10 巻 4 号 p. 319-325
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤に対する直達手術未施行のクモ膜下出血症例110例を, 直達手術施行症例255例と比較し, 頻度, 性差, 入院時clinical grade, 神経放射線学的所見, 直達手術未施行の理由, 発症6ヵ月後のADL, 死因, 長期追跡調査について検討した.また直達手術未施行群を, 59歳以下, 60~69歳, 70歳以上の3群に分類し, 年齢による特徴をも検討した.非手術群の平均年齢は62.9歳で, 手術群の57.2歳より高く, 入院時clinical gradeIV, Vは前者で58%, 後者で15%と非手術群に重症例が多かった.非手術群では, computerized tomography上クモ膜下出血量が多く, 脳室内血腫の合併率も高かった.直達手術未施行の理由は, いずれの年齢層でもclinical grade不良が第1位で, 次いで再出血, 合併症などであった.非手術群の発症6カ月後の死亡率は77%と, 非常に予後不良であった.しかし, 出血源不明のために手術を施行しなかった症例は, 14例中13例が社会復帰しており, 予後良好であった.
  • MR像と水頭症発症機序について
    岩本 俊彦, 新井 久之, 大野 大二, 田中 由利子, 勝沼 英宇
    1988 年 10 巻 4 号 p. 326-333
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Megadolichobasilar anomaly (MDBA) による水頭症のMR像を供覧し, 水頭症発症の機序について考察した.症例は66歳男性で, 痴呆, 歩行障害を主訴とし, CTにて水頭症, 脳血管撮影にてMDBAを認めた.髄液循環動態検査ではクモ膜下腔に通過・吸収障害なく, 髄液圧も正常で, MDBAによる水頭症と診断した.MR像では延長した脳底動脈とともに, これによる第III脳室底の挙上と第III脳室の変形・狭小化を認めた.また側脳室の拡大, 脳梁の菲薄化を認めたが, 一方第IV脳室・中脳水道も拡大していた.後者の所見から水頭症発症の機序として, water-hammering effectとは別に, 脈拍に同期する第III脳室底の移動による容積変化の影響が考えられた.
  • 〓川 哲二, 吉本 尚規, 青木 秀暢, 石川 進, 高橋 勝
    1988 年 10 巻 4 号 p. 334-339
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤によるクモ膜下出血の発生率, 入院時grade, 手術率, 予後などと調査地域の大きさとの関連を調べる目的で, 人口79.0万人の島根県, 7.9万人の出雲市, および両者の中間の50.4万人の地域で検討した.5年間のクモ膜下出血患者数は, 島根県548例, 中間地域443例, 出雲市83例で, 人口10万人に対する年間の発生率は, それぞれ13.9人, 17.6人, 21.0人, 手術率は8.9人, 11.1人, 12.9人となった.3地域の1年後のADLは, good recoveryが各々231例43%, 179例41%, 32例39%, 逆に死亡は189例35%, 168例38%, 38例46%となった.3地域間では, 脳動脈瘤の破裂部位, 手術成績に差は無かったが, 入院時grade, 非手術例の1年後のADLは出雲市, 中間地域, 島根県の順に不良であった.クモ膜下出血の発生率, 手術率は, 調査地域が県単位より市単位のように小さければ小さいほど高率となり, 入院時grade, ADLは不良となる可能性がある.
  • 鰐淵 博, 加川 瑞夫, 竹下 幹彦, 井沢 正博, 喜多村 孝一
    1988 年 10 巻 4 号 p. 340-348
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    モヤモヤ病は内頚動脈終末部近傍の進行性狭窄と側副血行路としてのモヤモヤ血管の発達が基本病態であり, 脳血管撮影上これらの変化は両側にみとめられるが, 症例の蓄積とともに典型例に合致しない片側においてのみモヤモヤ病の所見を認める症例が増加している.著者らはこれら成人発症のモヤモヤ病疑い例を検討し, 特に脳血管撮影において興味ある所見を認めたので報告した.
  • 渡辺 賢治, 棚橋 紀夫, 奈良 昌治, 峯 徹, 竹中 信夫
    1988 年 10 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    当院に入院し, CTscanを施行し得た被殼出血187例 (男116例, 女71例, 平均年齢58±13歳) を保存的治療群159例 (59±13歳) と外科治療群28例 (51±11歳) に分け, 入院時の意識レベル, CT分類及びCT上の血腫の最大径と退院時予後との関係を検討した.入院時意識レベル, CT分類, 退院時予後は脳卒中の外科研究会による分類を用いた.187例全体での退院時予後は, 社会復帰12.8%, 自立生活17.1%, 介助生活22.5%, 寝たきり8.0%, 死亡39.6%であった.保存的治療群では, 血腫の最大径が増加するにつれて急激に死亡率が増加した.生命予後の比較では, 入院時意識レベル別には両群に差はなく, CT分類では4b群 (内包前・後脚に伸展し脳室穿破を伴うもの) および血腫の最大径では6~7cmの群で外科的治療群が優っている傾向があった.これらの結果より生命予後の立場からすると症例を選ぶことにより, 被殼出血においては外科的治療も考慮すべきと考えられた.
  • 臨床例による採血部位別経時的変動の比較検討
    大熊 洋揮
    1988 年 10 巻 4 号 p. 355-363
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳血管攣縮における血小板機能の役割を解明するために, 脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血症例を対象に血小板凝集能, β-TG, TXB2の採血部位別 (内頚静脈, 末梢静脈) の経時的変動を比較検討した.
    採血部位別の測定値を比較すると, 末梢静脈血に比して内頚静脈血測定値は病状と良く相関し, また手術中採血した上矢状静脈洞血の測定値と近似的な値を示したことから頭蓋内環境の検索には内頚静脈からの採血が適すると思われた.
    内頚静脈血測定値をもとに攣縮発生の有無による経時的変動を比較すると, 非攣縮例では小さな変動で経過したのに対し, 攣縮例では攣縮発生以後に全測定項目とも何等かの亢進状態を示した.特にβ-TGの亢進程度は臨床経過, 予後と相関が認められ, 攣縮時の脳虚血症状の進展に対する血栓傾向の関与が示唆された.
  • 小山 晃, 渥美 哲至, 川上 明男, 石川 厚, 宮谷 信行
    1988 年 10 巻 4 号 p. 364-368
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    老年者のprogressive subcortical vascular encephalopathy (PSVE) における脳血管透過性の関与を知ることを目的に老年者の慢性期脳梗塞患者において髄液, 血清アルブミン比及びIgG比の検討を行った. PSVE 17名, 皮質枝領域にのみ梗塞を有する例9名, 対照者5名計31名につき, 髄液, 血清アルブミン比及びIgG比を求め脳血管透過性の異常の指標とした.その結果, 髄液, 血清アルブミン比, IgG比ともにPSVE群は皮質枝群, 対照群に比し有意に高かった.皮質枝群と対照群との間には有意差は認められなかった.IgG indexは3群間に有意差は認められなかった.以上より, PSVEには脳血管透過性の亢進が存在すると思われた.これが, 本症の脳組織障害の成因の一つとして常に考慮される必要があると思われる.
  • 鈴木 明文, 安井 信之, 波出石 弘, 川村 伸悟, 佐山 一郎
    1988 年 10 巻 4 号 p. 369-374
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳血管攣縮 (VS) に対するhypervolemia/hypertension療法の有効性を, 非療法群との比較で検討した.対象は3日以内の急性期に破裂脳動脈瘤の根治術を行った症例の内, 既往による脳損傷例や, 脳内血腫合併例, 手術操作に起因する脳損傷例を除外した111例であり, 療法群67例, 非療法群44例である.両群の症例構成はほぼ同一であった.療法はアルブミン100ml/日, 人血漿約200g/日の投与と, dopamineまたはdobutamineを用いてのmild hypertensionで行った.結果は, 療法群におけるVSによる臨床症状の出現率は, 非療法群に比べ有意に低値であった.さらに, 本療法維持にあたり阻害因子となった術後全身合併症併発例を除外して検討すると, VSによる臨床症状の程度についても有効性が確認出来, 療法群における重度例の占める割合は非療法群に比べ有意に低値であった.しかし, VSによる臨床症状の改善効果については, 本療法の有効性を確認出来なかった.
  • 2剖検例による考察
    山本 良裕, 角南 典生, 山本 祐司, 国塩 勝三, 園部 宏
    1988 年 10 巻 4 号 p. 375-381
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳梗塞で死亡した78歳女性例の剖検時, 脳底動脈近位側窓形成と窓内近位端に未破裂動脈瘤を認め, これに連続切片による病理学的検討を加えた.また, 脳室内出血で死亡した67歳男性例の剖検時, 脳底動脈近位側窓形成を認め, 病理学的に窓形成近位端および遠位端の血管分岐部に中膜筋層欠損部の存在を証明した.脳底動脈窓形成に窓内動脈瘤を合併した症例は, 現在までに文献上33例にすぎない.これらの報告例および今回の2剖検例の病理学的所見より考察し, 同部の動脈瘤の発生要因としていわゆるhemodynamic stressおよび血管壁の先天的脆弱性が重要であると結論した.
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