脳底動脈閉塞症32例 (血栓群24例, 塞栓群8例) についてその臨床像, 血管撮影上の特徴, および転帰, 長期予後を検討した.血管撮影所見は脳底動脈をrostral, middle, caudalの3部分に分けて検討した.血栓群を退院時, 独歩・杖歩行可能な転帰良好群8例と不良群16例とに分けて検討すると, 転帰良好群では後交通動脈を介する側副血行が良好で, 脳底動脈のrostral~middle portionが十分に造影されていた.これに対し, 転帰不良群では後交通動脈からの側副血行がみられないものが過半数を占め, 側副血行があってもrostral portionまでしか造影されず, 上小脳動脈の造影も遅延していた.血管撮影上, 後交通動脈を介する側副血行路の有無と脳底動脈のrostral-middle portion, 上小脳動脈の潅流状態が転帰を左右する指標と思われた。転帰は急性期死亡は1例のみで, 10例が独歩・杖歩行可能, 2例が車椅子, 19例が寝たきりであった.長期follow upでは最長8年5ヵ月間の生存が確認された.生存率は6ヵ月87.5%, 1年73.3%, 2年53.8%であり, 再発による死亡は殆どなく, 合併症によるものが大部分であった.
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