脳血管攣縮における脳血管のhistamine受容体の変化を調べるための基礎的研究の一環として, 正常ウシ脳血管のhistamine受容体について薬理学的解析を行った.摘出したウシ脳底動脈を用いてラ旋状標本を作製し, histamine及びH
1とH
2のagonists並びにantagonistsに対する等尺性張力の変化を記録することによって検討した.実験結果は, 1) ウシ脳血管はhistamineとpyridylethylamine (H
1 agonist) に対して用量依存性の収縮反応を示したが, dimaprit (H2agonist) にをま反応しなかった.2) Histamineによる用量収縮曲線はtripelennamine (H
1 antagonist) によって右方へ平行移動し, Arunlakshana-Schild'splotで解析すると, pA
2値は8.76であり, slopeは0.904と45度に近く, その拮抗作用はcompetitiveであった.3) Histamineの収縮反応はcimetidine (H
2 antagonist), α-あるいはβ-antagonistの影響は受けなかった.4) 内膜をrubbingしたウシ脳底動脈のhistamineによる用量収縮曲線はunrubbingのそれと比較して有意差を認めなかった.5) H
1受容体を介する血管収縮はphospholipaseCを活性化してinositol 1, 4, 5-trisphosphate (IP
3) がsecondary messengerとなり, 細胞質内Ca
2+が増加して起こると考えられた.
以上の結果より, ウシ脳底動脈にはH
1受容体が密に存在し, histamineがH
1受容体に直接作用して収縮が起こり, その反応は交感神経終末からノルエピネフリンが遊離して発生するのではないと解された.ウシ脳底動脈にはH
2受容体は乏しいか, あっても作動しないと考えられた.
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